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『R.T.V』サンプル作品『じれったいのはどっち?』

ども、ならざきです。

先日から『noteイベント部』で始めてますプレ・イベント『ロード・トゥ・バレンタイン』。
メイン・イベントである告白応援企画『ハッピーバレンタイン!(仮)』に向けて、『バレンタイン・デーが近づいてきて、好きな人に告白しようかどうか迷っている人(以外もOK)をアップしてください』というこの企画ですが、やはりサンプルがないと皆さんもわかりにくいんじゃないかと思いまして。
なので、ここにサンプルを挙げてみようかと思います。


サンプル小説
『じれったいのはどっち?』
ならざきむつろ 作



「……で?」

僕の問いかけに、スピーカーの向こう側からはえ?という疑問符。

「え?……じゃないよ。マユはどうしたいのか、って話」

僕が更に畳み掛けると、彼女はぐうっ、と言葉を詰まらせる。
実際にぐうっ、って言っちゃっても嫌味のない天然さに、『混じりっけなし』ってこういう事かといつも思う。

『だってさ、ほら、その――』
「彼女が居るかも知れないから――って?」

僕はこの半年間繰り返し聞かされているその応えを、今日は敢えて先にこちらから投げつける。

『そ、そうそう!それに――』
「違うクラスだから、どうやって声をかければいいか分からない、でしょ?」

解ってるよとばかりに付け加えた僕に、しかし彼女は素直にそうそう、と返してくる。

『だから、今回はちょっとパ』
「今回は?」

彼女の声をわざと遮って返すと、彼女は少したじろいだようにうん、と応えて、そしておずおずとした声が続く。

『――なんだか今日は怖いよ、りっくん』

(いや誰のせいだ誰の)

思わず口にしそうになった言葉を、軽い深呼吸とともに飲み込み、僕はあのね、と口にした。

「良いかい、マユって今高校何年生?」
『え?2年』
「ってことは来年は?」
『え?3年だよ。決まってっしょ』

即答する彼女の声がさも当然、と言わんばかりだったので、僕は改めて聞かせるようにため息をついてみせる。

『なによお、間違ってないっしょや?』
「――うん、そこまでは」
『そこまでは……って、なにさ』

僕の返答の意味が理解できてない様子の彼女に今度は本気でため息をつくと、部屋の壁に飾ってあるカレンダーに目を向ける。

「あのね、高校3年の2月ってね、受験だなんだと学校に来てる生徒ってぐんと少なくなるんだぞ」

僕がそこまで言ってようやく理解できたのか、彼女は小さく「あ」と口にすると、うろたえたように「どうしよう」と「そうだよね」を繰り返し始める。

そのうろたえっぷりが――彼女には申し訳ないけど、ちょっとかわいくて。
リアルでは「なにその上から目線」ってキレられることが多い僕の言葉を、ここまで素直に聞いてくれる彼女がかわいくて。

だからつい、追い打ちをかけてしまいたくなって。

「だから今度のバレンタインが最後なんだって。ここで告白できなきゃ、たぶんそのまま終わっちゃうぞ」
『ううっ』
「終わっちゃったら、卒業したらもう会えなくなるぞ」
『そ、そんなこ』
「会えなくなるね。100%間違いないね」

――と、そこまで言い切りながら窓に目を向けると、そこにはドヤ顔した僕の顔。
まだまだ大人には程遠い、ガキ臭い僕の顔が写っていた。

『――そ、そこまで言わなくてもいいしょ?』

しまった。
受話器越しに聴こえてきた彼女の声が、どう聴いても涙声になってる。

「あ――いや、その、」
『私だってね、告白したくないわけじゃないんだよ?』
「あ、うん、それはわか」
『告白してフラれるのは怖くない。そうじゃないの』

ああダメだ。調子に乗って追い詰めてしまった。
僕は彼女の涙声にうんうん、と返しながら、調子に乗りやすい自分を呪う。

だからまだ子供なんだ、って。
これだから彼女に追いつけないんだ、って。
いくら背伸びしてみても。

『――って、聴いてる?』
「うん、聴いてる聴いてる」

彼女の問いかけに慌てて返すと、彼女はどうやらすでに落ち着いていたのか、受話器越しにふう、とため息が聴こえてきて、それがまるで耳に息を吹きかけられたようで、身体にゾクゾクビリビリと電流が走る。

『――やっぱり、告白したほうがいいかなぁ』
「う、うん。その方がいいと思う」

なんとかそれだけ言い返すと、僕は受話器を少し離して深呼吸をする。
このままだと、こっちが告白してしまいそうだから。

「いいかい?想像してみて」
『想像?』
「うん。告白して付き合うことになってさ、彼と一緒に笑い合ってるとこ」

好きな人と一緒に笑い合える。
そんなシンプルだけど大切なイメージこそ、相手を想える原動力になると思っている。
この半年間ずっと想像して――そしてその想像によって救われている僕にとっては、よけいに。

『――うーん、想像できないや』
「いやできないことは無いっしょ」

思わず笑いながら彼女を真似て返した僕に、しかし彼女はうーん、と言ってから、りっくんなら――と返してくる。

『りっくん相手なら簡単に想像できるのにね』

(――あ、ヤバい)

胸の奥に溜まっている熱いものが一気に喉元までこみ上げてきて、こらえていても口から出てきそうになる。

(ダメだって。ヤバいって)

僕は慌てて空いてる左手で口をふさぐ。

『うーん、好きなはずなんだけどなぁ……』

受話器越しに聴こえてくる、彼女の声。
ソシャゲで知り合って半年後に初めて聴いてからずっと大好きなその声が、受話器越しに『好き』とか言ってる。
僕以外の、リアルで同級生の『彼』が好きな彼女の声が。

「す――」

思わず声が出て、僕は慌てて口をふさぐ。

『す?って?』

すかさず返ってきた問いかけに、僕は受話器を離して大きく深呼吸をしてから、なんでもないよ、と返す。

「イメージができないってことは、きっとマユの心のなかでさ、マユ自身がおっきな壁を作ってるせいだと思うからさ、――」

僕の口から、上滑りな言葉がスラスラと出てくる。

「――やっぱり思い切って告白してみるべきだよ。そうすれば壁は壊せると思うから」

なんとかアドバイスっぽい形に出来たとホッとしつつ、でも自分が信じているのと真逆のことしか言えなかった自分のアホさ加減にガックリしていると、受話器越しに彼女が『そうだよね』と返してきた。

『――ん。ありがとねりっくん』
「いえいえ。よく考えなよ」
『ん。――ホントりっくんって、頼りになるお兄さんです』

彼女のその言葉がくすぐったくて、僕が思わず苦笑すると、それを肯定と受け取った彼女もまたクスリ、と笑う。

『じゃあ、そろそろ寝るね』
「うん、おやすみ」

僕の挨拶にバイバイ、と返して切れたスマホ。
その画面に向かって、僕はずっと言えずにいる言葉をつぶやいてみる。

「――中学生なんだけどな、僕」

僕のつぶやきはでも、画面に写った彼女の満面の笑みに弾かれて、フワッと散り散りになって消えていった。

(了)



はい、どうでしたか?
じれったかったでしょ?(笑)
こんな感じの『じれったい子』をアップしてもらえればオールオッケーです。


ちなみにあなたなら、この二人のどっちがじれったかったでしょうか。
私はもちろん――


(答えは投げ銭してくださった人だけにお教えします(笑))

#ロードトゥバレンタイン
#全日本じれったい子選手権決勝
#ああもうじれったい
#ネット恋愛


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