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一カ月間今までに買ったサイケアルバムを振り返る⑳ VUOY/想い出波止場

昨日は記事を書く時間が無かったため、一日置いての投稿...。

今日は97年に想い出波止場が発表した「VUOY」である。想い出波止場は、当時ボアダムスのメンバーであったギターの山本精一が87年から始まり、当初はソロユニットであった。作風はかなり実験的であり、バンドらしいビート音楽にとどまらない前衛的なアレンジの曲が多い。

私が知ったきっかけは、同じく山本精一が在籍している羅針盤というバンドから先に知っていて、そのまま他の在籍しているバンドがどういった作風が気になって調べたことからで、羅針盤は歌ものの綺麗な作風だったのに対して想い出波止場ではかなりアバンギャルドな作風を目の当たりにしてびっくりした記憶がある。

曲ごとの感想

01.SPLITS

ギターがジャーン...となって終わるだけの曲。アルバムのイントロダクションといった立ち位置であると思うが、わざわざ単体のトラックにしている事が謎だ。

02.DELAYED SKY

早速正体不明の低音が鳴り響く。インスト曲であり、実質一曲目であるにも関わらず閉塞的な雰囲気の暗い曲。

03.MIRAGE

テクノらしさを感じる打ち込みのビートがかっこいい曲。機械的な効果音が多用されており、かなりエレクトロな趣。

04.VUOY

4曲目にしてようやく歌アリの曲になる。不明瞭で聞き取りにくいミックスになっているが矢継ぎ早に歌われる歌がかっこいい。また、演奏もバンドに近い構成なので妙に安心する。

05.こころ

アコースティックなイントロでしっとりした曲かと思うと、実際は変拍子を多用したひねくれた曲。地声に近い歌も相まって奇妙な印象だが、今作では珍しい直球のギターソロがある。「こころ」というタイトルとは思えないヘンテコな曲調の曲だ...。

06.ROTARY

何かしらのこする音をそのままリズムにして展開される奇妙なインスト。展開に抑揚が無く、BGMのような趣なのだろうか。その代わり合間には正体不明の効果音が色々サンプリングされている。

07.マイトレーヤ

脱力感のある演奏に、またも何を歌っているのか不明瞭なボーカルが乗る。この曲に関しては更に強いリバーブでぼかしているので、本当に何を言っているのかわからない。後半になるにつれて演奏がゆるやかに激しくなっていくが、そこでのギターのフレーズが地味ながらかっこいい。

08.FULL CIRCLE

不協和音じみたギターのカッティングがいかすバンドサウンドの曲。この曲も変拍子で、聴いているうちにリズムの頭がつかめなくなるほど複雑な演奏である。一応ボーカルがあるようだが、やはり聞き取れない。

09.FUZZY KILLER

ギターのリフがサイケでとてもかっこいい。意外と動いているベースも聴きどころ。雰囲気が怪しげで、一番サイケチックな曲な気がする。

10.CORN

落ち着いた曲調のインスト。夜のような冷たい雰囲気があり、どこかジャジーでもある。

11.HARIS

反響しているような音が続いていくだけの不気味なインスト。洞窟の奥深くにいるような孤独感を感じる暗さ。

12.DO THE FUTURE

前曲の音が響く中唐突に始まる。テレビのザッピングのような音の切り貼りが気持ちいい。クラブミュージックが如く低音が強調されているのが面白い。まあまあ長い演奏時間なので、音の移り変わりを楽しむタイプの曲かもしれない。

13.SUGER CLIP

シングルカットされた曲であり、今作の中では断トツにポップで聴きやすい。アレンジもポップな範囲でとどまっているため、聴きやすすぎて逆に今作の中で浮いているまであるかもしれない。メロディもキャッチーであり、後の羅針盤での作風に通じるものを感じる。後はギターもシンプルにかっこよさを感じる。

14.

タイトルが無い曲。前曲との雰囲気の差が凄い。低音なサウンドがメインの閉塞的な印象の曲。相変わらず聞き取れないボーカルだが、なぜかヒップホップ的なノリのファンキーな歌い方。ジャンルの手広さを感じさせる。

15.FIGARO

謎の音がチクタクと鳴り続けるだけの意味深なインスト。レトロゲームのような音が聴いていて気持ちいいが、何もここまで演奏時間は長くなくてよかった気がする...。

今回聴いて改めて良いと思った曲

10.CORN

インスト曲の中では、この曲が特に聴いていて素直に良さを感じられた。冷たい雰囲気ながらシンプルな演奏がとても聴きやすい。

まとめ

羅針盤からこのアルバムに流れてきた自分にとっては、その実験的すぎる作風は流石に仰天したし、フロントマンの山本精一の手数の多さにも驚いた。全編を通して、どうやってできたのか気になるような謎の音や、そこまでしなくていいレベルで極端に聞き取れないボーカルが多用されており、真面目なのか冗談なのかわからない雰囲気がどんどんクセになっていく。曲調もなんていっていいのか説明しがたい独特なアレンジで、それが15曲分も続くので今自分がどの曲を聴いているのかわからなくなっていくのも面白さを感じる。それはさながらアルバム1枚が丸々曲になっているかのような感覚だ。

この実験的が過ぎるゆえに出るシュールさや奇妙さはサイケに通じるものがあって好きな雰囲気ではある。しかし、そのアクの強さは全てを受け入れるにはまだ難しいところもややあり、アルバムの全体の良さを分かるためにはもう少し向き合う必要があるとも感じた。まだまだ自分にとっては難易度の高いアルバムだ...。

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