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ポケモン公式ラブソング【ボルテッカー】が世界で一番強いってことなんだよ

【ボルテッカー】はポケモンと初音ミクコラボの楽曲であり、ボカロ界の巨匠「DECO*27」による強烈すぎる力を有した曲である。

そして【ボルテッカー】はポケモン公式のラブソングである。タイアップ曲や主題歌になった曲がラブソングだった、ではない。
ポケモン作品として出たラブソングである。

ここではポケモン公式がお出しするラブソングは凄まじかったということ、それを伝えたい。

元来ポケモンと恋愛要素はあまり結びつきが濃いものではない。BWの観覧車やSMのリーリエ雨宿りイベントなどアクセントやサブイベントの要素として使用される程度のものだ。
やはりポケモンといえばそれよりも「相棒」だとか「仲間」との「冒険」や「バトル」という要素に重きを置いている。それがこのコンテンツの素晴らしいところでもある。

だからこそだ。そちらの方面における新規楽曲に対するハードルは圧倒的に高い。特に2020年に出たBUMP OF CHICKENの【アカシア】はポケモン世界のイメージソングという点では他の追随を許さない絶対的強さを誇っている。
ポケモン世界における少年少女の旅立ちが持つ重み、その意思の美しさ。そして何よりも一人だけど孤独ではない旅が持つ光。それら全てが【アカシア】には内包されている。

アニメのポケモンでの主題歌はやはり素晴らしいクオリティのものに溢れておりバトルだとか冒険分野に関してこちらもとても高い壁がそびえ立っている。

故に「ラブソング」というワイルドエリアに「初音ミク」という伝説級のラブソング使いを引っ提げてやってきたこの企みにこそ魂を震わされた。

ここからがバトルの始まりだ。
ガチ恋オタクの彼岸 いざ 参る!


恋はポケモンバトル

主役はいつだって「好かれたいな」

ボルテッカー/DECO*27 feat. 初音ミク

これは何よりもポケモン曲に存在していた前提や今まで積み上げてきた価値観をぶっ壊す非常にかたやぶりなフレーズだ。

「主役」はあたしでもピカチュウでもない。「きみ」に「好かれたい」という想いなのだ。故に目的は勝つことでもバトルを楽しむことでもない、そのねがいごとを成就させることがゴールとなる。
これが非常に画期的である。バトルを手段、あるいは恋の様相の例えに使用しているわけだ。【恋は戦争】などと別世界のミクさんは歌っていたがまさにその通りだ。恋はポケモンバトルである。

もちろんポケモン世界においてもバトルは全てではない、あくまで競技の一種だ。ブリーダーだとかコンテストだのと他の共存の形は多くで示されている。

だからこそ伝わるわけだ。この恋はバトルである、楽なものではないと。タマゴのように誰かにもらえるものでも一緒に育てるものでもない。
これは「あたし」がバトルして捕まえるものなのだと言っているわけだ。
もうこれだけでボルテッカーミクの性格、恋愛との向き合い方が分かる。あまりにもぶきようにまっすぐ突っ走るタイプなのが分かる。
この時点で理解できるのだ【ボルテッカー】とは技の名前ではない。彼女の生き方であり在り方の名前である、ということが。
力の限りまっすぐ突進して反動でこちらもダメージを受けると。そんな生き方が彼女である。

歌詞を見れば分かることだが想いがスパークしたりじゅうでんが溜まってりしたりしているが彼女は「きみ」にボルテッカー以外の攻撃技を放っていない。
これはあたしにはこの技しかないという意味だ。愚直なまでこだわった力業、これが彼女の生き方である。

メタ的な話をするとゲーム内ではボルテッカーという技はピカチュウ以外に習得することができない。
これに当てはめると「あたし」にしか使えない攻撃ということだ。
更にもっと解釈を拡大することができる、専用技と人格を結びつける。即ち存在そのもの、それが唯一無二であるということ。
「あたし」という存在、生き物そのものを「ボルテッカー」という技に見立てているわけだ。
だから【ボルテッカー】という曲名はただの技名ではない。このミクそのものの名称である。
これしか繰り出せない生き方の名前。彼女なりのわるあがきとも言える。だからそれをこだわりぬく。

この序盤の1フレーズだけでここまで深く彼女のことが分かるわけだ。あまりにもテクニシャンがすぎる。
これによりここから先の歌詞で「深堀り」の領域へ行くことができるわけだ。

倒すんじゃなくて捕まえる

こだわり抜いた気持ちボルテッカー
きっときみにもこうかばつぐんだ
もっともっと 捕まえるまでもう一戦

ボルテッカー/DECO*27 feat. 初音ミク

この曲では「きみ」にバトルをしかけて何度でも何度でも捕まえるまで何度でも不屈の心で立ち向かう「あたし」の様が描かれている。
一貫して追う側であるという点にやはりボルテッカーという生き方の様を感じる。

ここにおいてはまず【いまひとつな手応え】と【こうかばつぐん】について特筆する必要がある。
言うまでもなくこの部分は原作のタイプ相性を踏襲したフレーズとなっている。

歌詞を流れで見ていけば分かるがボルテッカー、即ち「あたし」のアプローチは「きみ」に対してこうかがばつぐんであるようには見えない。だからあまり相性が良くないことが分かる。
しかし終盤では【きっときみにもこうかばつぐんだ】と確証を持っている。

ポケモンのタイプは(一部特例除いて)変わらない。だが人の心は変わる。心が変われば相性も変わる。でもミクは変わらない。ボルテッカーな生き方以外できないから、ぶきようだから。
なので変わったのは「きみ」である。諦めず逃さずこだわりぬいてぶつけ続けた気持ちをメトロノームのように何度も繰り返して見事「きみ」を捕まえることに成功した。力業でごり押したわけだ。
最後のラブラブボールで捕獲成功した演出から恋が成就したことを見て取ることができる。

また、恋の成就を戦いに見立てているのだから「捕獲」がゴールとなるのも非常に良い演出である。倒すのでも勝つのでもない、捕獲である。
競うようなライバルがいたかも知れない、それでもやはり目的は倒すことではない。倒してしまったら手元には置いておけないから。だから捕獲なのである。
ちなみに私はこの「きみ」を巡るバトルには他にもライバルがいたものだと考察する。いた上で自分のバトルに手一杯で他のライバルにまで目がいかなかった、それがボルテッカーミクだから歌詞中にライバルの存在が出てこなかった。と、ここまでの性格から読み取れるからだ。

そしてこの「捕獲」という点もまたとてもボルテッカーミクの性格を表しており良い。ボールを投げて捕まえるという行為からは主体性が見て取れるし、やはり終始攻めの姿勢を崩していない。
何度捕獲失敗しても諦めずトライする、うざいうざいと言われようと気にしない、でもちゃんと傷付いている。反動ダメージは受けている。なんならすてみだから普通より痛い。
そういうとことんぶきようでまっすぐだけど相応に弱い少女性を持った性格であることがちゃんと分かる。そんな性格を一言で表すとしたら「さびしがり」でも「おくびょう」でも「いじっぱり」でもない。やはり「ボルテッカー」なのだ。
このような裏付けと設定の塊の上に【ボルテッカー】という概念は成り立っている。

手応えもタイプ相性も気にしてられない、そんな器用には立ち回れない。それでもたった一つこだわりぬいた気持ちのでかさだけが武器になる。
成功するまで絶対諦めないから、なによりも自分の好きの力を信じている。【きっときみにもこうかばつぐんだ】と信じたその卑屈さのない素直さ。あまりにもまっすぐで眩しいフラッシュだけがここにある。
ぶっちゃけこうかばつぐんだろうがなんだろうが関係ないのだ。捕まえるまで何度でもやるのだから。そんな姿にこそ、弱点を突かれるわけだ。

妄想は無限大

【ボルテッカー】は本当に凄まじい曲だ。「ラブソング」というポケモンとしての新ジャンルとしてこんなにも世界観と設定を落とし込んでシンクロさせてきているのだから。
そして小ネタの数が尋常ではない。メロディーだけでなく歌詞の隅から隅までこれでもかとポケモンネタが詰め込まれている。そして歌詞から読み取れるストーリーからも強めのポケモンらしさ、がむしゃらに前へ走る少年少女というらしさを感じることができるのが素晴らしい。

なによりもこれだけ詰め込んでおいて「ポケモンのラブソング」として圧倒的な完成度とクオリティを叩き出している事実にこそ震える。
まさか公式MV一発目にこんなにもうか溢れる火力のラブソングをお出し頂けると思っていなかったからひるんでしまった。
やはりミクさんといえば本領はラブソングであると思っていたから期待はしていたがいやあポケモンだし難しいかなあなんて思っていた。だからこそ喜びもぐーんとあがった。

なによりもでんきタイプであることを最大限これでもかと活かした歌詞とボルテッカーミクのまっすぐなかわいさ、これである。このエレクトリックなパワーにビリビリとハートを撃ち抜かれてしまった。

もう、【きみにむちゅー】

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