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【ガールズバンドクライ】3話と5話解説。俺の中指-ピンク服を着させられている過激な女が好き性癖-を見ろ

本当は誰かみたいに
幸せになりたかった

声なき魚/(新川崎(仮))

この世で最も好きな言葉、それは【コンプレックス】である。それは俺の性癖の名前、総括と言っても過言ではない。
それが刺激される様子を見ている時間にしか生を実感することができない。

だからこそ特筆しなればならない。ピンク服が似合わないような過激な内面の女がそれをまとっているということが何を意味しているのかを。
それが見た目以上にどれほど重く深くコンプレックスを刺激する行為であるのかということを。

ガールズバンドクライ】は面白い、スペシャルに面白い。
ディビジョンバンドバトル川崎ディビジョン代表にふさわしく過激にドラマチックで文句ねえんならマイク握んなを地で行くでかでか感情ぶつけ合いバトルの連続に私の表情筋は固まるところを知らない。
しかしまだアニメとしては道半ば。ここで全貌を話すにはあまりに早計。

だからこそ、今ここにいることに意味がある。

この意味がわかるか、そうだ。今、吼えねばならぬ戦いがそこにはあるということだ。
戦いは3話【ズッコケ問答】のライブシーンである【声なき魚】にて訪れた。

このハイパーファンシーでかリボンピンク服の仁菜こそが俺の性癖の形。

まさか令和の世でこんなにも気持ちよく過激な女にはピンク服を着せろ性癖を満たせるとは思ってもいなかった。
言動共にピンク色とは程遠い過激な生物がピンクのかわいい服を着ている、あるいは着させられている状態を見ているだけで暴れたくなるほど気持ちが良くなる。

一言で言ってしまえばギャップなのだが、その一言で済ませてしまえばあまりに陳腐になってしまう。
かつて手にしていたもの、生きる過程でそぎ落とされたもの、あるいは仁菜にとっては望んでも得ることができなかったもの。
これらを内包したピンク服姿を一言で称するのであれば「ギャップ」に落ち着くというだけだ。

ピンク色の服、そこに潜む「少女性」に着目している。失われた、あるいはかつてそうあるはずであった少女性の再来だけが俺の心を震わせる。

「少女性」には段階があり、大人への階段というのはファッションの変化に等しい。着せ替え人形から女児アニメへ、それからファッション雑誌へと。

そして目的の変化と「服」への認識にそれは宿る。

服装を変えたら違う自分になる、という観点から違う自分を魅せるために服装を変えるものへと変化していくことを成長の軌跡として見ることができる。
前者はプリキュアシリーズのような変身もの。後者はアイカツシリーズのようなアイドルもの。
衣装で違う自分になれることに気付いた者は、アイカツでファッションのなんたるかに触れる。そして成長した女児達はファッション雑誌だなんだといった現実寄りの世界へ舵を取り、女児でなくなっていく。

そのため変身ヒロインやアイドルのセンターにいるようなどピンク服というものには「憧れ」の意味合いを含んだ少女性が宿る。
つまり、好んでピンク服を着たり可愛いものを選んだりするような展開ではそいつの心の奥底に眠っている「かつて存在していた少女性」を見ることができる。
その少女性を醸し出す人物が今現在過激であればあるほどにその火力は増す。

しかし本人の意志に反してピンク少女性を着させられているという状況において、それは真逆の意味を持つ。
そんなもの少女性はとっくに捨てているという証明に他ならない。
【声なき魚】ライブシーンの仁菜のような状況においては本人の過激さを強調するのにこれ以上ないアクセントになるのだ。

なぜこんなにも3話のライブシーンが刺さり散らかしたのか。桃香は仁菜が絶対に嫌がるからとあのピンクを着せたからだ。
こんな服を着るのは恥ずかしがるだろう、ではなく絶対に嫌がる気持ちが恥ずかしさを凌駕するだろうであった。

知っているからだ、仁菜は擦れて捻くれたガキであると。ガキではあるがキッズではない。ピンク服に喜ぶほどキッズではないし、かわいい服で喜ぶようなガキではない。
嫌がりそう、という点で桃香は仁菜の中の失われた少女性を見ている。
そして仁菜と同じ年代の「普通の子」が手にしていたはずの少女性と純真さを被せたのだ。
それが起爆剤になると確信してあのピンクを選んでいる。
仁菜は桃香から子供扱いされることを嫌う。それも利用している。嫌悪感で恥を上書きさせるロックな手法に私の口角の上昇は無限の彼方へと向かうばかりであった。

あるいは仁菜が平凡な少女と同じような生活と幸せを手にしていたら順当に宿っていたであろう少女性、それをロックへの起爆剤とした。
例えば仁菜がいじめもなく普通に学生生活を送っていたとしたら友人とのカラオケで歌が上手いと言われていたかも知れない。それで学内ガールズバンドのような何かを組んだとしたらあのような可愛い服を着ていた可能性があった。
もしオーディションなどに出て、通っていたりなどすればだ。アイドル売りの方向性に固まればあんなピンクでセンターにいたかもしれない。

だがそのどれもが「あったかもしれない未来」に過ぎない。そんな未来もあったかもしれない世界では着ていたかも知れない。でも今の仁菜には起こらなかったし起こらない可能性の話。
そんな得ることのできなかった輝く未来の可能性を着せて、コンプレックスを刺激することで自分を解き放つ道具として利用している。

あまりにも悪魔的、しかし的確。そしてこんな発想ができるのが何故かという理由、それは桃香もまた自身の少女性を捨て去り生きてきたからに他ならない。
つまりピンク服を用意するということは自分がされたら嫌なこと、こんなことされたらロックするしかねえよなという追い込みを仁菜にしたといっても過言ではない。

それが2人をあのどピンクでかリボンへ導いたわけだ。あれ単体で見ても非常に爆裂えっちでかわいい子にはくそでかリボンをつけよを世界の約束として生きている私にとっては至上の燃料となっている。
しかし本質はそのバックボーン、仁菜のコンプレックスを刺激する理由付けという最高の味付けによりあのライブシーンの3分弱で私は絶え間なく脳から液が垂れ流していた。

そして、仁菜が少女性を身にまとってロックをすることは同年代に中指を立てていることにも繋がる。
私はお前らと同じ少女性のままステージに立っているぞと。

親からもいじめからも逃げてきたからこそ、順当に手にしていたはずの青春を取りこぼしているからこそ、あるいは着ていたかも知れないピンクで少女性に満ち溢れた服を着る行為は自分にも世界にも負けていないと表明する反逆であり抵抗だ。
そのコンプレックスから逃げず、真っ向から立ち向かう行為は美しい。

もっと簡単に顔を隠すバンド衣装とかにすれば嫌悪感で恥を上書きさせずとも楽に仁菜は弾けられたかも知れない。だがそれをさせなかった。それに意味はない、そこに「全部」はぶちこまれないから。
あえて仁菜のコンプレックスを刺激させる服を着せることが、仁菜のカタルシスにも繋がる。怒り喜び哀しさといった感情だけではない、取り零してしまった過去も得ていたかも知れないはずの未来も含めて「全部」になるのだ。

だからこそ【声なき魚】の歌詞はこんなにも染み渡り胸を震わせるのだ。閉塞感と恐怖、なによりも取り零してしまった幸せへの後悔がまざまざと降り注ぎ心を打つ。
アニメでは流れなかったが原曲の最後に存在する【本当は誰かみたいに幸せになりたかった】という言葉が全てだ。キレて暴れ散らかして吐き出して吐き出して最後に残った本当の言葉。
中指を立てることは本音の行動でありながら、年相応の強がりであることをこの一言から伺える。

そんな【誰か】に該当する一人が、5話で現れて仁菜の上を行く言動を見せつけてきた。
ダイダスの新ボーカルである。ピンク頭のキラキラでアイドルとして作られたキャラと仁菜とは対象的な存在だ。

5話のライブで仁菜が選んだ服装の持つ意味とは「烙印」である。各々が胸に抱えた見せないもの、見せたくないものを表に出すことで精神的に「裸」になる。
着飾らない、ということに重きをおいたあの服は売れるための服を着たダイダスと非常に対照的だ。そこには仁菜の対抗心、なによりも深く強いコンプレックスの奔流を読み取ることができて私のドカ笑顔は留まることを知らなくなる。

吐き出すための曲に自分を曝け出すための衣装の仁菜達。対してダイダスはプロなので売れるための曲、魅せるための衣装と対照的になっている。
仁菜たちが大人に成りきれない青さで暴れている中、大人の世界で生きるダイダスはこれ以上ないほどに対照的だ。

ファッション、外見の認識においてやはり仁菜は彼女の一歩後ろを行っている。だがその青さこそがまた彼女の魅力であり「大人」には出せない負の原動力を生み出している。
捨てられなかったコンプレックスを抱きながら足掻  くがむしゃらな姿に心を震わされるのだから。

以上が仁菜にピンク服を着せてライブをさせたシーン、失われた少女性をもって彼女のコンプレックスを刺激するという行為に宿る私の性癖の全貌である。
ダイダスとの対比も含め、今の時点ではこれ以上のものは見えない。なのでこの光と闇の戦いがどうなるのかは私が視聴していく中でとても楽しみな点の一つだ。

そう、まだまだ楽しみは尽きない。展開としても話も面白く毎週狂おしいほどに泡を吹きながら視聴している。しかしまだ真の狂いとの出会いがない。
キャラ単体、こいつこそが往くべき道といった生物にはまだ出逢えていない。みんなかわいいし好きだが一線を画すかいぶつがまだ出てくるのではないかというのが楽しみでならない。

このまま順当に仁菜を好きでぶっちぎられるのか、果たして別のところから爆弾が飛んでくるのか。まだ見ぬメンバー2人がどんな奴なのかも楽しみである。

そのためにはここで一発、俺も世界に中指を立てておく必要があったのだ。ちゃんと俺は本気で癖を感じて興奮しているのだから。
よく分かっていないし刺さってもいないけども仁菜ちゃんマジやべー女wみたいにネットで盛り上がるために吠えてるやつとはわけが違う。「ぶっ刺さる」と心の中で思ったならその時スデに中指は立て終わってなければならない。

話が進み、この感情がより大きな力で上書きされる前に。全部見終わってから、そういえばあそこも良かったと感動が薄くなる前に。

この激情が【やり残した鼓動】になる前に。

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