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""君ーEDFー""が歴史を作れ【地球防衛軍6】感想

誰もが諦めて静寂が支配するこの街で
それでも立ち向かう雄々しい君の姿
もう顔を上げ笑え 英雄が戦う最前線
再び立ち上がり我らも共に行こう

地球防衛軍5

※EDF5と本作のネタバレなくしてこの話を出来ない為、ネタバレには注意すること。


EDF5の正統派続編、よりヒロイックに

先日EDF6をクリアした。正直作品に対するハードルは高かった。それは前作であるEDF5が想像を超える面白さと熱さを繰り出して来たからだ。
EDF5は本当にすごい作品であった。長所を伸ばすことに特化しながら新たな試みも織り交ぜていたからだ。元来EDFが持つ長所、それは良い意味でのB級感である。ポジティブな意味で非常にチープでバカバカしいストーリーやセリフは話題に上がることも少なくない。

だがそれ以上にEDFが持つ絶対的な武器とはヒロイックさである。これは特に3以降顕著な要素である。今やこのヒロイックさというジャンルにおいてEDFは唯一無二の強みを確立させている。
その路線としての存在を決定的にしたものは言うまでもなく「ストーム1」という存在、あるいは概念である。
絶望的な状況でも孤軍奮闘したった一人で戦況を覆し世界を救う。EDF3におけるマザーシップとの戦いで生まれた概念。

「ストーム1が戦っている! たった一人で」

あまりに有名な上記のセリフにより「ストーム1」という存在の確立が成された。その方向性とストーム1を最大限利用した話がEDF5のストーリーになる。
EDF5のストーリーに関してはストーム1ならば絶対にどんな状況でも打破して勝つからどれだけ過酷な戦いを強いても問題ないという心意気のもとに作られたストーリーとしか思えない苛烈な戦闘が特徴だ。
EDFシリーズに触れ「ストーム1」という存在を知っていて「ストーム1は……お前だ」でテンションがぶち上がらなかったものは存在しない。

大まかなストーリーを追っていくがEDF5は突如として現れた宇宙船団と「プライマー」という謎の存在との地球を賭けた戦いである。
戦闘理由は疎か彼らがどこからきたのか、そして何者なのかなど全てが推測の範疇でしか語られることはない。故に謎の宇宙人達を相手に一方的な防戦を常に強いられることとなる。
一戦一戦という眼の前の戦いベースでは勝っていくものの大局的には人類は劣勢に追い詰められていく。

基本的にEDF5は常に劣勢の戦いとなる。一つ強大な敵を倒しても次々と新しい敵や兵器が現れまた新たな苦戦を強いられる。これらに対してもこちらの想像以上のことを知ることはできない。
そんな戦いを繰り返し辿り着いた果てがEDF5のラストバトル、絶対に重要な戦いに勝ち続けるストーム1は戦力差としては劣勢のまま敵司令と思われる存在「銀の人」を討つ。
それによりプライマーは地球から去り、人類は結果的に勝利を手にする。
だが勝利と引き換えに人口は1割まで減少し文明も大きく後退してしまった。勝つには勝ったが失うものはあまりにも大きかった。

だからこそ、あのパワー系投げっぱなしEDが胸に染み渡るのだ。全くもって根拠のない「問題はいっぱいあるけど地球にはEDFがいるから大丈夫」という考えうる問題点の全てを投げ捨てた理屈が最強なのだ。
一見するとただ全てを放棄し投げているように見える。だが本質的には違うのだ。なぜならばEDFは必ず勝つのだから。ストーム1の戦う戦争に負けはない。EDFという組織が戦う限り地球は侵略者の手に堕ちることはない。
だからあのEDに偽りはない、そして既にそれだけでEDF6のストーリーが分かってしまうのだ。そう、EDFの勝利というストーリーだけは決定事項なのだ。
そして、このエンディングはEDF6をクリアしてから見ることにより真価を発揮する。こちらは後述する。
事実EDF6において5のEDは嘘偽りのない事実と成る。だが人口1割まで減少に加え、帰っていくプライマーに置いていかれた侵略生物が闊歩する絶望的な世界に希望はあるのか。
答えは、ある。それは「EDF」という存在そのもののこと。

プライマーとEDFが共有するタイムリープという武器

とはいえ戦況は絶望的であり、なおかつ勝利条件は非常に不明瞭だ。明確に倒す敵が誰かも分からない、人類に反撃の兆しもない。状況が状況すぎていくらEDFという作品がパワー系ゴリ押し系でもあまりに展開が酷いと冷めてしまう。

そこでEDF6が出した答え、それこそが本作の核となる要素「タイムリープ」だ。一般的に想起されるような小洒落たタイムリープではない。
本作のそれはあまりにも泥臭い。それにより6においてストーム1とプライマーは最終的に対等かつ拮抗した戦いを繰り広げることになる。
プライマーはタイムマシンを利用して常に人類の先回りをして有利に戦争を進めてきた。そんな中で偶然にもタイムマシンへの巻き込まれ事故で人類でたった2人だけ「ストーム1」と「プロフェッサー」だけが記憶を持ったまま過去へ戻ることを可能とした。
2人は幾度となく抗い、未来の改変が失敗する度に過去へ戻り対策を考え未来を変えようと戦いを続ける。

タイムリープで過去を変え、勝利を手にしようとする。この1点において人類とプライマーは同じ土俵に立っている。違う生物、違う武器、違う命。だが互いが各々勝利という共通する目的を掲げ、同じようにタイムリープを利用して戦う。
更には人類とプライマーという戦いの構図はどんどん縮小化していき、最後にはストーム1と銀の人の互いの種族を背負った戦いに成る。
この泥臭いタイムリープバトルという設定には本当に感服した。この路線での戦いはEDFとして初めての企みであり、そして前述したヒロイックさを演出するのにこれ以上ないアクセントとなっている。
プレイヤーはストーム1として幾度となく未来の改変に失敗して絶望し、その度にまた少しずつ未来を変える戦いのやり直しを強いられる。EDF5で戦った戦場を改変しながら戦うのは続編ならではの楽しさが存在している。

どんな状況でも諦めず敵を討つ。EDF3で生まれ5で洗練されたストーム1という英雄像の「勝つまで戦い続ける」という属性がフォーカスされている。
民間人から圧倒的スピード出世をかましてきたEDF5のストーム1はEDF6にて行われた過去改変の戦いの中の一環に過ぎなかったことが明らかになる。
タイムリープによる常人を遥かに超えた戦闘経験が為せる行為だったのだ。これらは元来持っていたヒロイックさを更に押し上げている。
【くだんの日】を境にEDF7、8、9とどんどん進んでいく演出からEDF5という作品は5週目の出来事であったということを見て取ることができる。

私怨で未来の火星人を絶滅させた男

更に特筆しなければならない存在がある。そう、プロフェッサーという相棒だ。
EDF5においては「軍曹」を筆頭としたストームチームの面々はキャラが立っていてなおかつゲーム上でも頼りになる存在であった。それでも最後にはやはりストーム1によるたった一人の戦争となるわけだが。

EDF6は違う。最初から最後まで二人三脚での戦いとなる。プロフェッサーの存在がその演出を成功させている。
最前線で戦うストーム1と作戦部隊で戦うプロフェッサー、2人が別々の戦場でそれぞれ孤軍奮闘する。彼の存在は相棒と呼ぶに相応しい。EDFは遂に仲間に対しても孤独に戦うヒロイック属性を付与してきたわけだ。
この相棒を作ったことは非常に面白い試みである。今回の戦いはどちらが欠けても勝つことは出来なかったからだ。

プロフェッサーの存在があったからプライマーに勝つことができた、しかし同時にプライマーと戦う原因を作ったのもまた彼である。そのイカれた行動力と能力の高さ、そして倫理観のなさには度肝を抜かれた。

明確に流れが変わるのはミッション85【怪物襲来】からである。タイムパラドックスを恐れるあまり繰り返す歴史をなぞりながら打開策を探していたプロフェッサーが吹っ切れるところだ。

「君が歴史を作れ」
この言葉はEDF6そのものを象徴するセリフである。その言葉通り、ここから過去改変バトルは更に加速し苛烈さを増していく。

タイムリープを利用した戦術の立案に加え、プライマーから技術を学んだアーマメントバルガを筆頭とした新武器を作ったり、未来を知っているからできる行動の先読み戦略がプロフェッサーから繰り出されていく。
それと同じようにテレポーションシップの撃墜法を知っているストーム1もそれを速攻で破壊しに行ったり入隊初日にバルガでテレポーションアンカーを粉砕したりとやりたい放題やる様になる。
タイムリープ事故の再現を記憶し、毎回状況再現を行うプロフェッサー。毎回同じようにタイムマシンを攻撃できるストーム1。両者がいなければこのタイムリープによる学習と成長は成し得なかった。
こういった面で本当にどちらが欠けてもならない二人三脚の戦いであった。最初は相手にもされなかったプロフェッサーのタイムリープによる未来を加味した戦術も終盤になるにつれて戦術本部で作戦の核として信じられていく様は大いなるカタルシスを生んだ。

そして最後の戦いにおいてプロフェッサーが私情8割でプライマーという種族そのものを絶滅させる作戦を進めていたことを知ることができる。戦争している相手だけではない、非戦闘員を含むプライマーという種そのものの根絶だ。
これには大層驚いた。プロフェッサーはそもそも思考のレベルがプライマーと同じだったのである。時間旅行によるミスでのタイムパラドックスを恐れて人類を根絶やしにするプライマー、プライマーが生きている限り妻が殺される可能性があるからプライマーを生まれないようにするプロフェッサー。
私情で種を絶滅させようとする傲慢さにおいてプロフェッサーはプライマーと同じ土俵に立っている。

火星の環境を粉砕することでそもそも生物が生まれない土壌を作る。それにより火星人であるプライマーは生まれることなく消え去る。あまりにも倫理観のない非人道的作戦である。その非道さにオペ子もドン引きしていた様は本当に笑わせてもらった。

「プライマーという種族ごとその存在を消す権利が人類にあるのか」そうプロフェッサーに問いかけるオペ子。それに対してプロフェッサーは「あるとも!」と即答する。本当にあまりにも間髪入れずかつ食い気味に断言する為、非常に凄みがある。
やっていることの重さに対する悲壮感だとか罪悪感を湧かせない凄まじい勢いとテンションはEDFならではだ。当然ながらそんな権利は誰にもない。
プロフェッサーは「妻のカタキ」というただその一点の私情でそれをさも正当であるかのように行っている。それに対するオペ子以外の言及もなく、作戦も問題なく実行されて成功する。
プロフェッサーの思想に対する善悪や正否は問題ではなかったのだ。その容赦のなさは逆に清々しくてここまでくると気持ちが良いまである。

これをプライマーに対する虐殺行為への報いと取るか人類の傲慢、あるいはいつかくる報いの下地を作ったと取るのか。その答えはどこにもない。ストーム1はただ敵を討つだけだ。

人類の代表者であるストーム1はプライマーの代表者である銀の人を討つ。それにより時間は収束し、プライマーという存在そのものが歴史から消え去る。
文字通り、歴史を作ったことになる。やはり最後まで二人三脚の構図は変わらない。プライマー絶滅までの道筋はプロフェッサーが立てるが最後にはストーム1が銀の人を倒さなければ人類存続というタイムパラドックスの収束は行われない。

そして感動のEDである。今度こそ人類は完全なる勝利を手にした。EDF6のEDは本当に素晴らしい。それはEDF5で見ることのできるEDへのアンサーでもあるからだ。
EDF5の終わり、即ち5週目の途中において人類は絶望的な状況に立たされていた。それでも希望はある。世界には新たな正義と秩序によって絶望も終わりを迎えるだろうと。その理由は以下の通りだ。

世界に悪が蔓延することはなく、
暴力が人を支配することはない。

新たな正義が掲げられ、
人々は秩序を取り戻すだろう。

なぜなら、我らがいる

我らは
人を守り、
平和を守り、
この星を守るもの。
我らの名は

EDF

地球防衛軍5 エンディング

そう、EDFという存在そのものが希望である。勝利への希望である。事実、EDFは最後まで諦めずに戦い続けることで勝利する。そしてEDF6においてEDでは以下のように出る。

世界に悪が蔓延することはなく、
暴力が人を支配することはない。

新たな正義が掲げられ、
人々は秩序を取り戻すだろう。

それは間違っていなかった
その通りになった。

こうなるとわかっていた。
なぜなら……

君がいる。

人を守り、
平和を守り、
この星を守る者。

君こそが

EDF

地球防衛軍6 エンディング

EDF5のEDにおける語り部はプロフェッサーだった。そして彼がそこで語っていた「希望」とはストーム1の存在そのものであったことが分かる。プロフェッサーはずっとストーム1による勝利を信じていた、それを希望だと謳っていた。
戦闘員としては並でしかないプロフェッサーが心折れずにタイムリープを繰り返せたのは「君」の存在が大きかったからだ。ストーム1という存在はただの「英雄」ではない。プロフェッサーにとってはそれ以上に「希望」であり「光」であった。

ここにこそ、プロフェッサーとストーム1の絶対にして揺るがない関係性が見て取れる。お互いに足りないものを補い合っていることが分かる。
どちらが欠けてもプライマーの絶滅による完全勝利を手にすることは出来なかった。たった2人で絶望の世界を生き、タイムリープを繰り返し手にした勝利だ。

ここにおいて、絶対特筆しないとならないことがある。勝利への糸口、反撃の狼煙は理知的なものから始まったわけではないということだ。
忘れてはならない。「君もやりたいようにやれ」これらのプロフェッサーの無茶苦茶な開き直りによる大暴れから未来が徐々に変わっていったことを。
それまで記憶を保持し、なんとか死なないようにタイムリープを繰り返しなんとか打開策がないかと細々と正統派タイムリープバトルをしていたから。だからこそこのやりたい放題から事態が好転していく様にカタルシスが生まれる。また、このパワー系な展開からは非常に濃いEDFらしいB級感を見て取れて好感が持てる。

「EDF」という概念

総じてEDF5の続編として非常に完成度の高いストーリーであった。
プライマーという謎に満ちた生物のことなど不完全燃焼だった部分に対する掘り下げや勝ったけど世界には絶望まみれだったというビターエンド寄りだった終わり方をもEDFらしい勝利へと持っていき気持ちよくしてくれたことにも好感が持てる。
5には5なりの熱さと面白さがあり、それらがあるからこそ6の面白さが生まれているのだとしっかり分かるストーリーの構成は見事と言わざるを得ない。

また、ストーム1の扱いも過去作へのリスペクトと更なるヒロイックさの付与と非常に良質であった。

プロフェッサーという倫理観0点のバディとの最初から最後まで駆け抜けたプライマー絶滅までの二人三脚。あまりにも力に溢れていた。特に前述したオペ子との問答における迫真の「あるとも!」は唯一無二の評価点である。

次回ナンバリングが出るとすれば今までの傾向的に恐らく世界観等は全く別のものになるであろう。5、6と非常に良質なゲームであった為に7にも期待せざるを得ない。
次はどんな戦場が待っているのか。更にブラッシュアップされた戦いを期待したい。

どんな戦場が舞台であってもEDFはもうその確固たるブランドを確立させているのが強い。突き抜けたB級感は既に一つの概念となった。だから次回作においてもどんな戦いであったとしても良くも悪くも安心しながら戦えることであろう。

EDFなら勝つから大丈夫だろう、と。

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