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勉強だけできてもなぁ、なんて思われていると思っていた。#キナリ読書フェス

この夏、わたしは母校の京都大学オンライン公開講義にはまり、すべての講義を聴講した。倫理と哲学の違いも知らず、難しくて面白そうで、仕事にも役に立ちそうな感じがしたからだ。
薬学部を卒業して製薬企業に就職し、究極に人の命を扱うような仕事なのに、「命とは」「自己とは」なんて深く考えることは今までなかった。

講義の感想をSNSに書いていたら、薬学部の先輩「ソフィーはこの本が好きそう」といって、哲学者の近内悠太さんの対談記事を送ってくれた。

さらに、フェスBOX購入者限定の読書感想文講座(11月7日開催)で、岸田奈美さんがわたしのチャット(*)を見つけて「ソフィーさんは贈与の本を読むといいよ」と言ってくれた。

*チャット
Q1 なんかイヤでモヤモヤした体験
A1 家族がトイレットペーパーの芯を棄てない
Q2 その体験のどこがイヤだったのか
A2 人に迷惑をかけていることに気がついていない

そして、哲学者である近内悠太さんが理工学部数理科学科を卒業しているのも興味を引いた。(おっと、『世界は贈与でできている』を読もうとしたきっかけだけでだいぶ文字数を使ってしまった。本題に入る。)

贈与の定義:
必要としているにもかかわらず、お金で買えないもの及びその移動
例)サンタクロース

わたしは勉強が好きで得意だ。だから勉強していたし、いまでも勉強する。
学歴と仕事ぶりは比例しないものらしいので、「勉強だけできてもなぁ(言外の意味を含む)」って周りから思われているんじゃないかと気にすることがあった(被害妄想)。

本を最後まで読んだら、何のために勉強するのか書いてあった。
そんなこと、いままで考えもしなかった。

 贈与は、受け取っていた過去の贈与に気づくこと、(略)「 求心的思考/ 逸脱的思考」という想像力から始まるのでした。  
 実は、これを実行する極めてシンプルな方法があります。「勉強」です。
 子供のころ、僕らが学校や保護者によってほぼ強制的に勉強させられていたのは、なぜだったのでしょう?
「まずは何はともあれ、世界と出会わなければならなかったから」です。 そうでなければ、「常識」が身につかなかった。
 しかし、大人も勉強することができます。そして、それは世界ともう一度出会い直すための手段となるのです。

勉強して「常識」を知ることで、差分となるアノマリー(( 科学的)常識に照らし合わせたとき、うまく説明のつかないもの)が分かって、気づかれにくい「贈与」に気付くことができるんだ。(世間で言われる「常識を疑え」っていうのは、「ローカルルールを疑え」ぐらいのもっと軽いレベルの話。)

めちゃくちゃ納得した。勉強することが全肯定されてうれしい。

 具体的に言えば、歴史を学ぶことです。 いわゆる 日本史、世界史も大切ですが、経済史、政治思想史、科学史、数学史、技術の歴史、医療の歴史なども重要 です。
 なぜ歴史か。そこには僕らの言語ゲームとはまったく異なる言語ゲームが描かれているからです。 同じ人間であるにもかかわらず、生活上のあらゆる制度が僕らのそれとは異なっているのです。

少し前に『がん 4000年の歴史』を読んだときに、現代の日本に生まれた自分を寿ぐ気持ちになったことを思い出した。もしも、乳がんの外科的治療で胸筋やリンパ節ごとごっそりと「できるだけ広い範囲を切り取る」ことが競われるような時代に生まれていたとしたら…。手を洗わない外科医に手術されるような時代に生まれていたとしたら…。
医学薬学の発展によって、致死的な疾患であった一部の「がん」は、もはや、そう簡単には死なない「慢性疾患」になった。無病息災じゃなくて「一病息災」の時代になったのだ。そのような業界の片隅で働かせてもらっていることに、感謝の気持ちがわいてくる。

本の中ではSF小説や歴史上の出来事の例が示されていた。その中でもメンデレーエフが元素周期表に「ここにあるはずの元素がない」と気づき、ガリウムの発見に対して実験結果の誤りを指摘したという、実に痛快なエピソードが好きだ。「そんな研究して何の役に立つんだ」と言われて孤独だったメンデレーエフが報われた瞬間に、自分自身を重ねてみたい。

勉強だけできてもなぁ、なんて思われているかもしれない(被害妄想)けれど、ちゃんと仕事でも役に立ってみせますとも。誰にも知られない「アンサング・ヒーロー」として。この夏、テレビドラマで病院薬剤師が主役になった「アンサング・シンデレラ」をワクワクしながら見たことともつながりを感じ、2020年にこの本に出合えたことに感謝する。

あ、そうだ。4000年前からいた患者さんたちも、アンサング・ヒーローだ。このことに気がつくことができてよかった。彼ら・彼女らが命を懸けて病と闘い、その記録が残されていて、今の治療の進歩につながっている。だから、今、病と闘っている人たちも、アンサング・ヒーローだ。未来の患者さんのためにデータを贈与してくれている。

そして、わたしは「孫の顔が見たい」と息子に言ってしまいそうだし、今年も年賀状を出してしまいそうだけれど、それが「呪い」ではなく「贈与」になるよう、祈りを込めるのである。

さいごに

岸田奈美さんは、頭がよくて優しい。大好きだ。
近内悠太さんは、昨晩zoomのブレイクアウトルームに降臨してくださった。きっとわたしにサイン本をくれるに違いない。ぜったいに、いい人だ。

#キナリ読書フェス #世界は贈与でできている

【2020年12月27日 追記】
著者特別賞をいただきました!
近内悠太さん、ありがとうございます〜!

【2021年2月15日 追記】
近内さんのサイン入りのご著書!届きました~📖ありがとうございます!

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