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『ハリトビ』

舞台『ハリトビ』

作・演出 堤泰之

2019/10/9〜10/20
@シアターサンモール

和田雅成おたくをやっている中ではお馴染みな堤さんの脚本演出。人のあたたかみがある柔らかなコメディ。泪橋ディンドンバンドに引き続いて今作も、安心して身を委ねられる作品だった。

ただ、今作はちょっと私には物足りなく思えた。もう少しばかり、オチとヤマの盛り上がりが欲しかったなあと思ってしまう。

春くらいからずーっと私は、物語に没入して感情の濁流に飲み込まれるようなカタルシスを演劇に求めてしまっているから、そのせいもあるかな。

若造が何言っとるんじゃ感満載だけど、書かないと気持ちを整理できないので。ごめんなさい、あんまりいい感想かけそうにないです。今作は作品を飲み込む以前で立ち止まってしまった感が強くて。以下のアドバイスにもならない文句は読みたい人だけどうぞ。

演出について。

今作のオチとヤマが、なんてことないことが「なんてことない」ようにしか私には見えなかった。この点が私は問題だと思う。傍観者にとってはなんてないことでも、当事者からしてみれば大事件で。その大事件なんだっていうことを観客にも伝えて感情移入させることは、『ハリトビ』のような日常を描いた作品では特に重要な点なのだと思う。役者さん方はしっかりとキャラ立ちしておりそこに生きてるように見えたし、5人とも愛したくなるキャラクターで泥臭くて素敵だった。

じゃあ何が足りないかっていうと、演出なんじゃないかと思う。

人物の配置とか動かし方は全く問題ない。美術も衣装も綺麗にまとまっていて見易かった。問題なのは照明と音響。あと脚本。

照明について。ロック喫茶・ハリトビに実際ついているであろう明かりをつけるのみにとどまっていた。時間によっての差はある。ドアを開けたら外から差し込む光もある。だけどそれだけだ。照明の重要な役割は、観客の視線誘導をし集中すべき画を絞ることだと、わたしは思う。独白のシーンでスポットライトで焦点が独白する役者の顔のみに絞られているのと、空間全体が明るく独白している以外の役者の顔も見ることができるのとでは、全くもって観客の感じ取れるものが違う。これを活用すれば、観客の心を手玉にとって感情移入させることだってできるのになぜしない?

ただのっぺりと全体を描くだけじゃなくて、絞るところは絞って良かったんじゃないだろうか。これは脚本にも言えることだけど。

「ハリトビを守りたい!」「ハリトビが大事だ!」って思いを大事にするならハリトビに関係ある人々に焦点を絞ってそれにまつわる話の分量を多くすべきだし、「俺たちみんな傷だらけだけどそれでいいじゃねえか、笑って生きてこうぜ」って思いを大事にするなら秋島くんの心の傷をもっと丁寧に描いてあげて人生の先人たる皆様がそれを聞いて共感なりアドバイスなりするシーンの厚みが欲しかったし、共通項を設定し演出で強調して欲しかったし、もっとみんな痛みを吐露していい。冒頭のカリカリした秋島くんにもっと「俺はお前らとは違うんだ!!(実際は似た者同士)」感を足してもよかったんじゃないかなあ...5人の群像劇だから何においても薄まってしまっているように感じる。主役なんだからもっと秋島くんに焦点絞っても良かったんじゃないかな?

あと、物語の時間の流れが一方向なのも単調でつまらなかったかなあと思う。ワンシチュエーションコメディだからそれは仕方ないことだとも思うのだけど。

音響について。音響って作品の空気そのものであって。そう注意して聴くものではなくて知らぬ間に酔わされているものだと思うのだけど。それでいうと、今回は全く酔わせてくれなかった。こちらも感傷に浸らせてほしい。まあでもロック喫茶っていう設定上、店内で流れている音楽と音響として流している音楽の差別化をしなくちゃいけないという問題点があるので難しいのかもしれないけどなあ。門外漢すぎて何をどうしたらいいとか言えへんのやけど、臭くなりすぎない程度のスパイスが欲しかったなあと思ってしまう。

全体的に、中途半端だなあという印象だった。

ほんとこれは私の好みの問題でしかないと思うので読み流してください。

お口直しのご飯タイム。物語の中にナポリタンが出てくるので前後で行きたいなと思って、立ち寄ったカフェアルル。

2匹のネコチャンがいて、白い子が相席してくれた。癒し。めちゃくちゃ女子サービスがいいし笑笑、また行きたいなあ。

そしてほんとごめんなさい、ハリトビを見てていいと思ったところも沢山あるし細かく書こうと思ってたんだけどそれよりも「物足りない」「なんてことない作品だった」が勝ってしまって書きながら嘘で塗り固めている気分になってしまいそうなのでやめておきます。

推しは相変わらずすらっと背が高くて色が白くて目がキラキラしててカッコよかったし、徐々に緊張の糸が綻んでいく過程のお芝居も綺麗で好きでした。ツッコミも健在。

そして津村さんのひねくれおじさん感が好きすぎるので絶対に次のモダンスイマーズは見に行きます!!!

私からは以上!今年の推しはあとカレンダーイベントに松ステ。最後まで楽しむ!

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