リーダーという重圧。/NCT

昨日、NCT127が一つの物語に幕を引いた。


この喪失感は何に例えたらいいのだろうか。


大手事務所から期待の新人として
過去に例を見ない実験的大所帯グループとしてデビューしてから早8年。
デビュー時「新人賞を取れなければお前の責任だ」と
スタッフから圧をかけられていたという話も有名で、
MAMAで新人賞として呼ばれる前のすがるように祈っていた姿、
そして新人賞を受賞したときにこぼれ落ちた大粒の涙たち。
テヨンが抱えている大きな重圧を初めて目の当たりにしたときだった。


”いいことはメンバーのおかげ、
悪いことは自分がリーダーを果たせていない責任だ”

8年間、第三者として見ていたテヨンは、
他人への惜しみない賛辞と自己犠牲で構成されたリーダー観のもと、
そのリーダーとしてのプレッシャーや想像もつかないような大きな責任を
いつもすべて一人で抱え込んでいるように思えた。
どこか常に孤独を纏っているようだった。
それもそうだ。
誰があの若さで、大人数のメンバーの将来を背負って
グループを存続させていく責任の重圧、
個性の強いアイドル数十人をまとめる大変さを一人で背負えるだろうか。

競争の激しい韓国のエンタメ業界で
グループとして今に至るまで存続してきたことだけでも評価に値するのに、
責任感の強い彼は夢だった東京ドーム公演を達成したときでさえ、
「自分は未熟なリーダーだ」と涙をこぼしたほどだった。


そんなテヨンが兵役に行く。



メンバーの誰かが兵役に行き始めると、
誰かが兵役を全うして戻ってくる頃には
他の誰かが兵役に行かねばならないという連鎖が起きる。
そして多くの場合、メンバーが揃うまでに長い月日を要し、
時には揃った姿を一生見られないこともある。
そんな”兵役”という言葉は、ファンにとっては
「これからこの全員揃ったステージをもう一生見られないかもしれない」
という悲しさを知らせる響きである。
NCTを応援しはじめた9年前、
いつかは来るとわかっていたものの
いざ現実となると受け入れがたいものだった。


そんな兵役を控えて迎えたTHE UNITY。
ソウル公演では涙が止まらなかったテヨン。
しかし、日本ツアーの最終日、最後のステージ、最後の挨拶で
何かが吹っ切れたように明るい表情をして、こう話した。



「メンバーのことをお願いします。
これでもそれなりに大きな役割は果たしていたと思うんだ。
リーダーとして」


未熟だといつも自分を責めていたテヨンが
清々しい顔で自分の役割を認めた事実に
気が付けば涙が止まらなかった。
ああ、やっとテヨンは
今まで背負ってきた肩の荷物を一つ下ろせたのかもしれない、と。


今までずっとリーダーという役目と真剣に向き合ってくれてありがとう。
8年間、不動のセンターとしてNCTを守り続けてくれてありがとう。
NCTのリーダーでいてくれてありがとう。
アイドルという道を選択してくれてありがとう。



次に姿を見せてくれるときは
もっと幸せそうに笑っていてください。
そしてさらに素敵なリーダーとして
堂々とセンターに舞い戻って来てください。


私はずっと彼を待っていようと思う。
そしていつか完全体がまた見れるその日まで、
ずっとずっと待っていようと思う。


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