2018年配信Netflixオンリー映画ベスト10

昨年にNetflixだけで観られる映画のベストを出してみたわけですが、今年も特にNetflixがオススメをしてくれないので勝手に紹介してみようとランキングをやりますのでお付き合いください。

私事ですが生活環境の変化から鑑賞本数が減ってしまいました。劇場・レンタルでの鑑賞数で見れば150本ほど。これは例年より50本減っています。一方でNetflix限定配信作は120本ほど。これは去年よりも20本ほど増えていて、ますます自宅で配信作を鑑賞する比重が増した一年となりました。

配信スケジュールを追いかけていて感じたのは、まず今年は昨年以上にNetflixオリジナル(扱い)作品の本数が追い切れないレベルで追加されていました。こんなランキングを出しておいてなんですが、まだまだ取りこぼしがあるのではないかと思います。また、去年に比べて非英語圏の作品も増えたと思います。特にスペイン語圏と東南アジアにはかなり注力してるなと感じました(これは映画に限らずドラマにも言えると思います)。

昨年同様に1位から10位の作品+何かテーマ的に響き合う作品の構成でいきたいと思います。今年も長い記事になりますが、Netflixを年始に観る皆さんの一助になれば幸いです。


10.パッケージ 俺たちの"珍"騒動

仲良しチームでキャンプに来たのに、そのうちのひとりが野外での放尿中にバタフライナイフを振り回し(なぜそんなことを!?)、彼の彼自身が切断され草むらに。大事な仲間の大事なところを見つけてくっつけなきゃ!という入口からして正気ではない上に、そうは簡単にくっつくことはなく正に邦題通りの"珍"騒動に。

『ウェディング・フィーバー』でゲスで下品で楽しい作品を撮ったジェイク・シマンスキがNetflixに。登場人物が大人でも高校生でもやることは変わらず下品一直線。でも、結構純粋な恋心とか友情をしっかり見せるし、本当にマズいとこは触れずにあくまでくだらないことをやるのに注力して誰かを犠牲にしないとこもまた今のコメディは保たないといけないラインなのだという真面目なことも考えたり。

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ペニス落書事件のS1から今度は集団脱糞事件で幕が上がる。相変わらずのスタートだけど、そこから浮かび上がる冤罪を生まれる構造、高校スポーツの歪さ、SNSやスマホの問題の描き方は流石。何故嘘を吐くかだけでなく何故嘘を吐かないかも描き出すのは見事。正確にはドラマだけど、8話4時間一気見推奨なので今年も映画としての紹介。


9.それぞれの正義

冒頭に登場するひとりの男の傷だらけで疲弊しきった顔。なぜ正義に忠実な彼がこんなことになってしまったのか。平行して描かれるのは不法滞在の家族の生活。警官による不正が横行する社会の中で、「みんながやってることだから」に納得行かない男が正しさを希求すればするほど事態は捻れていく。80分というコンパクトな時間の中で社会問題を撃ち抜くマレーシア映画。

今年のNetflix全体に言える東南アジア推しの流れの中で配信された一本。不法滞在の人々にもコミュニティがあるという現実に対して、確かに主人公のように「(法的に)間違ってる」ということはズレたことではない。だけど、彼の融通の効かなさが悲劇を招くのも事実で。招く側来る側が存在していて、双方に言い分や想いがあるからこそ問題が複雑化してしまうのだということを、ミニマムな視点で浮かび上がらせてた。

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札幌でツアコンをしているフィリピン女性が婚約者の浮気を目撃した結果ストレスで失明。そこに同郷の男性が現れ……。普通のラブストーリーになりそうな物語の構成を工夫することで新鮮な物語に。ありかなしかと考えると微妙なとこもあるのだけど、割と気持ちよく驚かされた。札幌の景色も少し異国感あったのが不思議。


8.軽い男じゃないのよ

ヤリチン男が頭を強打して意識が戻ると世界は一変。男は社会的に弱く、ムダ毛が生えることは許されず、怒れば感情的だと言われ、自身の身体を性的に値踏みされる世界に。口説かれたのを断ればゲイだと言われ、性的要求に我慢して応じる男も描かれる。そんな世界の中で、ヤリチン男はまずひとりの人間として自分が尊重されたいという願いを抱くようになり……。

欲望のはけ口にされるだけの男はごめんだと思うことから、自らの加害者性に気づくという展開がとても上手かった。ただ男女逆転する安易さではなく、性別の前にまず人間なのだという当たり前だけど大事なことを描き出すのにかなり展開が練られているように感じた。最後にディストピア的な後味が加わることで、現実の今の社会もやはり変わらない/変えないといけないという手抜きなさ。

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髪もサラサラにしてセクシーで完璧でいなきゃ。ってそもそも何のため?という、黒人として生まれ持った髪ではない縮毛強制したものを美の基準におくことへの疑問から、男性を喜ばせることを行動原理にすることからの解放。安易に主人公を甘やかさないスマートなラストシーンの後味も爽やか。


7.MUTE

近未来のネオンな卑しき街を行く純情な声なき騎士の恋人の行方探し。未来が舞台なのだけど、彼女はなぜ自分の元を去ったのかを追いかけるうちに彼女がどういう人間か知るという王道ハードボイルドになっていき、最後にタイトルと合流するのもよい。そして、ハードボイルドヒーローとしてのアレクサンダー・スカルスガルドの無骨なルックが光っている一作。

ビジュアルに原色を徹底的に取り入れることで立ち上る不穏と退廃の匂いといい、敵側のバディの怖さ(特にみんなポール・ラッドが出色)といい、ジャンル的に真摯な人探し・地獄巡り話になっていたと思う。ダンカン・ジョーンズらしい美しい物語になっていたと思うのだけど、あのトマトメーターの低さはなんなんでしょうね……(余り気にしてないのだけどねあのメーター)

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母をヤクザに殺された男vsアメリカに進出したド外道日本ヤクザ。物凄い豪華なVシネ感を漂わせつつところどころ炸裂するアクションが武器や小道具の使い方の魅せ方含め結構只事ではない。監督が『ラスト・サムライ』や『ボーン・アイデンティティー』のアクション監督とのことで納得


まだまだ他にも(次点枠1)

ジュディーを探して:テレビ番組のサクラとして番組を盛り上げることを仕事にしてる男が、ふとしたきっかけでネタとして注目されて自分の出演番組をチェックされて、町中で囃し立てられたりするハメに。自分の人生をぼんやり生きてる男に素敵な彼女ができて失いたくなくてを「人間をネタとして消費するTVショー」とからめて。

不死身のブリジ・モハン:自分の死を偽装した平凡な男の人生どうしてこうなった話。我欲から生じたとはいえ中々な階段の踏み外し具合と叩き込まれる重い後味。彼の人生は「どこで間違ったのか」という答えの出ない問いが宙を漂う、マサラしてないインドの佳作がまたネトフリから。ただし、これはカテゴリコメディ映画じゃない。ヘビーですよ。

カーゴ:ゾンビとなった妻に噛まれた男は人間でいられる残された生を幼い娘の生存に費やす。どうやってザバイブするかではなく、ゾンビになるのが明らかな中でどう生きるかに振ったのはとてもフレッシュだった。子供の命という重い重い荷物を背負ったロングウォークを続けたマーティン・フリーマンが素晴らしい。

アウトサイダー:主人公が白人で戦後の混沌とした裏社会を舞台にした物凄く金をかけて丁寧に美しく撮られたVシネ感。抗争物の旨味をもっとねってとこはるが、幼馴染でヤクザの浅野忠信の間に入ってきたジャレット・レトに嫉妬する椎名桔平という構図はもう二度と観られない。ただ、三池崇史監督トム・ハーディ主演版も観たかった。


6.ブロックバスター

病気の父のために撮った動画の結果、映画好きでアメコミ好きという最高の彼女から「あんたのせいで全人類に対する信頼を失った」と振られた男。彼はなんとか彼女の愛を取り戻そうとするのだがそこで選ぶ方法がバカなの?なのと同時に友達もいいやつすぎ。恋人にも家族にも素直になるのって大事だよねという優しさとラストシーンのキュートさが光る素敵なロマコメ。

恋人との関係、親兄弟との関係の双方を大事にしてどちらも取りこぼさないところに宿る誠実さが印象的。そして、フランスっぽさを感じたの性的な会話を「あけすけさ」の確認ではなく「当たり前」として描くことだった。性的な会話というのは、別に話す相手とセックスするためのものでも、性的な自慢のためにするものでもなく、ただ話題のひとつなんだってとこがね。それにしてもミシェル・ゴンドリーが本人で出てきたには驚きましたよ。

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自分の家を手に入れるための契約結婚からの?という100人が100人想像つく結末に向かうのだけど、インドの住宅/宗教事情を織り込みつつ楽しく軽やかに進むので2時間の長さを感じない。ヒロインは相手がやるべきことだけでなく自分がやるべきことも含め何事にも男女で「平等な負担」を求めるとこ凄く「今」だった。


5.エクスティンクション 地球奪還

宇宙人が侵略してくるという悪夢に苦しめられる男。だが、悪夢は現実に変容し日常が崩壊する。そして愛する家族も危険に晒されることとなる……って、あ!そこのあなた!「ああーなんかあるよねそういうやつ。知ってる知ってる」と思いませんでしたか?そんなあなたこそ今すぐ観ましょう。そういう既視感を上手く逆手にとった中々よくできた一本です。ある瞬間から見える景色が変わるこの気持ちよさ味わってください。え?短い?いいんです。これは観てくださいしか言えないので。

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突如地球に現れた人間が人間でなくなり自然が暴走する美しい異形の世界。そこを探索することとなった女性5人が何を観るのか。『エクス・マキナ』が閉じた研究所の中での自我という曖昧なものとの対峙なら、こちらは開けた自然の中での生命という確かなようで奇跡的なバランスの物との対峙。ほんと美麗な世界。


4.シティ・オブ・ジョイ

コンゴ民族紛争の犠牲となってレイプ被害に遭った女性たちを受け入れる施設を追いかけたドキュメンタリー。女性たちがそれぞれ自分に何が起きたのかを語る様は、時に悲哀に溢れ時に怒りに溢れていて観ていてとても辛い。だけど同時に「被害者の施設に“JOY”はどうなんだ」という指摘に対して中指立てる生の力強さもあった。

この作品はおそらくアカデミー賞にノミネートされるのではないかと思う。配信後にノーベル平和賞を受賞したムクウェゲ医師が関わっている(レイプ被害者が増えていくことを語る場面のやりきれない表情が印象に残る)施設だからなのもあるけど、今のこの世の中の流れの中でこういう被害だけでなく、癒しと強さをきちんと描いた作品は大事なのではないかと思う。


まだまだ他にも(次点枠2)

クリスマス・クロニクル:カート・ラッセルが担保する粋でファンキーなサンタ感で勝ち。クリスマスは子供にも大人にも優しくて楽しい日でないとねっていう、ネトフリが家族総取りしてお茶の間で観てねと本気を出してるような作品でした。エルフたちにミニオンみがあるので分かる子供を狙ってる感。そして、クリスマス映画の新しいクラシックになれるポテンシャルがあると思います。

呪われた死霊館:除霊詐欺で金を稼ぐ兄妹が依頼を受けるとそこは……。ジャンルの定番を上手く使いながらの進め方は上手かった。予測はつきやすいと思うけど、それでもこういう展開を持ってきたのは好きだった。まあ死霊館となんも関係ないよねこれ?な邦題が惜しい。

生きのびるために:父がタリバンに捕まった。女は買い物することすら許されない。でもうちに男は誰もいない。なら自分が男装して。という理不尽な状況を生きる少女の物語にシスターフッドの切なさも。アニメという形で「お話」を物語る分余計に、細やかな希望と語り手の救いになることを作り手が信じてると強い。


3.理想の男になる方法

ああーなんであの晩いい感じだったのにあの子と付き合えなかったんだ俺。そしてなんでその子の結婚式に出てるんだ俺。という男がプリクラを撮ったら3年前のあの日に。何度も人生をやり直せることに気づいた男は、彼女と付き合うために同じ日を繰り返す。果たして彼は幸せになるのかという興味を持続させながら、何が大事なことなのか気づいていく。

タイムリープ物なんだけど、1日やり直すと一気に時間が飛んで3年後になってるという設定がとても秀逸。その間に主人公も観客も何が起きたのか分からないから、やり直しの回を重ねても新鮮さが損なわれない。そして、何より役者アダム・ディヴァインが光ってた。『ピッチ・パーフェクト』などで一癖ある役が多いけど、この作品では真摯な演技が素敵だった。彼のキュートさがあってこその幸せ探しの物語になっていた。

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ジョボい犯罪を繰り返す男が罪を見逃してもらう代わりに問題を抱える子供の指導係に。明かされる彼の過酷な過去と子供たちに寄り添う温かさが同時進行。主演監督のケイロンとカトリーヌ・ドヌーヴの親子であり盟友でもある感じも優しくてとてもよかった。


2.バイバスト

スラム街の細い路地で展開する、麻薬取締官vs犯罪組織&街の住人という逃げ場なし敵は無限に湧いてくる環境でのサバイバル。本当に屋根の上や木の上から敵が出てくるし、男も女も関係なく殺す気で襲ってくるし、男も女も関係なく襲われるし、男も女も関係なく殺していく。舞台がほぼスラム街で完結している分、とにかく生き残るために死ぬ気戦わないといけないということが明確になっている作りが最高。

監督はあの傑作『牢獄処刑人』のエリック・マッティ。物語としては前作の方が複雑な作りだけど、クリアな映像は相変わらずでスラム街でさえ色気の空間に変えてしまう。そして、アクション見どころだらけというこれぞ観たかった映画でありがとうしかない。

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良心に目覚めた凄腕殺し屋が少女を救うという平凡なプロットを彩る噴き出す鮮血とあり得ない方向に曲がる関節、凄絶なバイオレンスの中で怪しく光るライト、男の美しき散り際。組織を抜けた男と同じ夢を見たかった男が戦いながら流す血という涙は格別。 敵役のイコ・ウアイスもクール。


1.オデッサ作戦

麻薬と武器(最終的には潜水艦)を仲介して売って大儲けしようぜという裏社会版ウルフ・オブ・ウォールストリートな滅茶苦茶すぎて滅茶苦茶面白いドキュメンタリー。明らかにやってることは犯罪なのに「楽しかったよな」「ヤバかったよな」と悪びれもせず語ることで生じるおかしな娯楽性。だけど、そんな男3人が迎える痛快でほろ苦い結末が、現実が小説を凌駕する「出来過ぎ」な後味を加えていた。

去年第2位に入れて今年アカデミー賞を受賞した『イカロス』にも共通するが、「よう撮れたな」って瞬間があるドキュメンタリーは面白い。だけど、『イカロス』は追いかけた結果撮れてしまったものが凄いのに対して、こちらはとにかく出てくる人間のエピソードひとつひとつが凄い(国際指名手配犯さえ出てくる)。しかし、本作の白眉は「あの楽しかった時間を過ごした三人」の姿が観られることにあると思う。たとえ三人の紐帯が犯罪であっても、青春と呼ぶには大人になっていたとしても、結果として上手くいかなかったとしても、共通の経験をして人生を謳歌した時間がある男たちの姿は眩しく美しい。

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25年以上前のシンガポールで19歳の少女たちが企画し製作したフィルムの行方を巡るドキュメンタリー。「人と違う私」でありたい青臭さとそこで終わらない彼女たちの情熱と才能も見せながら、浮かび上がるのは映画にすがる不気味で今まで観たことのない矮小な怪物のぼやけた肖像。


おわりに

皆さんいかがだったでしょうか。こんな長い記事を最後まで読んでくださった奇特な方、去年に続き本当にありがとうございます。年始に観ようかなっていう気になる一本、見つかりましたか?
こんな作品がよかったよ。この作品入れないなんてお前の目は節穴か。って方もいると思います。まあ個人のランキングなんでご寛恕を。そして、twitter等で一押し作品を紹介してみてください。ひとりの紹介がバズる可能性があるのも今のSNSなので。

ちなみに1位と2位に何が共通してるか分かりましたか?答えはNetflixオリジナル作品ではないということです。これはいつまで観られるか分からないということも意味しています。今の日本で視聴できるのはNetflixだけなのに、配信終了してしまえば観られなくなってしまいます。Netflixでは配信が復活することがありますが、それも保証されていません。そんな出会えなくなる可能性がある映画をひとりでも多くの人に観てもらいたいという願いも込めてのランキングです(それを抜きにしても1位と2位は不動ではあるんですが)。

さあ、今すぐ気になってるNetflixにアクセスして気になってる映画を観てしまいましょう!

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みゃーるす

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