タスク管理手法に悩んだあげく紙の手帳を取り戻した理由
仕事や学校で生まれる課題を、どのように処理していくかを管理するのが、タスク管理です。
僕は高校1年の時から、ずっとB5の週間バーチカル式手帳を愛用していたのですが、荷物がかさばると感じたため、3ヶ月ほど前に、iOS標準搭載のカレンダーアプリと、タスク管理アプリであるTrelloの併用に切り替えました。
しかし、タスク管理については再びTrelloから「紙の手帳」に回帰したので、その理由も交えつつ、今回は、各タスク管理手法の検討と、方法論についてきちんと考えてみたいと思います。
1. タスク管理とは
多くの人は仕事や学校において、様々なプロジェクトを抱えています。プロジェクトを達成するために、「やらねばならないこと」を任意の粒度で分割した単位を「タスク」と呼びます。
「タスク管理」の目的は、プロジェクトを達成するための行動計画を最適化するためです。
こちらの定義を借りると、最適化とは「制約条件がある中で複数の選択肢を組み合わせ何らかの成果を出すとき、その成果を最小または最大にすること」です。この最小または最大にしたい関数のことを「目的関数」と呼びます。
タスク管理において多くの場合、制約条件は「時間」であり、限られた時間内に目的関数である「プロジェクトの成果」を最大にするために、タスク管理を行います。タスク管理の効果として、例えば以下のようなものがあります。
・優先順位を管理する
・漏れなくタスクをこなす
・意思決定の量を減らす
・やる気、モチベーションをコントロールする
2. タスク管理の要素
ある日の自分の行動計画を最適化し、完全に定義するには以下の要素が必要です。
1. 各時刻に対して、「何をしているか(=タスク)」の定義 。
P(t) = A (t: 時刻、A: タスク)
2. タスクごとに、所要時間、優先度、デッドライン、到達目標、マイルストーンなどの情報が付随している。
A.duration, A.priority, A.deadline, A.due_date, A.milestones
これらの要件を定義するための手法は大きく分けて二種類あります。
1. スケジュール帳などを用いて、時間軸で定義するタイプ
2. タスクごとに定義していくタイプ。いわゆるTo Do リストの作成。
3.1. 時間軸によるタスク管理
週間手帳などで定義された時間軸上に、タスクを配置していく方式です。
利点
・各時刻においてTo Do選択に迷わなくなる
= 意思決定を分散させないことで、決断疲れを軽減する
・タスクを溜め込むことを防ぎやすい
・後回しにする癖が減る
・行動計画の軌跡を残すことができ、達成度に応じたフィードバックを行える
欠点
・スケジュール決定の準備がやや増える
・人によっては設定された時間軸に沿って生きるのがストレスフルである
・紙の手帳でこの方法は採用しやすいのに対して、アプリに関してはまだまだ十分 な直感性を実現したものがない
3.2. To Doリストによる管理
Trelloなどのアプリや、付箋・ノートなどにより、現在抱えているタスクをリストで管理するやり方。
利点
・タスク発生の際の反映が楽
・タスク全体の閲覧性が良い
・この手法を採用するアプリの種類が多いので、通知やリマインド、同期機能などを利用しやすい
・チーム内での連携に向いている
欠点
・タスクのリストを見るたびに疲弊することがある
・次に何をやるのか、いつまでやるのか、毎回小さな意思決定を行う必要がある
・あと回しにする癖がつきやすい
・各タスクごとの所要時間の違いが反映されない
4. 各手法の利点・欠点を把握しつつ、段階によって使い分ける
3ヶ月間、人と会う用事など重要な予定はiOS標準のカレンダーで管理し、タスクについてはTrelloのみで管理していましたが、やはり生産性に関してはTo Doリストの欠点が目立ちました。Trelloで管理していると、タスクの反映が楽なのでどうしても「漏れなくTo Doを洗い出したい」という思いがあり、すると一度に抱えるタスクが40~50にものぼってしまうことがありました。すると、リストを見ながら微妙に疲弊し、「次に何をやろうか」と考えつつリストをいじくりまわしながら、実は何もしていない時間が増えていることがわかりました。
そこで、紙の手帳を取り戻して、以下のようにタスク管理システムを作りました。
1. 「タスク以外の予定」は同期やリマインドが便利なiOS標準搭載のカレンダーで管理。ミーティングや、人に会う用事など。デバイス間で同期し、スマホでリマインドしてくれる。
2. もれなくタスクを切り出す、タスクの「発散段階」のツールとしてTrelloを使用。ここで優先順位を見極め、締め切りの厳格なものに関してはリマインド機能を設定。
3. Trelloのタスクリストを見ながら、紙の手帳を使って、時間軸上にタスクを配置し、次の日の行動計画を定義する。手帳はB5のものから、かさばらないA5サイズの小さなものに変更。レイアウトは、紙の自由度を最大限活かすために、日付とメモ欄のみのフリースタイルを採用。
3はこんな感じに書いています。
ステマではありませんが、手帳にはこれの「1日1ページ」レイアウトを使用しました。
こんな感じのやつです。
ツールが分散するのは確かにめんどくさいです。一元管理できるに越したことはないですし、面倒な場合は2のステップをスキップしたり、いきなり3に統合することもできます。時間がある時に1~3を一つのアプリでスムーズに管理できるものを実装したいです。現時点ではどのタスク管理アプリも100%に満足できないです。
僕はもともと非常に面倒くさがりな人間なので、時間ごとに行動を定義しないと、何もしない人間になってしまいます。しかし何もしないと不完全燃焼や罪悪感により幸福感が低下するのを知っているので、「プロジェクトの達成度」(緊張感)と「プライベートタイム」(休息)のバランスを上手く保つには、時間軸で管理するのが一番だと気付きました。なので、僕にとってタスク管理の目的関数は「プロジェクトの達成度」というよりもむしろ「日常の幸福度」です。
上の手法を採用したことにより、ブラウザにピン留めし、事あるごとに眺めていたTrelloのリストは、次の日の予定を考える10分間の間に眺めるだけで済み、意思決定を分散させずに一箇所にまとめることができました。これだけで決断疲れは体感的にだいぶ減った印象があります。
5. 紙の手帳は何が素晴らしいか
それこそ、「1日」が定義された紙という空間は一期一会なので、一日一日を大切に生きようという覚悟が生まれ、そこが個人的には大好きです。そのスペースを綺麗に埋めてやろう、というこだわりを促進してくれる、というか。やっぱり紙には贅沢さがあるし、一日一日もそういう気持ちで生きたい、という心構えが生まれます。
6. オススメのタスク管理手法まとめ
1. タスクが発生した段階でTrello等アプリのリストに反映する
2. 各タスクの洗い出し、切り分けを行い、粒度を均等にし、前処理により解像度を高める
3. 優先度を設定し、重要なものはリマインドを設定
4. 優先度に応じて、各タスクを紙の手帳に設置していく
5. 紙の手帳に、実際の行動を記録しつつ、達成度に応じてフィードバックを行い、習慣の改善を繰り返していく
2の「前処理により解像度を高める」とは、タスクが舞い込んできた瞬間に2分ほど実際に取り組んでみることで、所要時間を見積もること、タスク内のTo Doをより具体化することです。
例えば、タスク名が「報告書を書く」だけだと実際に取り組むまでの障壁が高いので、「1. タイトルを考える 2. Aさんに詳細を聞く 3. OOを調べる」などのように事前にTo Doを細分化しておいた方が、取り組みがスムーズになり、所要時間の見積もりも正確になります。これをタスクの前処理と呼び、生産性に絶大な違いをもたらします。
また、これも言い尽くされていることですが、「2分以内に終了するものは舞い込んできた瞬間に終わらせる」というのも、リストを絞るための良い取り決めだと思います。誰かにメール・メッセージする、などはその瞬間に終わらせています。
行動計画の軌跡を残しつつ、フィードバックをするのも大変重要と感じます。自分が実際にどれくらいの途中成果を残せているのかを観察するためです。同時に生活習慣の改善にもつながります。
目標設定ですが、一日の到達目標など短期間の目標は小さめに設定し、長期間の目標はやや挑戦的に、のバランスが自分にはしっくりきています。「短期間の死ぬ気の努力」よりも「地道な継続」の効果を評価しているためです。その方が精神衛生にも優しいです。これまでの経験的な感覚として、成果は相乗的に生まれるので、指数関数的に上昇していくと思っています。これを線形で見積もってしまうと、余計な焦りが生まれ完璧主義に陥り、精神的に余裕がなくなった経験があります。
タスク管理手法に悩んでいる方は、ぜひ試してみてください。
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