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田舎の少年はいかにして沼にハマったか vol.9

【ここまでの記事はこちら】
田舎の少年はいかにして沼にハマったか(まとめ)

【前回までのあらすじ】
謎のモグリ医師「K」の手術を受け奇跡の復活を遂げた貴志少年はさらに寿司を研究した結果、手作りの醤油の魅力にたどり着く。自分の理想の醤油にたどり着くにはまず世界を知る事だと考えた少年はルーマニアに渡った。ルーマニアの中でも奥地と言われる所に何かある気がした少年は現地で買った自転車で山奥に向かう。すると途中で女性の叫び声が聞こえた。急ぎ声のする方向に向かうと道すがら偶然にも滝を発見する。この世のものとは思えないその滝を見ていると自分の人生が浄化されるような気持ちになった。もう何時間滝を見ていた事だろうか。気づくと夕暮れ空も暗くなり、辺りには夜の帷が降り始めていた…

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「オレやんないよ。だって出来ないもん。」

学祭を目前にしたドラマー君の突然のドロップアウト宣言に訳がわからなくなる。

「いや…それは…ナシだと思うけど…」

あまりの驚きにワケがわからなくなりながらもどうにか勇気を振り絞って止める。
が、彼は足早に休み時間の廊下の雑踏に消えて行ってしまった。

どうすんだこれ…

ドラマー不在の学祭のバンド演奏はそれはもう悲惨だった。
ここに書くのも憚られるぐらい。

こうして、中学校時代の初バンド演奏は栄光とは程遠い結果になった。
世の中甘くないよ。

そんな中学時代だが、筋肉少女帯の影響から別ルートで気になる音楽が現れた。
それは「メタル」と言われるものだった。
ある日筋肉少女帯のライブ映像を見ていると、ギターがなんだか「ズンズン」と鳴っている。
なんだこれは。
雑誌などで読むと、どうやらメタルはギターがズンズンいうらしい。
そこにPUNKとはまた違ったアグレッションを感じたオレは「メタル…聴いてみたい!」となった。
当時中学校でメタルと言ったら「X(JAPAN)」ぐらいだったので、オレの元に海外のメタルがメタルが入って来る事はなかった。

さていよいよ受験も終わり中学も卒業、第一志望だった進学校も無事に落ちた(勉強しないからね)オレは滑り止めの私立高校に通い出す。
高校に行ったらサッカーとバンドやりまくるぞ!と意気揚々と学校生活が始まった。まぁこれまでもやってたけど。

中学校時代から学校とは別でボランティア活動をやっていたが、ちょうど高校に入った頃にその仲間の女の子「K」とたまたま音楽の話をしていたらメタル好きだった、と言う事が発覚した。
「うおー!オススメを貸してくれ!」
とすぐに飛びついたオレに友人は二つ返事で快諾してくれた。

その何日か後にKちゃんは約束通り

「おーい。持って来たよ。オススメのCD。」

と一枚のCDと何本かのカセットを袋に入れて手渡してくれた。
大喜びで感謝の意を告げ、ホクホクで家に帰る。
先輩に女性の裸が映ったビデオを借りた時と同じテンションでホクホクで家に帰る。

余談だが、そのKちゃんの兄のKさん(ややこしいけど両方Kです)がとある日

「おい。遠藤。裏ビデオ貸してやるよ。タイトルはフェイクで違うの書いてあるけど中身はバッチリだから。ビデオの最初もフェイクで映画入ってるけどしばらく見れば」

と一本のビデオテープを貸してくれた。
背表紙部分に「ベン・ハー」と書かれたビデオをバッグにしまいホクホクで家に帰り、こそこそと鑑賞した。

ベン・ハー。スケールの大きい映画だった。

結局そのビデオは頭からケツまでベン・ハーが入っていた。
ベン・ハー・オンリーだった。

オレはKさんにクレームを入れた。
すると

「あーごめん間違えた!こっちだ!」

と背表紙に「松田聖子物語」と書かれたビデオテープを渡して来た。

松田聖子、苦労したんだな。

松田聖子オンリーだった。
何がしたかったんだよKさん。

話がそれた。

オレはホクホクで家に帰ってその袋を開けてCDを取り出す。
グレーっぽい色のジャケットに英語でバンド名とタイトルが書いてある。

「アンド…ジャスティスフォー…オール?」

続く

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