焼肉パーティーでお肉が食べられない

「他人が肉をさらった後で、あの肉は焼けていたんだと知る」
私は箸を伸ばすタイミングが分からない。

皆で一斉に突っつく系の料理はだから苦手。シェアをすること自体は別に大丈夫。ただお皿に分けたりすればいい。でも、よーいドンで食べる系で私はいつも皆と同じようにスタートを切れない。

「お肉食べ過ぎてない?」「偏って焼いちゃってない?」とか他の人とのバランスとかそんな一々考えなくてもいい様なことを一々考えてしまう。

「あのお肉そろそろ焼けたよな~」とか思っても直ぐには箸を伸ばせない。そんな時は他の人もそのお肉を狙っていることが多くて、自分の箸と他人の箸とが被ってしまうことがある。そうなると私は本当に困る。だって、例えば電車に乗っている時に、何かの拍子に知らない人と目が合って、次の瞬間目を逸らしたり。例えば道で前から歩いて来る人が右によけるのか左によけるのか分からなくて、よけた先に相手がついてきてしまったり、そういう突発的な意識の交差ってどうしていいかわからないじゃない。
だから私はさりげなく箸の先をさっと切り替えて、近くの全く気にも留めていなかったお肉を掴み何事も無かったかの様に振る舞う。でも……
「そうして掴んだお肉は大体半焼けになっている」
一度口に含んだお肉を出して、もう一度鉄板に戻すわけにもいかないので、そのままごくりと飲み込んでしまう。

そういった事故を防ぐために私は「スリーカウントルール」を勝手に設けている。
「あ、焼けてそう……」と思ってから周りを一瞥して「1・2・3」
それから目的のお肉に手を伸ばす。そうするとね、事故を防ぐことが出来る。でもそれだとその前に誰かに目的のお肉を取られてしまうから、結局私は食べられない。

本末転倒だね。特に大勢の男性との焼肉は、兄弟の居た人ならわかると思うけど、あんな感じなんだと思う、遠慮なんてものはない。片っ端から焼けた肉はさらわれていく。幸か不幸か、私には兄弟がいないので、そういった兄弟同士での争いみたいな経験を今までしたことはない。大体のお肉は自然と回ってくる。箸が被る事故も滅多に無い。
温室で育った果物は美味しいが傷みやすい。
現に私は焼肉でお肉を食べそびれる。お米をキムチだけで食べて、クッパで腹を満たす。

少し言い過ぎたかもしれない。私だって多少のお肉は食べられる。だってずっとお肉ばかり食べられる人間なんていないから。皆が箸を止めがちになったのを見計らって少しずつ箸をお肉に伸ばし始める。最近だとお店に行けばバイキングと一緒になっているところもあるからこんな私でも十分に楽しめる。お店のそんな配慮がありがたい。サラダバーは嬉しいし、焼肉屋さんのカレーは美味しい、杏仁豆腐だって捨てがたい。
だからきっと私は大丈夫。皆で焼肉を食べに行ってお肉が食べられなくとも。

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