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RCA LC-1 vs LC-1B

さて、ご無沙汰の記事となってしまいました。
今までWIXというプラットフォームを使用していたのですが、写真や動画をクラウド上に保存する形式で、知らない間に無料会員だと500MB制限がかかってしまい、これ以上WIXで記事を書くには、月極で費用がかかってしまいますので、Noteに移行して記事を書きます。

さてプラットフォームが変わっても、ブログをサボっていた間に色々と進捗がありましたので、ゆっくりではありますが、まずはRCA LC-1 vs LC-1Bと題して、両者の比較を書いていこうかと思います。

1. RCA LC-1とは?

LC-1は音響工学の礎を築いたRCA社のオルソン博士によって開発されたスピーカーユニットです。
初代LC-1(写真左)は1944年発売で、なんと来年で80年となる、大変古いスピーカーユニットになり、有名なオーケストラのすり替え実験はこの初代LC-1
を搭載したスピーカーシステムで行われたそうです。

LC-1の登場後、振動板面積増大と周波数特性の拡張を行なったLC-1Aを発売し、その後日本ビクターにライセンスを提供したLCB-1Cが発売されました。(その後、今回登場するLC-1B,LC-1Cが登場します。)

僕が26歳なので、もう祖父・祖母にあたる、非常に歴史あるユニットみたいですね。

詳しい事は以下のサイトに記載していますので、ご覧ください。


2. LC-1&LC-1Bの外見

2.1 LC-1

表側
裏側
コルゲーション
ツイーター

 もうこの記事に辿り着く方であればご存知かもしれませんが、このLC-1はフルレンジではなく、同軸の2wayとなります。
 フレームもかなり堅牢な作りとなっており、非常にヘビー級のユニットとなっています。
 振動板は紙、エッジはシルクエッジという内容で、特にこの時代のユニットとしては珍しいコルゲーションが入っています。

2.2 LC-1B

表側
裏側
エンブレム
ツイーター
コブ

 LC-1B(A)と初代LC-1の外見的違いは、ウーファーに特徴的なコブが付き、ツイーター部分にディフューザーが設置されました。
 また、後述しますが周波数特性がかなり拡張された事もあり、時期回路部分のエンブレムには"EXTENDED RANGE"と誇らしげに記載されています。


3.測定

3.1 周波数特性(裸)

周波数音圧特性測定結果

 初代LC-1はかなり3k~8kHzに大幅なピークディップが生じています。これはそもそもの設計思想ではないので、80年経過した故の経年変化になるのでしょうか?
 対してLC-1Bは新しい事もあり、比較的フラットな特性になっており、低域も伸びています。"EXTENDED RANGE"に嘘偽りはなさそうです。

3.2 インピーダンス特性

インピーダンス測定結果

 見辛くて恐縮ですが、オレンジがLC-1、青がLC-1Bのインピーダンスカーブとなります。
 特筆すべき点として、LC-1のf0が約60Hzに対し、LC-1Bのf0が25HzとかなりLC-1Bが低域までの再生を狙っていたかを伺える結果となりました。
 実際に振動板を手で押してみるとLC-1Bの方がかなりサスペンションが柔らかいです。



4.比較視聴

4.1 エンクロージャー

スピーカーユニットは用意できましたが、さて重要なのは比較に用いるエンクロージャーです。
という訳で、コチラを用意しました↓

MI-11401

初代LC-1の純正(?)的な扱いのエンクロージャー「MI-11401」になります。なんかレトロな暖房器具のような、エモい見た目です。

RCAバッチ

ナッシュビルにあるRCA Victor studio Aにてエルヴィスプレスリーが録音した際、このMI-11401とエルヴィスの2ショット写真もあったりします

他の写真は以下のURLに有ります↓


4.2 周波数特性(with MI-11401@リスポジ)

 上記の例に漏れず、コチラもLC-1がオレンジ、LC-1Bが青になっています。
 やはりLC-1は2-4kHzが結構暴れてしまっています。
 また50Hz以下がスパッと切れていますが、これはDSP側で低域が入らないように遮断しているためです。

4.3 インプレ

 さて、長々と話しましたが、LC-1とLC-1Bの聴感上の違いについて書いていきます。

 まずLC-1は非常にブライトで音が前に飛んできます。特に声に関してはウーファー・ツイーターの材質が同じこともあるせいか、周波数特性の乱れほどの違和感は感じず、浸透力のある音を聞かせてくれます。
 但しレンジはそれなりに広いので、何でも再生できるという訳ではなく、ある程度ソースの年代は選ぶ感じです。

 対してLC-1Bはジャンルや年代に対しての耐性がかなり広くなりましたが、同時にかなり大人しくなり、飛んでくる感じは大分減ります。
 かといってLC-1のエッセンスを感じないと言われれば、そんな事は無く、軽やかで浸透力がある音色や、同一振動板に違和感のなさについては健在です。
 また今回箱がLC-1用なので、f0がかなり下がったLC-1Bにとっては、より適したエンクロージャーがあるように思います。(これでも十二分に良い音ではありますが)

4.4 動画

カメラ内蔵マイクで収録したので、あまり環境としては良くないですが、LC-1とLC-1Bの違いは分かるかと思います。


5.まとめ


 この手のビンテージスピーカーは経年劣化で、どこまでが本来の性能なのかが全く読めない以上、評価もし難いところではありますが、それでも両者共に個性が光る、魅力的な出音でした。
 恐らく上流機材を同じ年代に合わせていないので、まだまだ当時の音に再現は出来ていないのでしょうけど、それは今後長いスパンで育てていこうと思わせてくれる、素晴らしきユニットだと思います。


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