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酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第17回「鹿児島で飲むだけ飲んだ芋焼酎」

「一人酒」、それは孤独な酒飲みのように聞こえるだろうが、実はそうでもない。私は一人酒という言葉を酒場で飲み歩く時に使っている。にぎやかな雰囲気に包まれれば、その店に居る人は全員、飲み仲間だ。

一人酒ができなくなって幾歳月・・・再開の日を、ただ黙々と待ち続けていても仕方ないので、体験談エッセイを書こう。タイトルは、酔いどれ男のさま酔い飲み歩記。第17回「鹿児島で飲むだけ飲んだ芋焼酎」である。

はじめに

鹿児島市へは3年ぶり。飲み歩きもそうなる。今回は南九州を縦断するような旅行なので、鹿児島は宿泊中継地点に過ぎない。そうかと言って、ただ寝るだけに泊まるなんて、ヤボなことはできない。鹿児島で飲まないことなど考えられないぞ。

鹿児島で飲むのなら芋焼酎しかない。そのおびただしいほどの種類は、これまでの旅行で思い知らされている。今回は何種類飲めるだろう。楽しみでたまらない。そして、密かにマークしている酒場にも立ち寄りたい。

いつものようにかごっま温泉でひと風呂浴び、まちに繰り出そう。

天文館「潤造」からの「竿どん」~もちろん芋焼酎

鹿児島に行くと、ほぼ毎回寄っている店「焼酎天国」。生まれて初めて芋焼酎を飲み、その香りと美味しさに惹かれたきっかけとなった。もちろん今回も、「焼酎天国」は外せないと思っていたのだが、残念ながら定休日。本当に無念だ。

というわけで、代わりに居酒屋「潤造」へ。この店も芋焼酎がウリ、というよりも芋焼酎を飲むための店である。メニューはなく、おびただしい芋焼酎の中から好きな銘柄を選ぶというシステム。いつものことだが、何がいいのか、さっぱりわからない。

店員にお勧めを聞こう。他の地域へ流通していない芋焼酎から「鷲尾」をまず一杯。肴は秋太郎の刺身。秋太郎はバショウカジキのことで、見た目はマグロっぽいがそれよりもあっさりしている。日本酒と合わせれば、さぞや美味いだろうな。

でも、ここは鹿児島。郷に入れば郷に従えだ。

もう一杯、国分酒造の「芋」という酒を所望。芋焼酎はいくら飲んでも、酔い覚めがさわやかなのでどんどんと進む。でも、口明けは2杯で抑えておこう。

天文館を歩き、サッと入れそうな店を探していると、立ち飲み「竿どん」があった。鹿児島でも立ち飲み屋があるのはありがたい。昔ながらの店という感じではなく、今風の新しいしゃれた雰囲気。女性店員が切り盛りしている。

ここでは、プレミアム焼酎として名高い「村尾」を注文する。合わせる肴は地鶏の刺身。村尾はさっぱりした味わいで、さすがに美味い。地鶏にもよく合う。

これで、店がワイワイとにぎやかであれば、さらにもう一杯と進むはず。だが、この時はちょうどお客が私一人。オヤジ相手なら駄法螺(だぼら)も吹けるところだが、若い女性相手だと躊躇する。純情派呑兵衛なのだ(苦笑)
乗り切れないまま、結局1品1杯で撤収した。

天文館「はる日」~気さくなママさんと飲む

ここまでの2軒は、申し訳ないが前座だった。鹿児島飲み歩きの本命はこれから行く店である。天文館の裏手の小路にある小料理屋風の店。場所は、以前に鹿児島名物「酒ずし」を食べた有名郷土料理店のすぐ近くだったので簡単に探せた。その名は「はる日」である。

店内は角形のカウンターがあり、ママさんが一人で切り盛りしている。ハイカラな感じではあるが、どこか昔ながらの酒場の雰囲気が漂う。早速、芋焼酎を注文するが、この店は「白金乃露」一本勝負なので選択の余地はない。コップ酒でいただく。

どうして、こんな渋くて地元のご常連御用達の店を探し当てたのか。それは、吉田類さんの酒場放浪記のお陰である。

類さんが訪れた店となれば、悪かろうはずがない。

開店時間がやや遅めだったので、はしご酒の3軒目に据えたが、私が一番乗り。ご常連の姿はまだない。ホワイトボードに料理が書かれているが、鹿児島でのお目当てにしていたさつま揚げの文字は見当たらない。ママの得意料理では無いのだろうか。

ガランツと書かれた料理を頼む。出てきたのはメザシ。ママは私と年齢が近そうな感じで、とても気さくだった。竿どんの女性店員には声が掛けられなかったが、この店のママなら話もしやすい。

当時は九州新幹線が新八代から鹿児島中央まで開業したばかりで、私も鉄道を乗り継いで鹿児島まで来た。観光客が増えたかどうか聞いてみたが、「博多までの便がよくなっただけ」とそっけない。あまり新幹線効果を期待していないらしい。

郷土料理「酒ずし」も話題になった。ママは「あんなもん、どこがいいんでしょうかね?」と首をかしげる。確かに、日本酒でヒタヒタになったバラ寿司は、かなり個性的な風味がある。それにしても「あんなもん」呼ばわりか・・・(苦笑)

そこに、ご常連さんが店に現れる。ひょんなことから、酒場放浪記の話題になり、「実は私も・・・」と店にやって来た理由を白状した。ママに「最初に言ってよ」と怒られたが、そのあと、番組ロケの裏話もいろいろと聞かせてもらったのだ。

それにしても、番組スタッフがよくこの店を探し当てたものだなと感心する。ママは「番組の効果があるのかないのか分からない」と言っていたが、私のような風変わりな一見旅行者がやって来たのだから、効果はあったんですよ!

天文館「くいもんバーすずらん」~ようやくつけ揚げに出会えた

「はる日」で腰を据えて飲んだが、もうちょっとだけ一人酒をしよう。酔っぱらっているので、探し回るよりも、目に着いた店にパッと入ってしまった方がいい。やって来たのが「くいもんバーすずらん」だ。

ここは、おしゃれな居酒屋という感じ。ゆっくりと飲み食いしたかったので、テーブル席に陣取る。芋焼酎は「薩摩維新」という銘柄。そして、4軒目にしてようやくさつま揚げを注文できた。屋久島風だといい、すりつぶしたニラとトビウオの身を揚げたものだ。

イベントに例えるなら、最初の2軒が前座、「はる日」がメイン、この店はアンコールといったところか。でも、居心地は悪くない。何よりも、鹿児島で絶対外したくなかったさつま揚げ、いやお国の言葉で「つけ揚げ」を食べられたのが、一番の大収穫だった。

つけ揚げでテンションが上がり、おかわりに村尾酒造の「薩摩茶屋」をいただく。これだけ酔っていても、芋の香りを堪能できたのだから、さすが村尾である。飲んだ~。

〇〇〇
今回はここまでとします。読んでいただきありがとうございました。なお、このエッセイは2008年10月の備忘録なので、店の情報など現在とは異なる場合があります。

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