見出し画像

作品紹介|My little Rascal -月夜-

石川真衣さんがいろいろな思いを込め、とてもお気に入りの仕上がりになったと話していたのが本作です。横のドラマティックな構図に一瞬の静寂が封じ込められたような「月夜」。少し逆光気味な光の使い方で、印象的な世界観の演出に。読み込むほどに味わい深い絵になっています。

画像1

石川真衣「My little Rascal -月夜-」(2022年)
205×290mm(絵柄サイズ) リトグラフ ed.45

手前の広がりから奥に抜けていく道へと典型的な遠近法が効果的に使われていますが、ここに一片の物語性を感じますね。ここでは、手前の建物が人間の世界を、向こう側が自然界をそれぞれ表したかったそうです。

「人間の世界と野生の世界の境界線を、ひとつの画面に込めたいと思って作画しました。そのふたつのはざま、境界にたたずんでいるのがラスカルです」と石川さん。アニメを繰り返し見て考えていたコンセプトが絵の中に蒸留されています。(下は、色版を刷り重ねていく様子)

画像2

「夜」の絵にしては暗すぎない色づかいが選ばれているのがおわかりでしょう。夜だからといって黒のインクを使うのではなく、配色の妙で月あかりの夜が表現されているのです。「どこにも重ならない抜けの部分で紙の白さを利用し、うまく色を版わけできた」点も、石川さんのお気に入りのポイントです。

また、手前のスカンクたちとラスカルが見つめ合っていますね。この構図にも意味があり、「彼らはスターリングを介さなければ出会いませんでした。(画面中央の上から)夜行性である彼らを照らしているランプは、スターリングのメタファーとして描かれています」とのこと。

スターリングはこの絵には登場していなくても、ちゃんと彼らを見守る存在として形を与えられているんですね。

画像3


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?