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ワインジャーナル

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ワイン科学を軸に、マーケティング、ブランディング、テイスティングなど幅広くワインについて語るジャーナル。書き手は国内外の大学、大学院でワインを研究してきた3人。
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2019年9月の記事一覧

ワインの「だし感」を考察してみた。(後編)

ワインの「だし感」を考察してみた。(後編)

更新が滞っておりました。

前回はどういったワインで出汁っぽさを感じることがあるのかとか、出汁感ってそもそもなんなのかなんていったことを見てきました。

その上で、栽培されたブドウの含有するアミノ酸量が一般的な出汁に含まれるアミノ酸量よりも多いなんていうことも見てきました。

一方で、ブドウにアミノ酸が多量に含まれていても、そこからの醸造の工程でそれらの量は大きく変わっていくことになります。

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ワインの「だし感」を考察してみた。

ワインの「だし感」を考察してみた。

ワインに出汁感??
ワインを表現するときの「出汁感」という単語を聞いたことがあるでしょうか。

ワインの主要産国の歴史にフォンドボーのようなものはありますが、旨味という概念や、それを重んじた出汁感なんていう概念がないであろうことは想像に難くないと思います。

そのため恐らくワイン業界の共通語でもないだろうと思います。

ただ私たち日本人にとって「出汁感」と表現することがしっくりくるワインというのが

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ワインの価格高騰を嘆く若者へ

ワインの価格高騰を嘆く若者へ

今日はこんな記事を見かけました。

「ブルゴーニュワインの現在とこれから」

週末は平日よりむしろパソコンを開かなかったりで読み物が溜まっていたりしますね。

価格編なので値段の高騰について触れられています。

私はお酒が飲めるようになったのは4年前ですから、もちろん1990年代はおろか2015年ほどまでは全くワインの値段なんて気にしたこともなかったことになります。

そんな我々世代のワインに興味

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ワインを醸すマイクロカプセル化酵母

ワインを醸すマイクロカプセル化酵母

今回はワイン製造に関する技術の話です。

カプセル化酵母とするか、固定化酵母とするか、個人的にはコーティング酵母なんていうのも悪くない名前だと思ったり。

日本語訳があまり定まっていないような印象を受けるこの技術。

英語だと"encapsulated yeasts"というそうです。

日本語で色々と調べるとLALLEMEND社の情報ページがありました。

特にワインに特化して書かれているというわ

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ワインを飲むときのスワリングの仕方

ワインを飲むときのスワリングの仕方

みなさんワインを飲むときはどうやって飲んでいるでしょうか。
ワイングラスのボウルの部分は持たないとか、注いでもらうときは手を添えないとか色々とマナーとして言われているかと思います。

そのなかの所作の1つであるスワリング。
どうやっているでしょうか。

少し思い返してみてください。

右回りの人、左回りの人。
勢いよく回す、静かに回す。
手にもって回す、テーブルの上で回す。

色々とあると思います

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香りを感じるメカニズム

香りを感じるメカニズム

香りは嗅覚によって感知されているのは皆さんご存知だと思います。

この嗅覚は味覚や触覚などと同列の五感に分類されますが、どうも軽視されています。

そのため嗅覚に関しては味覚以上に研究が遅れていると言われているのですが、現状でどういったことが香りの世界にあるのだろうと思い調べてみました。

私自身も香りを意識する機会なんてほとんどなく、ワインのことを学び始めてから少しずつ意識するようになった程度の

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ワインの甘口と辛口。甘辛度表記で選べるの?

ワインの甘口と辛口。甘辛度表記で選べるの?

今日はちょっとした小さいコラムになります。

皆さんはワインの裏ラベルをじっくり見たことがありますか?

海外のワインだと英語だったりフランス語だったり、インポーターがラベル上から上貼りしていたり色々だと思います。

ただたまにそういったワインの中に「甘辛度」というのを表記しているワインがあるかと思います。

そういった背景や、日本酒の甘辛という背景もあって、ワインでも味わいを辛口とか甘口で表現さ

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ワインのミネラル:塩味は沿岸部のテロワール?

ワインのミネラル:塩味は沿岸部のテロワール?

ワインにおけるミネラル
ワインのミネラルに関しては多くの議論がありますよね。

「その土壌の石のミネラルが・・・」といったものや、「ミネラルの香りが・・」といったものなど、ワインの表現や造りの中でも「ミネラル」という単語はよく出てきます。

しかし、ミネラルに関する話は眉唾ものも多く、土壌の石の組成物質は数千年といった年月の風化がなければ、根から吸収することはできませんし、ミネラルに香りはありませ

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