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ワインジャーナル

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ワイン科学を軸に、マーケティング、ブランディング、テイスティングなど幅広くワインについて語るジャーナル。書き手は国内外の大学、大学院でワインを研究してきた3人。
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KDP第2弾『ワインと微生物学』

KDP第2弾『ワインと微生物学』

お久しぶりです。

最近更新できていなかった理由です。

本を書いていました。

なるべく仕事がはじまる前に終わらそうと思っていたので、なんとか2月中にリリースできてよかったです。

今回は前回のワインリテラシーとは全く別の系統の話。

醸造における微生物の話です。
アマゾンの方にもるのですが、目次はこんな感じです。

内容はこのnoteに書いてある酵母やブレタノマイセス、酢酸菌の話を中心に、乳酸

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ワイン濾過のフィルターサイズの種類(粗濾過、仕上げ濾過、無菌濾過)

ワイン濾過のフィルターサイズの種類(粗濾過、仕上げ濾過、無菌濾過)

今回は濾過の2回目です。
トップ画は上手く合う画像を持ち合わせていなかったので、ビール製造のタンクです。
あと前回の記事が思いのほかTwitterで反響があり、やはり濾過についてまとめている記事というのはなかなかなかったのかなぁと思っているところです。

前回はデプスフィルターについて。

であるならば今回はそれと対をなすSurfaceフィルターについて、といきたいところなのですが、Surface

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ワインにおける濾過の種類(デプスフィルター)

ワインにおける濾過の種類(デプスフィルター)

今回から数回に分けて濾過についてのレポートを記事にしていこうと思います。

濾過って実務を経てないとほんとに理解しにくいトピックなんです。

そのため私も理解する、情報を取ってくる、まとめるのにかなり時間がかかりました。

そのため今回は科学の話というよりは実務的にややこしい話という形になるかと思います。

また引用で動画や画像も多々お借りして、なるべくわかりやすいようにという最善は尽くしたのです

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英語講座での質問一覧7月3~4週

英語講座での質問一覧7月3~4週

ここ2週間の参加者が少なく思いのほかうまく進まなかったので2週分にまとめてあります。

雹害って実際どんな感じ?
ワインの産地に起こる天候による被害で最も有名なのは霜害かと思いますが、雹も実はブドウに大きなダメージを与えると言われています。
実際に3週間ほど前私の滞在している南仏でも雹は降りましたし、その一週間後にはドイツで醸造をしている方も雹が降ったという報告をしていました。
その方も最近not

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オークチップテイスティング

オークチップテイスティング

日本でもオークチップが解禁されてもうしばらく経ちます。

個人的にはオークチップは安価でかつ私の好物であるバニラ香や樽香がしっかり付くので大賛成なのですが、使うのはなかなか難易度が高いそうです。

以前インターンシップで働いていたワイナリーもトライはしてみたがどうにもあまりうまくいかなかったそうで。

そのときの状況を詳しく知っているわけではないのでそこに関してはあまり書くことができないのですが、

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朝ワイン英語講座でのQ&A(7/8~12)

朝ワイン英語講座でのQ&A(7/8~12)

今週から新たに山梨の若手醸造家が1人加わり5人態勢でやっています。
まだまだ人増えても問題ないと思うので、気になる方は是非参加してください。
お試しでとりあえず1回とかだけでも大丈夫ですよ。現在も皆さん参加頻度はまちまちなので。

ということで今週のハイライトです。
ブドウに関する環境要因や成長サイクルなんかがメインの章になっています。
半分ぐらいしか進んでないので来週も引き続き5章を進めていきま

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ブドウの養分動態分析法~葉柄分析~

ブドウの養分動態分析法~葉柄分析~

今回は葉柄分析という手法に関してです。
分析結果を眺めて土壌や樹勢との相関や因果関係を仮説から導き出すのはなかなか面白いです。

葉柄(ようへい、英語:Petiole)は、植物において葉と茎を接続している小さな柄である。 通常は茎と同じ内部構造を持つ。 葉柄の両側に伸長した部分は托葉といい鞘状に巻いているものは托葉鞘という。

今回はこの葉柄部分を使った分析を紹介する。

これは一度調べたのだが、

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フェノールって?タンニンって結局なに?(化学のお話)

フェノールって?タンニンって結局なに?(化学のお話)

フェノール。タンニン。アントシアニン。

以前一度アントシアニンについては取り上げたのだけれど、
そのときそもそもアントシアニンとはなにかということをあまり突っ込んでいなかったように思ったので、今回はもっと基礎的な化学の話(基礎的とは簡単ということではないです)をしようと思います。

そしてこの構造が酸化の記事ともリンクしてくるので、読んでいただけると酸化の稿で少し理解がしやすいかと思います。

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コルクとスクリューキャップの比較テイスティング

コルクとスクリューキャップの比較テイスティング

前回の栓の選択というところに絡んだお話です。

夢は家に飲んだワインのコルクでアートを作ることです。
どうもおくむらです。

いつもは論文とかデータを重視しているので堅い文章になりがちなのですが、今回は経験に基づく話をします。

こういった話の方が読者の方にとっては面白いのではないかなとは思いますし、書きやすいのですが、こういった方向性を多くしてしまうと、重い方をそっちのけでやってしまうのであまり

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酸化還元と香り/色/テイスト

酸化還元と香り/色/テイスト

前回は瓶熟に関する基本と、瓶熟に関する酸素とコルクの関係を見てきた。

ここからはその酸素の量によって規定される酸化還元状態とワインの関係性を見ていきたいと思う。

酸化還元状態と香り/色/テイスト

酸化による色の変化というのは以前の酸化の話でしたように思う。
化学酸化と酵素酸化によってカテコールがキノンになって、それが重合することで褐色化するといった話だ。

ここではもう少し深くアルデヒドに触

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瓶熟成と酸素透過量とコルク

瓶熟成と酸素透過量とコルク

醸造家リクエストシリーズ2つめは
「瓶貯蔵の影響と、ボトルサイズによる違い」
これも酸化と関連する分野なので繋げるとリンクする部分があるかと思ったら案の定あったので、前回の話と合わせて読んでいただけると幸いです。

そして今回も例のごとく数回に分かれているので、1回目である今回は熟成の基本部分と瓶熟における酸素量について見ていきます。

瓶/ステンレス/樽と熟成

そもそも瓶熟成というのは出来上が

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栽培醸造家はパラディンだ。

栽培醸造家はパラディンだ。

皆さんはパラディンという職業を知っているだろうか。

パラディンはドラクエでよく出てくる上級職だ。

この上級職に就くには転職条件があり、僧侶と武闘家をマスターしていなければならない。

そしてワインメーカーは「パラディン」なのである。

もっとも別に上級職であればバトルマスターでも賢者でも何でもいいのだが、私はパラディンの響きがスキなのでただパラディンと称しているだけである。

なぜパラディンな

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ワインにおける亜硫酸の代替法-抗菌作用編

ワインにおける亜硫酸の代替法-抗菌作用編

前回は亜硫酸の効果の1つである抗酸化作用についての代替法を見てきました。

今回は亜硫酸のもう1つの作用である抗菌作用についての代替案を見ていきたいと思います。

サーモヴィニフィケーション(Thermo Vinification)

サーモヴィニフィケーションという技術がある。

これは除梗破砕が終わった後の発酵前の果汁が70℃程度になるように下の図のような装置で10分ほど熱を加えるというもので

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ワインにおける亜硫酸の代替法-抗酸化剤編

ワインにおける亜硫酸の代替法-抗酸化剤編

亜硫酸が抗酸化作用と抗菌作用の両方を持つ唯一無二の添加物であるということを以前の稿で述べました。

一方でトレンドとしてナチュラルワインといったものや、減亜硫酸ワインといったものがあるのもまた事実です。

ではどのようにして減亜硫酸ワインというのを作るのでしょうか。

亜硫酸を減らすだけでも減亜硫酸ワインはできますが、減亜硫酸という環境下でいかにしてワイン造りをコントロールしていくかということが重

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