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ワインの甘口と辛口。甘辛度表記で選べるの?

今日はちょっとした小さいコラムになります。

皆さんはワインの裏ラベルをじっくり見たことがありますか?

海外のワインだと英語だったりフランス語だったり、インポーターがラベル上から上貼りしていたり色々だと思います。

ただたまにそういったワインの中に「甘辛度」というのを表記しているワインがあるかと思います。

そういった背景や、日本酒の甘辛という背景もあって、ワインでも味わいを辛口とか甘口で表現される方もいらっしゃるかと思います。

下の画像のようなチャートのことですね。

画像はKIRINのFRANZIAという商品のものを使わせていただきました。
結構色んなところで見かけるワインじゃないかなと思います。


ただそういうときに閉鎖的なワイン愛好家が決まって言うのが、

ワインは基本的に辛口です。
そもそも糖分はアルコールに代謝されているので、意図して糖が残るように作られたようなワイン以外は全て辛口です。

みたいな答えなんですよね。

たしかにこういった表現や表記がなされることによって様々な誤解を生むという懸念は分かります。

でもメーカーはそんなことは百も承知で、なんとかして消費者とコミュニケーションを取ろうとやっているんじゃないかなと思うと、一蹴してしまうのはなんだか違うような気がします。



そこで今日はこんなものを見つけたんですね。


ここでブラウザバックしようとした方も戻ってきてください。


今日はそんな難しい話はしませんので。

この研究はタイトルの通り、甘辛度を推定式でなるべく簡単にメーカー側に算出してもらって、共通言語のようにできたらいいよね。

みたいな取り組みだと思っています。

同じ変数(エキスと総酸)で推定式ができればメーカー毎のばらつきも減るんじゃない?ということです。

エキス分:ワインに含まれる不揮発性物質でフラクトースや酒石酸、グリセロールや灰分などが含まれる。
総酸:表記が色々ありややこしいが、NaOHで滴定して算出される酸の量。表記としてはH₂SO₄ベースであったり酒石酸ベースであったりし、それによって数値も変わってくる。

あとはそこまで細かい分析をしなくてもエキスと総酸はメーカーの一般分析項目なので、小さいメーカーも同等の表記ができるようになるよね。

というのも目的にしています。


まずこの推定式を作るのに

エキスや総酸をコントロールしたサンプルの甘辛度のテイスティング実測値が必要です。

その実測値から推定式が求められ、最終的にそれを市販のワインの甘辛度表記、そのワインのテイスティングによる採点実測値、推定式による算出値を比べています。

メーカー表示甘辛度、推定甘辛度、採点甘辛度と3つに分かれていますよね。

そしてまず面白いのはこのサンプルは同一メーカーからのものではないのに、表示甘辛度と採点甘辛度にあまり差がなかったことです。
2列目のメーカー表示甘辛度と最終列の採点甘辛度の1の位はだいたい同じです。

つまりプロのテイスターが付ける甘辛度の点数と別々のメーカーの付けている点数が総じて変わらないということですね。

そのため初めに掲げていた1つ目の課題に関しては、問題ではなかったということになります。

そして、なにより消費者としてはメーカーを問わず、この甘辛度表記というのが案外バカにならず、味わいを予想するのに意味のあるモノだということにもなります。


そしてこの推定甘辛度に関しては少し造り手用の情報にはなるのですが、

サンプル3,14,18あたりは少しズレがありますが、こちらも表記されている表示甘辛度や採点甘辛度と大きな差があるものは少ないです。

このズレはフラクトース含量に起因すると推察され、変数を3つに増やした回帰式もこの論文では示されていますが、エキス分や総酸ほどメジャーな分析ではないので、実質2変数の回帰式を使うのが現実的だと筆者は言っています。

いずれにしても、エキス分と総酸の量から甘辛度にしたらどれぐらいかというのを推定でき、それが表記できるというのは消費者コミュニケーションの方法として知っといてもいいかと思ったので記事にしました。


自分がワインを買うときに甘辛度なんて気にしたことがなかったのですが、意外とこういった指標もバカにできないんだなぁと思いましたね。

この研究自体は1985年のものでかなり古いので、今はなにかしらアップデートされていたりするかもしれませんが、たまたま見かけたのでシェアといった感じです。

みなさんも是非甘辛表示を少しゆっくり眺めて、違う甘辛度のワインを横に並べて比べてみてはいかがでしょうか。

元論文はこちらから。
エキスと総酸で表す白ワインの甘辛度推定式

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