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ブドウの発酵前のCold Soak


収穫から発酵までの間には輸送や、破砕などのプロセスが存在するが、ここでは”Cold Maceration”という技術について取り上げたい。

以前自分が南仏のモンタニャックというところのワイナリーを訪ねた時にそこの造り手がしっかりと濃い赤を醸すためにCold Macerationを行っているのだと言っていた。
その行程を経ていると言っていたワイナリーには初めて出逢ったのだが、実際この技術はどれぐらいメジャーなのだろうか。

“Cold Maceration”というのは発酵がスタートしない温度で果皮からの抽出を促すという手法だ。

発酵と浸漬を別で行うようにするこの手法は最適温度の違いという問題を解決している。
発酵の最適温度は一般に20-25度、一方で浸漬は30-35度なので、それを同時に進めようとするとどうしても速度に「ズレ」が生じる。
そのため発酵が終わるまで浸漬は続けたり、発酵途中で果汁以外のモノを取り除いたりする。その管理をCold Macerationは簡易化してくれる。

発酵は15度前後からスタートするのでCold Macerationはそれ以下の温度であることが望ましい。
一方で温度が低すぎれば抽出がうまくできないので8-15度の間の温度で行うことが推奨されている。

この手法は水溶性の分子であるアントシアニンの抽出を促す一方で、難溶性の高分子タンニン、いわゆる渋いタンニンの抽出は防げる(一番渋みという知覚を与えるのは4-6個ほどのタンニン分子の重合体である)。
それによって安定した色調と、きめ細かいタンニンのワインを醸すことができる。

またこの手法にはペクチン分解酵素(通例1-3g/hl)pump overpunching down利用も効果的であり、果皮からの抽出をより促進することができる。

一方でpump overといった抽出を促す手法にも限界はあり、基本的には分子の抽出量はアルコールの度数で規定されるということが知られているので、むやみにこの段階でpump overを行うことは酸化という観点からも避けるべきだということも忘れてはならない。

このあたりの話は以前の稿を参考にしていただければと思う。

話を戻そう。


Cold macerationは香り高くかつなめらかで繊細な味わいと深い色調を持つワインを造るのに適している。
つまりこの香りを逃がさないよう発酵も比較的低温で行うことが望ましい。
またCold Macerationをドライアイスで行うこともよいとされており、その方法では、酸化を防ぐことによる第一アロマのキープ物理的な果皮の破砕による抽出といったことが期待できる。
CO2の使い方という意味では少しカルボニックマセラシオンに近いものがあるかもしれない。

いずれにせよCold macerationによる抽出を経たものは一般的な抽出のみによっておこなわれたものより、アントシアニンの量が多く、色が濃いことがわかっている。

日本では都農ワインがこの手法を用いているみたいだが、サッと検索した感じではそこまでメジャーではないようだ。マスカットベーリーAは梗を入れることでタンニンの量を増やし色調の安定を目指しているが、個人的にはこちらの手法も一度は使ってみてはどうかと思う。

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