ドイツ_ベルリン_ドレスデン__190615_0137

ワイン濾過のフィルターサイズの種類(粗濾過、仕上げ濾過、無菌濾過)

今回は濾過の2回目です。
トップ画は上手く合う画像を持ち合わせていなかったので、ビール製造のタンクです。
あと前回の記事が思いのほかTwitterで反響があり、やはり濾過についてまとめている記事というのはなかなかなかったのかなぁと思っているところです。

前回はデプスフィルターについて。

であるならば今回はそれと対をなすSurfaceフィルターについて、といきたいところなのですが、Surfaceフィルターについては次回のメンブレンフィルターの部分にしてます。

そのため今回はSurfaceを後回しにして粗濾過や無菌濾過など孔サイズによる分類についてみていきます。


孔サイズによる濾過の分類

Coarseフィルター (粗濾過)

前回の話ではDepthフィルターの中のPAD式の一部はCoraseフィルターのサイズで濾過できるという話であった。

そしてこの濾過はロータリータイプのものなども含み、目が粗く澱や濁りの多いワインに用いることができる。

一方でそれらのワインをはじめから目の細かいもので濾過をしようと試みると、すぐに目詰まりを起こし、濾過が進まなくなったり、最悪の場合機材を破損したりする。

ではこの濁りや澱というのはどれぐらいのサイズ感なのだろうか。

この図によると1㎛以上の画分が濁りとなり、これは酵母の死骸である澱などが含まれる。

そして1nmから1㎛の間の部分がコロイド状の分子であり、ここにはタンパク質やポリサッカライド、ポリフェノールといった化合物が含まれる。

コロイドというのは溶液中に溶けることはなく、分散している粒子のことを指し、牛乳なんかもコロイド溶液の代表的なものとして知られている。

また溶けている物質は小分子のフェノールや有機酸などが挙げられており、これらもまたマクロ分子と結合することで濁りを発生させる原因になる。

ここで再び前回のグラフを思い出してほしい。

この粗濾過で取り除けるのは細かい方の粗濾過のシートで1~3㎛、さらに粗い方であれば3~7㎛となっている。


そして大きい画分の滓や濁りは基本的には1㎛以上のサイズ感であり、こういった大きい画分を取り除くのが粗濾過と言えるだろう。

また下の表でいえばRigidに該当するものは取り除くことができ(析出した酸結晶や一部の清澄剤、オークチップの残渣など)、Softに該当するものの一部の分子サイズが大きいものは取り除くことができる。


ただこのコロイド状のものの除去という点では、ダイレクトに濾過にかけてもそこまで濾過できないので、事前に清澄剤や濾過剤を入れることでコロイドの分子サイズを大きくすることが必要になる。

これがCoarseフィルターによる濾過である。

では次のレンジであるPolish(仕上げ濾過)を見ていこう。


Polishフィルター (仕上げ濾過)

Polishまでなら目の細かいDepthフィルターでも対応できるということを述べた。
度々になるが以下の画像を引用すると、このPolishの孔のサイズ感は真ん中のバーで0.5㎛から1㎛ほどであるということがわかる。

このサイズ感はワイン用酵母やブレットなども取り除けるサイズになってくる。

例えばワイン業界で主に使われているフィルターのサイズは0.45㎛か0,65㎛の孔サイズのフィルターだと言われている。

特に仕上げではこれらのサイズのSurfaceフィルター(孔のサイズが保証されている方)がよく用いられる。

次の表を見てほしい。

0.65㎛では酵母を、0.45㎛ではワインやビールにおける全ての微生物が取り除けるとしている。

もちろんこの全てというのも孔のサイズが安定しているが故の話であり、Depthフィルターではそこまでの正確さは期待できない。

そのためSurfaceでこのサイズ感を選べば瓶詰にそのまま使える、Depthでこのサイズ感なら無菌濾過の前濾過といった形になるだろう。

そこで最後に出てくるのがSterile(無菌濾過)だ。


Sterileフィルター (無菌濾過)

これは0.1㎛から0.5㎛ぐらいの範囲だろうか。
基本的には無菌濾過は無菌になる必要があるので、孔サイズが一定のAbsolute型、Surface型である必要がある。

しかし、無菌濾過と同程度のサイズでもNominal(孔サイズが一定でない)ものもあり、幾度となく出てきているGusmer社のグラフの左の2つは、サイズは無菌レベルだがNominalなタイプのフィルターである。

このレンジの濾過はワインより清涼飲料水や水などに用いられるそうで、そういった液体の中のウイルスや微生物を取り除くことができるとされている。

ワインでも用いることは可能だが、過剰に濾過を行うことはワインから物質をプロテインやポリサッカライドなどを取り除いてしまう恐れがある。

さらにフィルターの目が細かい程値段も上がり、さらには労働力的にも無駄が生じる。

より細かい濾過をするためにはそれまでに段階を踏んで濾過をしなければならないし、それを怠れば孔サイズの小さい濾過ですぐに目詰まりを起こしてしまうからである。

そのため基本的には瓶詰前でもPolishサイズ(Surfaceタイプ)で十分と言えるだろう。

一方でワイナリーの中にはCoarseレベルの1㎛で仕上げるところもあるようだが、その辺りはそこまでの滓引きや清澄との組み合わせや亜硫酸の添加度合いなども関わってくるだろう。

ちなみにその1㎛の利用について、Gusmer社の講演では
「ほとんどが0.45㎛で0.65㎛がたまにあって、フランスだけ1㎛がスキなんだよね。」
Gusmer社はアメリカの会社なので、そんなことを少し皮肉っぽく言っていた。

その背景には濾過をすることで味わいを消してしまうということがあるように思うが、Gusmer社によれば0.65㎛での濾過と0.45㎛での濾過レベルで味わいに差が出ると判断できる人はほとんどいないというのが現実のようだ。

ただもしかしたら1㎛と0.2㎛では差があると感じることができるのかもしれない。
そういったことも少しではあるが、後述しているので、4回目の記事を参照にして欲しい。


ベストソリューションとは?

そこで同様のYouTubeの動画でBest Solution(最善の解決策)というのが挙げられていたので、それを見てみると以下のように言っていた。


結論としては元も子もないのだが、Depthにかけて前濾過をしてからSurfaceにかけて仕上げ濾過または無菌濾過をするのが、微生物的安定という目的を達成しつつ、経済的にベストなソリューションということだそうだ。

しかしこれはあくまでも濾過のフィルターを売っている会社の持っている資料。
これを鵜呑みするだけならだれでもできる。

ということで少し反旗を翻してみる。

これが次のスライドだ。
少し見にくくて申し訳ないが、フィルターがいつ使えるのかというのを示したもので、ここで見てほしいのはNTUという指標だ。

上の表でも段階的にこの濁度の指標であるNTUはフィルターによって下がっているのがわかる。

Polishの段階で5NTU、その後0.5~1、0.5NTUとSterileのフィルターでさらに下がっていく。

この濁度を示す指標に関して、濁度の指標とワインの清澄度の関係についての報告がある。

この図では輝いて見えるBrightな状態に白ワインでも1.1NTUで達するということを示している。

またこのTurbid(濁った)という状況と輝いているという状況の間の2~4NTUぐらいであればコンディションによっては十分だということになる。

つまりそこまでの濾過が必要なのかというのはもう一度問う必要があるのだ。
特に前濾過として先に出てきたような0.35㎛のNominalタイプのフィルターを使う理由は個人的には見当たらないと思っている。

ただこの濁度と濾過フローの図はどういった濁度の時にどういったフィルターを選択したらいいのか、選択できるのかというのを考える上ではかなり有益な資料なので、そういう参考資料として使っていただければと思う。



とりあえずここまでで濾過の種類の特徴(Depth,Surface)と目の粗さ(Coarse、Polish、Sterile)の5つについて見てきました。

これらを順に使って組み合わせていくことで濾過が円滑にかつ効率的に進んでいくということなのだろうと思います。

次回はメンブレンフィルターやクロスフローフィルター、逆浸透膜といったシステムや膜の種類の特徴を見ていこうと思います。
特にクロスフローフィルターは業界の方も、聞いたことはあるけど、実際なんなのかよくわからないなんていう話もありますので、よければチェックしてください。


これからもワインに関する記事をuploadしていきます! 面白かったよという方はぜひサポートしていただけると励みになりますのでよろしくお願いします。