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栽培醸造家はパラディンだ。


皆さんはパラディンという職業を知っているだろうか。

パラディンはドラクエでよく出てくる上級職だ。

この上級職に就くには転職条件があり、僧侶と武闘家をマスターしていなければならない。


そしてワインメーカーは「パラディン」なのである。


もっとも別に上級職であればバトルマスターでも賢者でも何でもいいのだが、私はパラディンの響きがスキなのでただパラディンと称しているだけである。


なぜパラディンなのか。


簡単にまとめると、

ワイン造りには醸造と栽培を大局的に把握、管理する必要があるからである。


この場合、醸造家というのが僧侶、そして栽培家が武闘家という下級職だと思っていただければいい。

パラディン的立ち位置の人がその分野の専任の栽培家や醸造家に勝ることは難しいので、下級職という単語が適切でないことは承知しているが、便宜的にここでは使わせていただいている。


そして世の多くのワインメーカーは栽培醸造家というパラディンによって成り立っている。


しかしパラディンになる道程は本来そう甘くはないはずだ。

パラディンへの道


私が常々思っていることの中に、日本のワイン造りは根本の理由や原因まで考えが及んでいないということがある。

これは私がインターンシップをしたり、醸造家の方の話を聞いたりするなかで常々感じてきたことであり、私自身がこれから解決していきたい部分でもある。
というよりこれは実は日本だけの問題ではなかったりもする。

ただ海外には経験値による知見の蓄積があるので、日本ほど問題が生じないのだろうと思う。


実際に今日も私は新たな発見をした。

LAFFORT社という醸造資材を扱っている会社のカタログにある不活性酵母について以下のような説明があった。

「パントテン酸(ビタミンB5)が含まれているのでH₂Sの生産を抑えます。」


醸造家でこの理由がわかる人がいるだろうか(答えはいずれ記事になると思います)。

恐らくほとんどいないだろうと思う。

もしかしたら私が醸造家を過小評価しているのかもしれない(だとすれば私の記事自体の存続が危ぶまれる)。


そんなこと知らなくても別にこの資材を使ったらH2Sの生産が減るんだからいいじゃないかと思うかもしれないが、では減らなかった場合にどうするのだろうか。



こういったことを考えるために一見不必要な酸化の科学や、酢酸菌の細かな代謝まで取り上げることにしているのだ。


恐らくこれらの多くの情報は問題が発生しないとスルーされるだろう。


ただ問題が発生したときに対処できないというのはこういったバックグラウンドが抜け落ちているからに他ならないと考えている。


もっと言うと、なんの問題も起こっていないとしても、自分が求めるスタイルに対して、行っている工程が適切なのかというのを突き詰めていくことは避けることができないはずだ。


そこまで深く突き詰めないとマスターできない大きな項目が栽培と醸造の2つに分かれているのに、それらを同時並行的にマスターできるはずがない。


しかし皮肉なことにそれらをどちらもマスターし、その工程に一貫性を持たせることができるパラディンにならないと、自分の思うワインへは近づけないのだ。


コンボ技という必殺技を習得する。


なんとも険しい山ではないか。



だから私は思う。

もし東大王なんかに出ているPCみたいな記憶容量の人が栽培醸造家を目指すなら話は違うだろうが、ヒトは誰もがパラディンになれるわけではない。

パラディンは主人公や特定の登場キャラがなれる職業なのだ。
もちろんモブキャラがなれる職業でもない。

だからせめて2人で僧侶と武闘家の役割を分担したほうがいいのではないかと思う。

そしてその場合、2人でパラディンを越えるための連携技を習得する必要がある。

そのために醸造家は栽培家のことを知り、そして何をどうしてほしいのかということを、相手ができる範囲というのを理解した上で伝える。

また栽培家は醸造家のことを知り、今年のブドウの出来とワインにする際のイメージや工程に関する助言を行えるようにする。


ひたすらレベル上げ


私はまだこの栽培家、醸造家という職業を名乗るほどにも達していない。


自分はどちらかというと栽培より醸造の方がスキなので、恐らく僧侶Lv.15/100、武闘家Lv.10/100ぐらいだろう。


どちらも半人前ではあるが、それでもできる限り情報を精査するためのバックグラウンドや知識を蓄えてきたつもりだ。



しかし足りていない。

酸化とは何かについてさえつい最近まで自分の中に明確な答えを持ち合わせていなかったのだ。

今のインターンシップでもそうだ。
自動化するための実験を手伝っているが、その自動化する予定の工程である耕起や土寄せ自体を行う理由がうまく見つからない。

これでも学部時代は土壌学専攻だったし、土壌医検定の2級もつい先日の帰国時に取得したのだけれど、所詮そんなものだ。


その足りていないという感覚をもっと日本のワイナリー関係者は持つ必要があると思う。

こと零細ワイナリーでパラディンにならなければならない人は尚更である。


別に私が色々な知識を持っているんじゃない。

ただレベルが足りていないということに気づいて必死に日々スライムを倒しているだけだ。

これまでの記事だって基本的にそらで書けた記事はほとんどない。

だっていきなり獲得経験値の多い「はぐれメタル」を倒そうったってLv.15じゃ逃げられるだけだし。

ただもし私がどこか少し違うとするならば、スライムより獲得経験値が多いドラキーの出現場所を知っているという点かもしれない。

なので、もしスライムの出現場所しか知らない人はぜひ聞いていただければと思うし、このレベル上げにはポケモンのような努力値なんていう裏パラメータはないから、ぜひショートカットしてほしいと思っているのだ。

もしかしたら私が「ふしぎなアメ」を持っているかもしれないし。


ワイン造りは哲学や道に通ずる。

それを伝統もないところから興していくのはかなり険しい道だと思う。
正直私にはできない。

だからこそ私が持ち帰ったものに価値があると判断していただいた人には全力で提供するし、それで日本ワインがさらに美味しく安価に、そして持続可能になれば、私にとっては十分なことなのだ。


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