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ポーター5つの力を使って日本のワインマーケットを振り返る。


これは以前ドイツマーケットでやったものの日本版です。

ちなみに私は別に経済学や経営学を専攻したことはありませんし、未だピュアな学生ですので、それなりに詰めが甘いかもしれませんがご了承ください。

またドイツのレポート程突っ込んでファクトを探すことはしませんが、今回は自分の肌感覚とフレームワークで日本のワイン業界を見ていきたいと思います。

このフレームを当てはめるにはそもそものプレーヤーを決めなければなりませんが、今回はワイナリーでいきたいと思います。

私の記事を見てくださっているワイナリーさんを個人的に応援したいというのもあるので。

ポーターの5つの力について

そもそもポーターの5つの力とは下の図に要約されるフレームワークです。

プレイヤーに対し、

プレーヤーの必要とする物資の供給源をサプライヤー
プレーヤーの生産品を購入するバイヤー
プレーヤーの生産品の競合となるSubstituteとIndustrial Competitor
プレーヤーの業界に新規参入するNew Entrants

という勢力があり、彼らの交渉力の大小や参入障壁、脅威の大小によってその市場がどれぐらい魅力的なのかということを示すものです。


例えば今回の例では、バイヤーはレストラン、小売り、ダイレクトマーケティング先の顧客などでしょう。企業によってはツアー客などもそれに当たるかもしれません。

サプライヤーは自社でない畑の管理者や機材、醸造資材の商社などがそれにあたります。

競合は他のワイナリー、他の酒類はもちろんですが、自社の提供価値に対する競合と思えばいいでしょう。

体験型の何か催しを提供しているなら、他の一般農家が競合にもなり得るのです。

最後の新規参入はそのまま新規ワイナリーですね。

ではこの脅威と交渉力についてみていきましょう。
新規参入の部分からです。


新規参入

昨今ではワイナリー特区の指定やアルカンヴィーニュの新規参入を推進していく制度の追い風を背に新規参入の参入障壁は少しずつ小さくなってきています。


さらにクラウドファウンデイングを用いた囲い込みファン戦略による販路の確保や日本ワインブームなども相まってその傾向を一層顕著にしています。


日本ワインのトップランナーである鹿取みゆきさん曰く現在ワイナリーは約330軒。

少し前までは300前後だったイメージがあるので、ここ数年でも一気に増えていることになります。


中古の機材なども恐らく時期に出てくる(もう出ている?)と思います。

障壁になり得るのは畑や苗木の確保ぐらいでしょうか。

ただそれも緩和される方向に動きつつあるとのことで(業界ではウイルス対策としては万全でないのではという懸念があります)、ワイナリーは当分増加の一途をたどると思われます。

総じて参入障壁はかなり低い状態であると言わざるを得ません。
これはワイナリーにとっての脅威になります。

競合

競合は多岐に渡るという旨は既に述べました。
みなさんのワイナリーは何を価値として提供しているでしょうか。

ワインだけのところもあれば、料理と共にといった価値を提供しているところ、ツアー、宿泊施設としての価値を提供しているところなど様々だと思います。


日本という飽和した市場においてワインのみならず、料理やツアーといった価値だけでは競合は多いので○○×ワインという要素を掛け合わせや、個人に寄り添った価値の提供がポイントになると思います。


自分が提供できるもの、自分の意識にはなかったけど提供できていたものなど考え直してみるとなにか見つかるかもしれません。


ファンベースの著者である、さとなおさんが言うには、自分の意識下にない価値を見出してくれるのはそれを買ってくれるコアファンや一般消費者だそうです。

ぜひファンミーティングのようなヒアリングもしてみてください。


供給者

供給者は実はそこまで交渉力が強いとは私は思っていません。

というのもワイン関係資材というのは限りなくニッチな市場であるにも関わらず、数社の競合他社が存在しており、単価を上げる交渉も難しく、さらには醸造資材というもの自体付加的要素なので、最悪だれも使わなくてもワインは造れてしまいます。

そういった点から醸造資材の企業の交渉力はそこまでないように思います。
一方で、大きめの機材を販売しているところは、交渉力は比較的高いと言えるでしょう。

タンク1つをとってもカスタマイズや輸入に関してのノウハウ、アフターケアなども含めると、そこまで一貫して提供できる企業というのはかなり限られてくると思います。

そのモノを提供できる企業が少ないということは、プレーヤーはそこに泣き寝入りせざるを得ないということになるので不利な状況であると言えます。

またブドウの栽培家に関しては、現状かなり交渉力は低いと言えるでしょう。

農協の買い取り単価の低さもそうですし、そもそも農家自体がモノの売り方をそこまで知らない、自分のブドウの価値を知らないというケースが考えられます。

そのような場合はプレーヤーに有利ですが、これから新規参入が増え、農家が交渉の機会を得ることができる状況になると、少しずつこの交渉力が大きくなってくる可能性はあります。

農地は基本的には有限ですし、ブドウ自体や産地の呼称制度もそれに拍車をかけるでしょう。

買い手

こちらの交渉力も特に高いわけではないと思います。

現状の日本ワイン産業であれば、差別化が特に難しいわけではないと思います。

というのもモノにヒトの顔が映るぐらいには小さい市場で、そのヒトの顔は差別化要因として最も強いものになり得ると感じているからです。

一方で市場の相場価格のオープン性やワイン自体の供給過剰といった点では買い手の交渉力が高くなる可能性はありますが、それも結局はプロダクトがコモディティ化しているからに他なりません。

依然として、ワインというモノとしてのクオリティが相場価格に比べてはるかに高いのは、造り手も否定できないところでしょうし、他国産のワインを競合としてしまうと供給過剰は免れません。

ただそういった層は現状ターゲットになり得ないので、それ以外の買い手からすると、現在のワイナリーのプロダクトに対する交渉力はかなり低いのではないかと考えられます。

まとめ

まとめると
縦側の脅威は大きいが横の交渉力はそこまで大きくないというのが現状のプロデューサー視点でのワインマーケットなのかなと思います。

であるならば、如何にこの代替品(Substitute)の脅威や新規参入(New Entrants)の脅威を抑えるかが重要になってきます。

これからも代替品にはない価値、新規参入障壁の造り方を一緒に考えていきましょう。

これからもワインに関する記事をuploadしていきます! 面白かったよという方はぜひサポートしていただけると励みになりますのでよろしくお願いします。