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『ブリッジ・オブ・スパイ』感想

『ブリッジ・オブ・スパイ』
監督:スティーブン・スピルバーグ
主演:トム・ハンクス
上映時間:2時間22分


一言で言えば、『歴史と公民のお勉強』映画
本作は物語が綺麗な二部構成になってて

1,敵国のスパイを弁護しよう
2,普通のアメリカ人と自国のスパイ、敵国のスパイを交換しよう←こっちがメイン!

となっているため、2時間22分のまあまあな長尺でも物語の変化を楽しむことができた。




さて、本作の魅力はなんといっても『ほぼ会話なのに飽きない』点にあると私は思う。
銃撃戦をやるわけでもなければ空戦をやるわけでもない。正直、映像に見入るのは戦争で傷ついた東ドイツの街並みかアメリカ軍の偵察機くらいだろう。

やっているのは無形の情報戦と議論なので、普通なら退屈すら覚えそうである。
だが、面白い。



それは会話の中に様々な要素が組み込まれていたからではないだろうか。

・戦争は起きてないが起きそうな雰囲気はある
・国の利益を取るか万人の自由を取るか

そういった隠れた要素がシンプルな会話に魅力を与えていると感じた。




その他にも
・トム・ハンクス演じる主人公のジム・ドノヴァンが国という巨大な権力に屈さず、2人を1人と交換する姿勢を全く崩さなかった点
・マーク・ライランス演じるルドルフ・アベルが国に忠誠を誓って黙りを貫き通した点
・オースティン・ストウェル演じるゲイリー・パワーズが拷問を受けながら、こちらも国のために忠誠を誓って何も喋らなかった点
はシンプルにカッコ良かったし


・(前)ソ連のスパイを弁護していることから列車内で冷たい目で見られる→(後)交渉を成立させた立役者としてにっこり笑顔を向けられる
・(前)ソ連のスパイを弁護していることやそれによる過激な手段によって家族から嫌がられる→(後)交渉を成立させたことでどこか誇りに思っているような表情を向けられる
・(前)列車の窓の外で留置所の壁を越えようとしている若者が撃たれる悲しい場面→(後)列車の窓の外で壁を越えて子どもが遊んでる

というような確実に世界がいい方向に向かっていってることを感じられる情景の変化がとても素晴らしいと思った。







今作は戦後の歴史と国のあり方を描いた作品である。
国の最高法規たる憲法の重要さ、他国民に対する自由権、司法の国家からの独立、役職によって個人の権利を制限することは真の自由にはつながらないこと…など。

本作から歴史や国家、司法のあり方について学べることは多いので、今現在、社会科を学んでいる学生に、理解を深めてもらうために観賞して欲しい作品だと強く感じた。

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