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「こいつ、絶対仕事もできない奴だよ」

同僚が吐き捨てるようにそう言った時、私は助手席の窓から鳥を見ていた。長い時間、鳥は静止していた。動き出すのを、見届けてやろうと思っていたのだけれど、やっと車が動き出したことで注意をそらしてしまった。再び目線を戻すと、すでに飛び立った後だった。

混雑の理由は、前方で往来を妨げていた一台の車だった。ドライバーの男性は、運転席に閉じ込められたまま、申し訳なさそうな表情を浮かべ、誰にともなく小さなお辞儀を繰り返していた。それ以外の選択肢は持ち合わせていないように見えた。何かトラブルがあったのだろう。

「もっと寄せれば他の車に迷惑かけないのに。全体が見えてないな。こいつ、絶対仕事できない奴だよ」

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