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クエスチョンの街

頻繁に利用しているトラムに新しい駅が一つ増えた。完成したその駅はJRの駅とくっ付いている。今まで面倒な乗り換えをしなくては行けなかったところへ、簡単に行けるようになった。

大きなスーツケースを抱えて浮足立つ人。野球帽をかぶって応援バットをリュックに差している人。期待や高揚が車内を充たしていて、それはなんだか幸せな変化で、ひとつの駅の誕生が私の日常の一本道に、大きな風穴を開けたのだということが分かった。

トラムの路線は空から見ると「?」を描いたようなかたちで完結している。最初からあった環状線の構想が、くすぶったまま今に至るというのを聞いたことがあった。地下の駅から出発する始点は、クエスチョンのおしりのところから進んでいき、スタジアム前の終点のところでぶつりと途切れる。これより先は誰も何も、どこにも運ぶつもりはないとでも言いたげに。これまで自分は、かくも閉ざされた疑問符の軌道上をただ行ったり来たりしていたのだと気付くと、なぜかほんの少し、むずかゆい感じがした。

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