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OrgofA 舞台「Same Time,Next Year-来年の今日もまた-」 稽古場レポート③ 2024/01/15

OrgofA「Same Time,Next Year-来年の今日もまた-」公式サイト→https://dtagmd.wixsite.com/orgofa/stage-20240203-sametimenextyear

飛世早哉香 × 遠藤洋平 組 稽古

今日は賑やかだ。
制作、助演出、衣装、たくさんのスタッフが稽古場にいる。さらに取材の為、記者の方がいらっしゃっている。舞台制作にはたくさんの人が関わっている。

取材が終わり、和気藹々なムードから一変、ベッド周りに衣装が散らばり、舞台スペースには俳優と演出家だけ。緊張が漂っている。

乱雑に散らばった衣服 あれこれ想像を掻き立てるセットアップ

増澤さんが開演の段取りを口頭で説明する。俳優には織り込み済みの段取り。
さぁ、いよいよ開演だ。

一場。
先にレポートしたスペシャルキャストとまるで違う。
落ち着いた、穏やな雰囲気。同じ脚本なのに違う作品を見ているようだ。俳優が違うと、景色も聞こえてくる言葉のイメージも別ものになる。軽妙なテンポ、コロコロと展開する話題、上質なトークコメディというしつらえ。
イニシアチブの在りどころさえ違って見える。

ジョージ役・遠藤洋平  ドリス役・飛世早哉香

飛世演じるドリスはあどけなく、まだ世間を知らないお嬢さんの様相。
一方の遠藤演じるジョージ、年上のお兄さんを頑張るがどうにもうまくいかない。だがめげずに飄々と振る舞おうと必死だ。仲の良さの中に漂う、そこはかとないよそよそしさ。ここから25年を演じる二人。ライトタッチな導入だ。

軽快な音楽が流れ、二場に突入。
出会いから5年。五回目の逢瀬。連続して見ると改めて奇跡的な物語だと感じる。
人物としての年月の経過。この場ではとくにドリスが顕著だ。言葉の選び方、話し方、思考、顔つきも違う。5年も、あるいは5年だけ大人びる。簡単なわけがない。何があったのだろう。物語を見ながら、あれこれ想像してしまう。

二場に起こるハプニング。そのせいで二人は言い争う。ドリスが秘めている感情。俳優・飛世早哉香の凄みが炸裂する。Same Time,Next Yearが描く人間模様は痛烈だ。ここにアプローチするための準備たるや、想像を絶する。

二人の生き方、考え方の差が露わになり、埋められない溝を感じてしまう。たくさんの葛藤と決意。揺れてしまう心の曖昧さ。この危機を越えられるのか。というか、越えられないのだろう、と思わされる。

二場が終わる。稽古場は恐ろしい空気。

増澤「5分くらい休憩しよう」

演出家のこの言葉以外、しばらく誰も喋らない。喋れない。

増澤さんからのフィードバック。

増澤「憐れまない方がいい。憐れんじゃうとトゥーマッチになっちゃう」
  「ドリスはある意味覚悟が決まってる。ジョージはもっと感情的でもいいかもしれない」

稽古を見て飛世と遠藤、二人にあった形を模索していく。

遠藤「あの、、、増澤さんに聞きたいんですけど」
飛世「有識者?(に聞くみたい)」
遠藤「あの、有識者の増澤さんに聞きたいんですけど」

稽古場の空気がだいぶ和らいできた。
俳優からの質問に増澤さんが丁寧に応える。
再演組の二人だが、初演をなぞるのではなく、新たなSame Time,Next Yearを作ろうとしている。初演を観たからなぁ、なんてお客さんには是非観てほしい。

三場が始まった。生で見るのは初めてだ。
会話はよりいっそうあけすけだ。そこには覚悟や、思慮深さがある。出会ってから10年。年を重ねた二人には落ち着きと、その上にのしかかっている問題がある。

人はいつだって様々な状況を抱えている。この二人を見ているとつくづく思う。
一年に一度の逢瀬には共感できないかもしれない。だが、二人が、それぞれに生きてきた日々を語り合う様には共感するのではないだろうか。

そう思わせる二人の空気。
戯曲構造がそうなってるから、だけではこうはならない、これは舞台だ。俳優が演じて初めて成り立つ。二人がこの空気を作っているのだ。

空気を作ってる二人 ※別日の稽古より

作品中最も緊迫する事件が起こる。本人たちは至極真剣だ。緊急事態だ。必死に事にあたろうとする。しかし滑稽極まりない。こういう時こそ何を言うか、どうするのか。人となりが全開だ。
ここまではドリスの変化、覚悟が際立っていたが、ここにきて遠藤演ずるジョージが突然に変異し始める。浅ましく、情けない印象のジョージの隠し持っていた強さ。中盤の見せ場。本人たちはもちろん、観客もまさに手に汗握るだろう。笑いながらも。

“劇的”とはまさに、演劇の舞台上で起こるような事、なわけだが、「Same Time,Next Year」はまさに劇的、劇的事象が多発する。戯曲はしょせん文字でしかない。優れた戯曲に触れる時、ワクワクすると同時にこうも思うのだ。
これを立体に立ち上げるのはたいへんだぞ、と。
俳優が演じ、観客が観て初めて成り立つ【 演劇 】という不思議で厄介で面倒なエンターテイメント。その為に、演出家を始め大勢のスタッフ陣がバックアップする。映像に残らないだろうその瞬間だけを劇場で共有する。残るのは感動した記憶。なんと儚い媒体だろう。しかし私はその尊さもある程度は知っている。目の前で行われている挑戦の尊さを、ある程度は知っている。稽古場レポートを前作「エアスイミング」から書かせていただいているが、もしかしたら、この挑戦の素晴らしさを伝えたくて書いているのもしれない、と私ごとはさて置き。

OrgofAが挑む再演・Same Time,Next Year。
人生を考えさせられるほどの作品である事が、私にとっては立証された。
皆さんにはどう響くのだろう。
この挑戦が観ている方たちに突き刺さっているその瞬間を見届けたい。


札幌演劇シーズン2024-冬 参加作品
OrgofA 「Same Time,Next Year-来年の今日もまた-」

SCHEDULE
2024年2月3日 (土)14:00〜 / 19:00〜【SP】
2024年2月4日 (日)14:00〜/19:00〜【SP】
2024年2月5日 (月)19:30〜【SP】
2024年2月6日 (火)19:30〜
2024年2月7日 (水)14:00 / 19:00〜
2024年2月8日 (木)14:00〜【SP】 / 19:00〜
2024年2月9日 (金)14:00〜 / 19:00〜【SP】
2024年2月10日(土)14:00〜

【SP】スペシャルキャスト:場面ごとに演じるキャストが変わります
   小野寺愛美(EGG)×本庄一登(演劇家族スイートホーム)
   飛世早哉香×遠藤洋平
   太田有香(劇団ひまわり)×町田誠也(劇団words of hearts)
※記載がないキャスト飛世早哉香×遠藤洋平​となります

 各公演の「開場時間」は開演の30分前となります。
​ 未就学児入場不可
​ 自由席(椅子席、桟敷席)

TICKET
一般 ¥3500
U-25 ¥2000
学生 ¥1500

ウェブサイトからのご購入
ローソンチケット【Lコード:10052】
ローチケ電子アプリ
道新プレイガイド 
​https://doshin-playguide.jp

店頭でのご購入
​道新プレイガイド
〒060-8711 北海道札幌市中央区 大通西3丁目道新本社1階
[営業時間] 10:00~17:00 ※日曜定休

・札幌市民交流プラザチケットセンター
〒060-0001 北海道札幌市中央区 北1条西1丁目 札幌市民交流プラザ2階
[営業時間] 10:00~19:00 ※札幌市民交流プラザ休館日を除く

・​セイコーマート
店内マルチコピー機からご購入できます
【セイコーマートコード】D24020301

会場/ターミナルプラザことにパトス
〒063-0811 北海道札幌市西区琴似1条4丁目 地下2階
※地下鉄 東西線「琴似」駅バスターミナル直通


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