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OrgofA 舞台「Same Time,Next Year-来年の今日もまた-」 稽古場レポート④ 2024/01/18

OrgofA「Same Time,Next Year-来年の今日もまた-」公式サイト→https://dtagmd.wixsite.com/orgofa/stage-20240203-sametimenextyear

太田有香 × 町田誠也 五場・六場稽古

稽古前の会話は親子の話題。母親の兄・弟への態度の差について。
落ち着いた穏やかなアダルトチームの空気感。増澤さんが曲の確認をしている間、二人はゆるりとセリフ合わせ。既に積年のムードがある。

ドリス役・太田有香  ジョージ役・町田誠也

若々しい20代チーム、軽快軽妙な30代チーム。そして、、、

五場の稽古が始まる。

人生の後半に差し掛かったドリスとジョージ。
あれからさらに5年。出会った頃とはまるで別人のようだ。会話の思慮深さ。ドリスの立場は大きく飛躍している。

ドリスの飛躍は本作の驚きの一つだろう

一方のジョージはドリスとは逆の変化をしていく。1950年代から1970年代。
激動のアメリカに暮らす二人の変化。その変化に驚きながらも、それでも二人は根本で惹かれ合い、再会を繰り返すのだ。

意外な変化を見せるジョージにも驚かされる

この数十年で変わりに変わった二人。だが、やはり感情的になった瞬間あの頃の二人にふと戻る。二人が過ごしてきた日々を想起させる。ふわりとした空気の中、どうと言うことのない会話の中に滲む信頼。愛情。

せっかくの朗らかなムードだが、例によってお邪魔が入るのがSame Time,Next Year。ボス・ドリスへの電話。二人のタッチが変わる。

増澤「もう出来上がってますね!」
二人「いやいやいや!!」
増澤「お二人の年齢による説得力がすごい」

増澤さんからのシーン全体へのフィードバック。

増澤「細かくやってみましょうか」

シーンを分割しながらの稽古。細かい会話や、言葉の立て方を確認していく。二人は個所個所で芝居がかっている。お互いの今を、あるいはこの一年を存分に伝えようとしているかのようだ。二人で居られる時間は限られている。伝えられるのは今しかないのだ。一瞬だって逃したくない。

ドリスの地位、ジョージの内面の変化。よく聞くと細かい衝撃が多々あるのだが、サラッと会話してしまうとせっかくの驚きが伝わらない。
増澤さんが、どの言葉を立て、どの言葉に反応するのかを丁寧に演出していく。
会話の輪郭がくっきりしだし、ドリスとジョージの今がおのずと見えてくる。言葉にこもるイメージ、こだわり、重さ。普段人はそんなこと意識しない。無意識に乗せる思いにこそ人となりがにじむ。

電話のシーンは印象的だ。
ドリスは電話越しの相手の会話が、ジョージに聞かれていることを存分に意識している。むしろ聞かせている。ジョージは電話しているドリスを見ている。ドリスが話している相手はジョージではないのに、二人の間のコミュニケーションが面白い。

一場からは想像もつかないドリス

少しずつすれ違っていく二人。あれ?これは?爆発しちゃうやつ??
そこは、とても大人になった二人。いや、認め合っている二人、ということか。
言い合いにはならない。どこか腑に落ちてしまうのだろう。多少トゲトゲしくても傷つけたくて言ってるんじゃないという信頼。信頼してるからこそ強がってしまう複雑な心理。そして見事素直になってしまう。率直に、うらやましいと思う。

増澤「ここでモード変えたいんですよね。優しい言い方とかじゃなくて、ストレートに言った方がいいかもしれない」

会話がクッキリと、意図が際立ち始める。なるほど深いシーンだ。

町田「今のだと、すごく無理がかかっちゃう」
増澤「怒るってことにバイアスがかかりすぎているのかも」
町田「ああ」

演出と俳優。
演出家が”演出”したことを俳優が実践する。のだが、工程の第一段階はまず俳優からのアプローチ。俳優間で起こっている、シーンの中で起こっているものを演出家がつぶさに見る。この二人にマッチする演出をつけていく。俳優はそれに挑戦し、するとさらに発見が見つかり、また演出がつく。そうやって深まっていく。
責任と信頼と飽くなき好奇心。豊かな現場だ。

五場はそれほど長いシーンではない。10数分。
稽古を終え、疲れ果てている二人。休憩を挟み、いよいよ最終場の稽古だ。

〜休憩〜

休憩中もセリフ合わせをする二人

六場、最終場、稽古

五場からさらに5年。話題が、ワードが、中々に年配だ。
ジョージの語りはショッキングだが、年齢を思えば起こって不思議じゃない。
作品中もっとも印象的なセリフをドリスが言う。
「まるで親友のよう」
そんな奇跡が起こるのか。これをお客さんも共有するのだ。Same Time,Next Year、恐るべし。

一回通して、フィードバックタイム。五場同様、大まかなイメージを共有する。

改めて六場の稽古。
一年ぶりの出会いで抱き合う二人。ぶつかるみたいに抱き合っちゃって、テイク1は失敗(笑)
仕切り直してテイク2。
いくつかついた動きを調整しながら流れを良くしていく。
舞台とは実に不思議だ。ミザンス(舞台上の立ち位置)を変えるだけでドリスとジョージの心理が見える。見え方が変わる。演出が担う重要な仕事。

増澤「いいね!すごくいい!感動した」

スペシャルキャストの締めくくり。
壮年の二人がじたばたと。本気であればあるほど滑稽でかわいらしい。カーテンコールでの観客の笑顔が思い浮かぶ。

本当に素晴らしい作品だと、改めて思った。
かけがえのない二人。唯一無二の存在。何にも替えられない。状況は確かに許されない。それも承知の上で、それでも二人は会わずにいられない。魂の物語。そんな美しいものじゃないかもしれない。下世話な話なのかもしれない。でもやはり感動してしまう。ここまでの絆を作れる相手に巡り合う奇跡。笑いどころが笑えないほど、泣けてくるほど心揺さぶられる。(ちゃんと笑えます)

この奇跡は、なぜに起きたのだろう。偶然に偶然が重なっ、、、ただけだろうか?一瞬一瞬の二人の選択がこの奇跡を生んだと仮定すると、それはどの瞬間なのか。一度観て二人の全てが、この奇跡が理解できるほど浅くはない。二度三度観る事でその決定的瞬間に出会うことができるだろう。二人の決意に心動かされるだろう。

3世代で別キャスト。人物の変わり様は観て損はない。飛世・遠藤のスタンダードキャストとはまるで印象が違うだろう。言葉の意味、いや物語すら違って見えるのではないか。どちらか、ではなく、どちらも観ていただきたい。
どちらかしか観れない?
いやー、そこをなんとか。


札幌演劇シーズン2024-冬 参加作品
OrgofA 「Same Time,Next Year-来年の今日もまた-」
SCHEDULE
2024年2月3日 (土)14:00〜 / 19:00〜【SP】
2024年2月4日 (日)14:00〜/19:00〜【SP】
2024年2月5日 (月)19:30〜【SP】
2024年2月6日 (火)19:30〜
2024年2月7日 (水)14:00 / 19:00〜
2024年2月8日 (木)14:00〜【SP】 / 19:00〜
2024年2月9日 (金)14:00〜 / 19:00〜【SP】
2024年2月10日(土)14:00〜
【SP】スペシャルキャスト:場面ごとに演じるキャストが変わります
   小野寺愛美(EGG)×本庄一登(演劇家族スイートホーム)
   飛世早哉香×遠藤洋平
   太田有香(劇団ひまわり)×町田誠也(劇団words of hearts)
※記載がないキャスト飛世早哉香×遠藤洋平​となります
 各公演の「開場時間」は開演の30分前となります。
​ 未就学児入場不可
​ 自由席(椅子席、桟敷席)
TICKET
一般 ¥3500
U-25 ¥2000
学生 ¥1500

ウェブサイトからのご購入
ローソンチケット【Lコード:10052】
ローチケ電子アプリ
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​https://doshin-playguide.jp
店頭でのご購入
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・札幌市民交流プラザチケットセンター
〒060-0001 北海道札幌市中央区 北1条西1丁目 札幌市民交流プラザ2階
[営業時間] 10:00~19:00 ※札幌市民交流プラザ休館日を除く
・​セイコーマート
店内マルチコピー機からご購入できます
【セイコーマートコード】D24020301
会場/ターミナルプラザことにパトス
〒063-0811 北海道札幌市西区琴似1条4丁目 地下2階
※地下鉄 東西線「琴似」駅バスターミナル直通


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