にく 解答編

出題編は こちら 
あくまでこれは解答編ですので、出題編から読むことを強く推奨します。じゃないと意味わからないと思います。



「ああ、おそらく間違い無いと思う」
「え?犯人は誰なんです?」
「まあ待て、順を追って話そう。まず……平和荘の住人全員の名字が都道府県名になっていたのはわかっていたかな?」
「ええ、流石にそれは。そこまで珍しい名字ではないですが、きっちり全員ってのもあまりないなとは思いました。でもそれがどうしたんです?」
(没データ:管理人は福島でした)
「で、この写真だ」
「肉でしょう?」
「そうも見えるがおそらく違う。もう一度見てみようか」

「何度見てもにくにしか見えませんが……」
「しこくだよ。”に”に見える部分が”し”と”こ”が合わさって見えただけだ」
「はあ……とすると……この中で四国の県は……」
「そう、犯人は香川と見ていいだろう。捜査の糧になるといいな」
「あ、ありがとうございました!」

警部の考えに従って捜査を開始したが、犯行に繋がる証拠は一向に発見されなかった。
「これは流石に……」
「だな。何かを間違えてるかもしれないな」
「かもしれませんね。もしかしてダイイングメッセージの解釈が間違ってたり?」
「うーむ、とはいえ……他の解釈なんて考えられないぞ?」
先輩も歯切れが悪い。
「ですねぇ……あ、資料見せてもらっていいですか?」
「ああいいぞ。見ろ見ろ。でもこの前説明した以上のことなんて書いてないぞ?」
「あ、いえ。再確認ですよ。再確認」
僕が言うのも何だがよくまとまっていて非常に読みやすかった。新たな情報は無かったが、改めて考えてみるとおかしいところはあった。
「ねえ先輩」
資料から目を離さず尋ね始めた。
「被害者は何でこんなメッセージ残したんでしょうか」
「そりゃあ犯人を示すためだろう」
「それなら犯人を直接告発すればいいじゃないですか」
「いや……んなことしたら消されるだろう?」
「そうなんですよ」
「ん?何が言いたい?」
「殺した後にわざわざ刺したような犯人が、被害者が何かしようとしていたら気付かなかったはずがないと思いません?」
「つまりは……メッセージは犯人が細工をしたものだとでも?」
「それどころか……確認したいこともあるので、一度犯行現場に行きましょう」

「遺体は片付けてるが、基本的には現場はほぼ保存されてる。お、一応ダイイングメッセージも残ってるな。で、何を調べたいんだ?」
僕はおもむろに被害者の倒れていた場所に寝てみた。
「お、おい!」
「被害者って仰向けでした?うつ伏せでした?」
あえて無視した。
「……うつ伏せだよ。あと現場を荒らすな」
「すみません。ですが、わかったことがあります」
「本当か!?」
「ええ。何なら先輩もそこに寝てみればわかると思いますよ」
「やらねえよ!で、何がわかったんだ?」
「これは被害者が書いたものではない、ということです」
「何で今の奇行でそんなことがわかったんだ」
「字の流れ方がおかしいんですよ。うつ伏せの人がこの位置に字を書いて力尽きたら、頭の方には流れていかないと思うんですよ」

                        (画像参照:逆転裁判2)

「外側……というか遠くに流れていくってことか。でも、それだけで被害者が書いたものではないと断言するのは難しいんじゃないか?」
「まあこんなのはあくまで一部です」
「ということは他にも変なことがあるのか」
「ええ、状況的に被害者がダイイングメッセージを書けたはずがないんです。これは資料を見た時に思ったことなんですが」
「どういうことだ?」
「縊死だとどこから血が流れるんでしょう」
先輩から声にならない声が漏れた。
「そうなんです。死んだ後に刺されて出血した被害者が、自分の血液で字を書くなんてそもそもできるはずがなかったんですよ」
「それは……確かにおかしいな。じゃあ犯人は?」
「山口の方でしょう。彼らの証言の一部から、容疑者が二人に絞られています。そして、証言から考えると、容疑がかかるのは自分と相手になるのはわかっていたはずです。その状況でダイイングメッセージで相手を告発しているということは、罪をなすりつけようとしていたということではないでしょうか」
「……わかった。山口の線で調べてみるか」

二日後、山口を逮捕するに至った。警部が驚いていたのは言うまでもない。