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ボクシング:頑張れないベトナム人(記事から)

割と勤勉ともてはやされる事が多いベトナムですがこんな記事が出ていました。

ベトナムで実際にIT仕事をしたり、建物の改築やリフォームに関わった経験から、なるほど、と考えさせられる記事でした。
個人的な感想としては、ベトナム勤勉説はバブル後の低迷期に入り、安さから中国労働者を使ったために競争相手を育ててしまったうえ、その後中国人のコストが高くなったことに加え韓国台湾などと価格競争もあり更に安いASEANに工場移転、そして国内の人不足で研修生制度をぶち上げざるを得なくなった、日本財界や日本政府の苦し紛れの定説、と考えています。

ベトナム人の性格の定説は?

日本語で検索をすると

ベトナム人全体に見られる傾向は「4K」「器用、勤勉、近視眼的、かかあ天下」

というのがたくさん出てきます。
実際の所、King of 勤勉 な日本人からみた時に、世界中で勤勉の名をほしいままにした半世紀があり、日本人からみたら「は?」ということばかりなのです。おそらく「他の周辺国に比べて」というのがあると思われます。(笑

JETROなどが配る資料にも毎回登場するので、経済開放して日本政府・財界主導で動き出した時にお役人や先生が作ったレポートがコピーされたものと思われます。
海外の資料では近い評価でも4Kのような「レッテル」となる表現は無く、日本の特徴として教育に哲学がや弁論が無いためでしょう。
こんな安っぽい、偏見と取られかねない表現が普通にあるのは、まだまだ日本も後進国なのかもしれません。

ちなみに英語資料では

  • 元気で冗談が好き

  • 儒教、道教の影響で名誉と年上や家族を優先、先生偉い

  • 勤勉、器用

  • 性格が気難しい、見栄っ張りで拝金的

というのが良く出てきます。英語圏の性格評価はキリスト教をベースにする人が多いと思われますが、キリスト教では「労働は原罪を持って生まれるすべての人に課せられたペナルティー」という側面があり、彼らの価値観では怠惰が基本、勤勉の定義はかなり東洋と違いそうです。

キリスト教のこの価値観は、おそらく彼らの文化のルーツである古代ギリシャ・ローマが奴隷によって支えられていた社会であったことと関係があるように思います。

当時の奴隷は黒人奴隷のような動物扱いではなく一定の権利があり、
捕虜になったギリシャ人などでは著述や通訳など知的な仕事の場合もあったのだとか。

そんなわけで、欧米人から見ると労働を美とする我々アジア人の評価には「勤勉」がついて回るのでしょう。(笑

実はASEAN全体に共通かも

良く言われるベトナム人の負の性格として

  • 近視眼的(先のことが考えられない)

  • 心が折れやすい(がまん、ストレス耐性が低い)

  • 持久力が低い (昼寝必須)

  • 切れやすい

  • 金銭や時間にルーズ

というのがあります。これ、フィリピンの解説でも同じことが書かれていたりします。タイでもインドネシアでも同じような話を聞きますし、通年暖かく自然の恵みや水資源に恵まれるASEAN諸国で共通な気がしています。
欧米の支配が始まるまでは緩やかに時間が流れていたでしょう。(支配されていてもゆっくりだったのかもですが)。
土地柄、3〜6ヶ月にも及ぶ冬を乗り越える必要はなく、高緯度地域の人の尺度で比較、評価することは根本に無理がありそうです。

21世紀グローバル世界ではそうも言っていられない

自由になって他の国と同じ生活水準が欲しくなり、外資の力を借りて急成長はしても様々な点で数百年のハンデがあり、個々の人々と社会欲求の歪が表面化しているのが昨今のベトナム。ちょっと勤勉でも超えられない壁がたくさんあるようです。

ベトナムのもう一つの長所「手先が器用」というのは本当。これはお箸の国の人に顕著だそうでエレクトロニクス産業はヨーロッパやアフリカなどでは難しく、日本を筆頭に中国韓国台湾につづきベトナムも参入しています。

有名なところでは村田製作所。ダナンには村田製作所の巨大な生産工場があります。下の画像は新しく建設中の生産棟だそうです。


手先が器用なことに加え、田植えなどルーチンワークをする文化も工場労働に労働移転しやすい要因だそうで、その意味では中国南部以南のアジアや日本韓国、日本がコメ作のため灌漑を整備した台湾には分があるのでしょう。そしてコメとお箸はセット。

FDI経済を支えているのは女工さん。細かい作業を強いられます

先進国の人が嫌がる単純労働者を提供しますよ?と海外からの投資を呼び込み急成長しましたが、現在は成長の壁にぶち当たっている状態で最近は能力不足で海外の重要とマッチしない、という国内ニュースが目立ってきました。
中進国の罠のはじまりでしょうか。

日本でも農家や食品加工工場で働くベトナムの方は多いようです。それにしても女性ばっかし


ボクシングでも先輩が居ないベトナム

壁にぶつかっているのはスポーツも同じ。ベトナムの現状はスポーツでわかりやすく見ることができます。

記事では韓国人トレーナーの悩みとベトナムボクシング界の今後の展望が書かれています。

キム氏によると、ベトナムのボクシングの大きな問題は、ボクサーが見習うべきロールモデルが存在しないことだという。

「コーチとして、私はベトナム人ボクサーの方がフィリピン人よりも可能性を秘めていると思う。しかし、フィリピンには伝説のマニー・パッキャオがおり、彼は8つの階級で12のメジャー世界チャンピオンベルトを獲得しました。このような記念碑的な人物の存在は、若いボクサーがより多くの信頼を寄せるのに大いに役立っている」ベトナムでは2015年になって初めてプロボクサーのチャン・ヴァン・タオが誕生した」

なんと、初チャンプが2015年。。。ベトナムのボクシングの歴史はまだ始まったばかり…

ベトナムで人気なのは圧倒的にサッカー。一般の人がやるのはほぼフットサルです。 また広くエクササイズとしてバドミントンが普及しています。
ランニングやバイクをよく目にするようになったのは、ここ4〜5年でしょうか。マラソンやバイクは他国と同じく、やはり富裕層が多いようです。

また水泳は設備が高価なこともあり、普及していません。そのため水死事故がおおく海に面して皮が多い国土でありながら、水遊びを恐れる人も少なくありません。以前の日本が野球一色だったように、貧しいと文化の多様性は経済性の面で難しいのでしょう。

べトナムのボクサーは、敏捷性、反射神経、勝利の精神など、チャンピオンになるための最高の資質を備えています。しかし、彼らのキャリアに欠けているのは、忍耐力、練習、集中力です。

お国柄でしょうか、それ以外にも難しい他所があるようです…。

目指すお手本が居ない。。。

つい最近まで植民地、その前は封建的な農業地域だったベトナムには科学はもとより、文化的・経済的な成功者の見本がいないため、憧れから「この人のようになろう」という意識が目覚めにくい現実があることが見えてきます。

そもそも幼児の頃から「ホーチミン伝説」的な教育をしているので、偶像と言えばホーチミンさんですが、時代が違うので真似できません。目的もないのに頑張る人はいません。 

これが「頑張れないベトナム人」になる原因なのか!と記事を見て衝撃を受けました。

共産国のベトナムでは哲学教育は限定的で言論の自由はありません。本や映画はすべて検閲を受け、FacebookなどSNSも監視されていて良く見せしめ的に逮捕されます。 ある意味北朝鮮と同じ。


割と最近まで少数民族は素の生活をしていたようです。山間部へ行くと「え!」っていう佇まいの人もおられます。

中国支配〜フランス傀儡政府〜現在まで、民主政や法の統治を経験したこともなくアカデミアもありません。哲学の時間に学ぶのはソビエト共産主義の延長だったホーチミンさんで現在も国体はそこがベース。
 
モダンな時代の知識がある本当の意味での「先輩」が圧倒的に足りず育てる土壌もありません。また国力が低いため母国語に翻訳された本も圧倒的に少ないです。翻訳を重ねて語彙や言語をアップデートした日本語とはかなりの格差となります。ようするに自力でも学ぶのが大変で先輩・先生がいないのです。

そして、良く考えたら書いている私も優れた先輩たちがいたからこそ…手を差し伸べて叱咤激励(たまにケツバット)。。。 階段やエスカレーターがあったので簡単に山を登れたのですよね。

日本は賢い国1位の呼び声も

海外の知的調査などでは度々、トップランクに顔を出す日本ですが凋落の話題が多いのは高いところにいるからです。下にいたら下がれません(笑

例えばノーベル賞の授賞者ランキングでは、アメリカの368人(ランキング発表時点)が突出して多く、次いでイギリスの132人(ランキング発表時点)、ドイツの107人(ランキング発表時点)がトップ3を占めています。ちなみに日本は26人(ランキング発表時点)で世界第6位。トップ10が全て欧米の国で占められている中、日本だけが例外的に入っています。

発明が少なくコピーばかりと揶揄されていた時代は過去になり、現状は欧米の制裁・規制で意地悪されながら頑張っているというのがここ数十年の実情でしょう。日本は敗戦後に規制を受けて航空産業ができませんが、それでも排ガス規制にハイブリッドで対したりホンダがビジネスジェットを海外販売するなど、あの手この手で欧米とハンデ付きで戦っていて風評と現実は乖離がありそうです。

これらは外国の情報を大量に取り入れ、現在も大量の書籍を母国語に翻訳するような知の土台があり、成功例・目標がたくさんある「学びやすい」土壌があるのだと、改めて日本に生まれた幸運に感謝です。

(BBC:生活を変えた日本の発明たち)

(車、ウオークマン、プレステなどハードだけでなく、カラオケ絵文字ポケモンなど世界に広がった日本発がたくさん。スマホ・iPhoneなども元は日本製品の成功がベースと言って良いくらい日本は先行していました)

ベトナム人の勤勉、の嘘

実際に生活をすると、ベトナム人が勤勉!という日本人は少ないかと思います。 (ただし、あくせく働く忙しい日本が嫌で逃避気味にASEAN界隈へ来る人が多い現実があるので、「自分にくらべて勤勉!」という人はたくさんいるかも知れません。)

割と早朝から夜まで、カフェにはダランコおじさんがたくさんいます。女性は働いているのですが。。。
英語で検索すると、割とベトナム怠け者じゃん?とう話も。。。朝からカフェはおじさんでいっぱいですしね。

日本人に比べて勤勉でないと感じてしまう理由は言いだすときりがないですが

  • 昼寝(60~90の昼休み)必須

  • 金額は同じだから多く働いたら負け、という考え

  • 仕事の品質=最低限 (一応やったからいいじゃん?という考え)

  • 完成基準ではなく、作業時間基準(質の責任はない考え方)

という低いレベルの基準が一般的。
日本であればちょうど切りが良いところまできちんと作業して、掃除をし、という感覚が勤勉さの質の中にありますが、ベトナムでは不思議がられるでしょう。


どんな環境でも皆さん眠れるたくましさ、見習いたいです

そんなわけでボクシングの記事を見て、数値的な根拠もないお気持ち定説に惑わされず、現実に向き合わなくては、と改めて思いました。

(だよね!とか、そうかなぁ〜?という方の意見も知りたいので是非コメントをお願いします


ベトナム人労働者に気質について、過去にこんなのも書きました。




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