【最終発表】メルツを産んだのは誰?

メルツを産んだのはテレーゼであり、その父親はテレーゼの父である。「母にして姉であり」をそのままの意味で解するとこうなる。
『イドへ至る森へ至るイド』においては他の根拠が乏しいが、 『Märchen』を参照するといくつかの傍証が得られる。
まず、『Märchen』は中心となる『生と死の境界を別つ古井戸』を中心に線対称の構造になっている。『薔薇の塔で眠る姫君』において野薔薇姫がエリーザベトの母親という説を取れば、雪白姫をメルツの母親(テレーゼ)と類推できる。
ここで、『硝子の棺で眠る姫君』を見ると、その大罪は「嫉妬」と「色欲」の二重が付与されている。その理由として、Märchen は復讐者と被害者のそれぞれが大罪を背負う構造という説があるが、二重の2曲だけは復讐者と被害者の背負う大罪が異なっているからだと予想できる。
「継母」が「嫉妬」を背負うことには疑問の余地はないが、このとき「雪白姫」は「色欲」を背負うこととなる。ここで「雪白姫」が実の父親、すなわち「継母の夫」からの愛を受けたと仮定をすると、「継母」の凶行も含めて理解ができる。すなわち父娘姦である。
このように、『Märchen』においてメルツがテレーゼとその父親の間に産まれた息子という説は補強されており、『イドへ至る森へ至るイド』の伏線回収と解される。
近親相姦を無視した場合、母と姉は両立しない。
どちらかが通称だとすると、母代わりの姉は成立しても、姉代わりの母は想像し難い。
そうすると、テレーゼはメルツの姉というのが自然である。
その場合の産みの母としては、テレーゼが赦さないと言っているアンネリーゼを当てはめれば全体が自然に収まる形で説明がつく。

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〇メルツをうんだのは誰か

・メルツはテレーゼから生まれた。
ただし、メルツ≠メル≠メルヒェンである。

・メルツはテレーゼより産まれたが
出産後、表向きには死産したとされ
実際はアンネリーゼによる赤子の取替えが行われたと考察。

〇メルはテレーゼの幻想であり本である。

・テレーゼは歴史に屠られたエリーザベトを
ヴェッティン方伯の後妻ゾフィーに託され匿う。

・彼女を密かにメルとして見る
(とても不思議な出来事によって光を手に入れる)

・エリーザベトは本の中のメルに恋をする
(四角く切り取られた空=本の中の情景)

・テレーゼが魔女の疑いをかけられ、ゾフィーにエリーザベトをフォンヴェッティン家の養子にするよう頼む
(闇を背負うのは私で終わり、あなたは光の中へおゆきなさい)

・ヴェッティン方伯は既に亡くなっていた為、エリーザベト兄の養子となる(お父様と呼べ発言)

・別れの日、人形と本(メル)をテレーゼに渡しに行く際、トムとハンスに会う。

・何らかの理由でトムハンスに本と人形を託しテレーゼの家を教える(もしくは本に家の場所が書いてあったか)

・その後テレーゼの訃報を知ったエリーザベトが井戸の協会へ行きメルとイドと人形を引き上げる

・テレーゼの代わりにメルを執筆しメルヒェンが生まれる

〇なお、本物のメルツはテレーゼ兄では無いかと仮定。

・ヴェッティン方伯が父、テレーゼ母がルードウィング家の血筋で母はメルツ誕生前後に死亡
(その前に跡継ぎが産めず離縁した可能性もある)

・メルツ出産直後、産婆によりアンネの死産した子供と取り替えられる
(彼魔女冒頭、赤子の泣き声が聞こえないのは死産した子を抱いているから)

・跡継ぎが欲しい方伯は本物メルツをテレーゼ母の忘れ形見として引き取ったと思われる

・アンネは赤子取り換えを計画しただけでなく
テレーゼ母暗殺やエリーザベト暗殺未遂をした可能性もある

・あと、単純にメルツと兄の服装が酷似している事もそう思う根拠。

「メルツを産んだのは誰?」

このあたり、自分の中でまとまっていないのですがテレーゼだと考えています。「ごめんなさい~罪深い私です」と深く詫びている彼女が嘘を吐いているように思えなくて。
ただ、メルツを産んだのがアンネリーゼなどの第三者で、メルツが障害をもって生まれてきた原因がテレーゼの可能性もあるかもしれません。
(別曲の自解釈を挟みますが、)アルテローゼの野薔薇姫への呪いからラフレンツェが産まれたように、直接産んだわけでは無くても産みの母となる要素はいくつもありますよね。
テレーゼを方伯の正妻の子、アンネリーゼを方伯の妾と仮定した上で、メルツはアンネリーゼの実子だと解釈しています。(テレーゼはメルツの義母にして異母姉)
テレーゼがアンネリーゼをなんらかの方法で「呪った」ことで、メルツが視力障害を持って生まれ、それゆえテレーゼはメルツがそのように生まれたことについて罪悪感を抱いているのではないかと。
というのも、「童話の全てが虚構ではなく、何らかの事実を含んでいたら?」という視点から、方伯家に起きたできごとが童話の原型になっているのでは?と考えたからです。
つまり、「テレーゼに呪われたアンネリーゼが、銀色の髪に緋色の瞳の子どもを森に捨てた」「呪った本人であるテレーゼが、その子どもを拾って森で育てた」というできごとから、「薔薇の棺で眠る姫君」という童話や「魔女とラフレンツェ」という絵本が生まれたのでは、という解釈です。あるいは、こうした童話や絵本の原型は方伯家のできごと以前からあり、事実と童話に類似点を見た者(=物語の策者)によって童話に手が加えられたか。
テクストとして固定化される以前の童話が、口承の中で変容していったであろうことを考えると、そんな解釈の仕方も面白いかなと。
メルツを産んだのは誰?改めテレーゼとアンネリーゼには何があった?

「アナタ(メルツ)を産んだのは私(テレーゼ)です」
「(テレーゼはメルツの)母にして姉であり」
→テレーゼの実父とテレーゼとの近親婚で生まれたのがメルツ。

「光を知らないアナタは視力というその概念自体解らなかった」
→メルツは先天的に盲目だった。

「罪深い《私》です……」
「森に移り住み贖罪の日々を」
→テレーゼはメルツを障碍のある体に産んだ事を罪と考えていた。
あるいは、アンネリーゼやテレーゼ父の仕打ちに対して何らかの報復を行った場合はその行いについての罪。(報復は描写が不足しているので妄想に近い…)

「なぜこの子を方伯家の世継ぎとして認めて下さらないのです」
「妾腹だから…いえ…この子の体が不自由だから」
→アンネリーゼとテレーゼの父との会話。アンネリーゼはテレーゼの父の妾で、何らかの障碍をもつ子をテレーゼより先に産み、テレーゼのメルツ懐妊をきっかけか決め手に世継ぎから外された。この会話の時点ではメルツの障碍は判明していないのと考えられる。もしメルツの盲目が判明していたらアンネリーゼは「この子の体が不自由だから」という言い方をせず食い下がるのではないだろうか。

「アンネリーゼ…貴女の気持ちは、痛いほど解る。それでも私は…貴女を、許さない」
→テレーゼの言葉。
テレーゼがアンネリーゼに共感できたのは、我が子に対して障碍のある体に産んだ事を罪と考えていた点と、妾や実娘ゆえの立場の後ろ暗さを感じていた点が重ねていたから。
テレーゼが「許さない」とまで言うからには、アンネリーゼに妬まれて自身かメルツに何らかの悪意を向けられたと考えられる。ここも根拠となる描写はないのでアンネリーゼからの具体的な仕打ちの内容は想像で補完するしかない。ドロドロの昼ドラ的ないびりがあったのかもしれない。メルツを妊娠中に突き飛ばされたり毒を盛られたり、メルツの障碍の原因か遠因にもなったかもしれない。
「アナタを産んだのは私です」「母にして姉であり」を文字通り受け取り、メルツはテレーゼが父である方伯との間にできた子だと考える。

では、妾アンネリーゼが方伯に対して世継ぎに、と迫っていた「身体が不自由な子」は何者かといえば、これもメルツであると考えることができる。

アンネリーゼも同時期に方伯との間に子を授かったが、そちらは流れたか生後間もなく死んでしまった。
子を喪った現実を受け入れられないアンネリーゼは屋敷に響くメルツの泣き声を耳にし、我が子と思い込んでさらってしまったのだ。

方伯は近親相姦の末に産まれたメルツの存在を無かったことにしたかったので、狂ったアンネリーゼの訴えを無下にする。

同じ男を愛した女として、子を想う母として同情はすれど、テレーゼはメルツを奪ったアンネリーゼを許さない。
アンネリーゼを断罪し、テレーゼはメルツを連れて出奔したのだった。

子を切望し他者の子を奪った女、子の治療のために魔と契約した女、子を生かすため髪を振り乱し奔った女、「彼女が魔女になった理由」は3人の母の狂気じみた子への想いが詰まった一曲であると思う。
魔女になった「彼女」はテレーゼだけではないとすれば、アンネリーゼへの断罪は魔女の告発だったかもしれないし、死んだはずの娘を連れ帰ってきたゾフィーも魔女と呼ばれたかもしれない。

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