電気けいれん療法を受けることになったので、施術前の自分を記録しておく。

私は統合失調症だ。
2018年頃より精神病性の症状が発生し、その後約5年間に亘って投薬治療を受けてきた。
飲んできた薬はもはや数え切れない。ソラナックスやワイパックスといった比較的軽い抗不安薬から、リスパダールやオランザピンなどの強力な抗精神病薬、レキサルティといった新薬なども試してきた。(その他、睡眠薬なども5〜6種類。)

しかし、症状は右へ行ったり左へ行ったりだった。

私の症状は最初、世界が没落するという恐怖心、生活能力や学業成績の激しい低下、抑うつ気分、それを吹き飛ばすためのアルコールへの依存から始まった。

当時大学生で、一人暮らしをしていたワンルームのアパートはみるみるうちにゴミ屋敷と化し(単純に生活能力が落ちているのもあるが、ゴミをあさられているという妄想でゴミ出しができなくなっていた)、気がつけば食事もほとんど取れなくなっていた。

家の惨状に気がついた両親の判断で大学は休学、ここでようやく精神科医療にかかることになる。
1年後大学のルールに則って復学するも、病状はこれきしも良くなっておらず、結局は退学することになった。

その後実家で2年暮らし、紆余曲折あって地元のIT企業に一般就労を果たすも、仕事のストレスで病状はみるみる悪化。壁紙のわずかな模様から大量の芋虫が生えてきてベッドにボロボロ落ちる。どこかで知ったような声が津波のように襲いかかってくる。耳元で大声を発せられてびっくりして振り返るも、そこには誰もいない。誰かに思考を読まれているため電磁界測定器で監視するも、考えていることは抜き取られ続ける。友人と会話するときも、自分が何について喋っているのかわからなくなり、脳の一部を盗まれたような感覚を覚える。もはや自分のことすらわからず、錯乱し、夜中に叫び声を上げる。

このような状況が約1年続く。薬は毎日決められた量を飲み続けているにもかかわらずだ。

そして、医師から提案される。あの治療法を・・・

そう、「電気けいれん療法」である。
非定型抗精神病薬が登場してからは、多くの医師からタブー視され、薬物による治療が推奨されてきたこのご時世であるが、近年はもはや薬だけでどうにかなるといったことは幻想に過ぎないと認められ、施術件数が増加傾向にあるようだ。

電気けいれん療法は単純だ。
こめかみに電極を貼り、麻酔や筋弛緩剤を投与して眠らせ、バイタルサインを確認しながら8秒間ほど脳に電流を流すことによりてんかん発作を起こさせる。
これだけだ。

今の心境を綴っておく。

正直、全く怖くはない。
むしろ、希望に満ち溢れている。
今までの薬物治療で改善が見られなかった病状が、一時的にでも良くなる可能性があるのなら、どんな治療だって受けて見せる。
それに、1938年に登場し、様々な治療法が出てきては淘汰されていきながら、それでも効果が認められ続けた歴史のある治療法だ。疑う余地はない。

ただ一つ恐ろしいと感じるのは、記憶が消えることと、人格の変容だ。
だからここに施術前のありのままの自分を記録しておくのである。

2023年11月21日 みぞらぴ

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