見出し画像

3月 -コロナと過ごした1ヶ月-

昨年末に発見された新型コロナウイルスの感染拡大は、4月17日(金)現在も、全く終息する気配がない。私自身も、感染拡大防止のため、4月頭に会社から自宅待機を命じられた。
この状況の中で体験したことや考えたことを記録に残しておくため、月1~2回、印象的だった日の日記をまとめてアップしていきたい。

3/2(月)

朝起きたものの、体調がすぐれず、熱を測ったら36.7℃ぐらいあった。会社を休み、かかりつけの病院へ。
連日、新型コロナウイルスの報道を見ていたので、まさか感染したのか……と不安だったが、問診でも尿検査でもウイルスの存在は確認されなかった。「肩が張ってるみたい。ストレスかもしれないから、軽い運動をしたりするといいですよ」と言われ、薬の処方なしで帰される。

知恵熱か。。。コロナウイルス関連のニュースが、気付かないうちに精神に負担をかけていたのか。情報収集のために必要だと思ってチェックしていたものの、そういう情報から距離を置いて心を落ち着かせる時間もあった方がいいのかもしれない。
2月からジム(都営の安いところ)が休業に入ってしまって、身体を動かす時間が減っているのもストレスの一因かも。肩凝りが解消できず、眠りが浅くなってしまう日もある。
あと、2月末にアップした記事で触れたように、この時の私は、書肆侃侃房の小説公募の結果待ちをしている状態だった。選ばれているのかいないのか分からず、いつそれが知らされるのかもわからず放置されるというのはそこそこストレスだったので、それも原因な気がする。入試みたいに合格発表の日が決まってれば、多少楽なんですけどね。
(注:3/8に受賞者が発表されました&自分は選ばれてませんでした ; _ ; )

上司と、勤務地(客先)の上司に、診断の結果コロナではなかった旨をメールする。
単なる風邪の時より神経を使う。

体調不良を理由に、病院の近くにあった九州料理の店でしっかりした定食を頼んだ。ゴーヤーチャンプルーに入っていた豚バラブロックは食べ応えがあって、エネルギーをチャージできた。

3/3(火)

熱が下がったので出社。
会社に着くと、前日に時差出勤の指示が出ていたことを知らされる。3/31まで、コロナ感染防止に向けた通勤ラッシュ解消のため、勤務時間を下記の5つから選ぶよう言われる。

①7:30 - 16:00
②8:00 - 16:30
③8:30 - 17:00 (通常は全員これ)
④9:00 - 17:30
⑤9:30 - 18:00

③のままが一番楽ではあるけど、これを選ぶとコロナ感染防止に非協力的な奴みたいに思われるよなーやだなーと感じたので、②を選択。
明日からは8時出社……大丈夫か。
(なお、リモートワークの話は出なかった。仕事で開発中の製品情報を扱うことがあるので、社外でデータを閲覧できるようにするのは厳しいのかも。)


3/4(水)

時差出勤初日。8:00に着けるよう、家を30分早く出る。

電車が空いていることを期待していたのに、ホームに入ってきた電車の混雑度は80%ぐらいで、時差出勤しても感染防止の効果ないんじゃ……と思う。ニュースで、感染が広がりやすい場所としてライブハウスやバーが指摘されているのを見たが、この朝のラッシュの密度だけ見ればライブハウス並み……。空いてるバーよりよっぽど人口密度高いよ……。(もちろん車内で喋る人は少ないので、飛沫は飛びにくいですけど。)
私が利用している電車の沿線には大手メーカーの拠点が幾つかあるため、各メーカーが似たような時差出勤をやったところで、混雑度は結局80%ぐらいになってしまうのだろう。
本気で感染防止を目指すなら、自宅待機とかリモートワークをやらないと恐らく無意味。

ホームで電車を見た瞬間「あー、目的地に着くまで、この中で30分過ごすのかぁ……」と暗澹たる気持ちに。
吊り革を掴んで「もし、私の前にこの吊革を掴んだ人が感染者だったらどうしよう」と不安になるが、掴まなければ転ぶだけなので、普段の6割ぐらいの力で掴む。なんかもう会社に着く前に疲れている。エネルギー配分だけ見ると、本業が通勤で、会社での仕事はおまけみたいな状況。辛い。


3/8(日)

朝起きて、洗顔と着替えを済ませ、時計を見た瞬間「しまった!」と思う。
家のトイレットペーパーが、残り1つになっていた。買いだめに走る一部の人間のせいで、トイレットペーパーはものすごく品薄になっている。今日中に買えないと困るので、開店前にドラッグストアに行って列に並ぼうと思っていたのに、もう開店時間の10時を40分も過ぎている。
慌ててジャンパーを羽織って最寄りのドラッグストアへ走ったが、トイレットペーパーの棚は既に狩られた後だった。月~金まで週5で働いている私には土日しか買うチャンスがないのに……くそう、昨日手を打っておけば……。朝からげんなりする。

その日は下北沢に行くことにしていたので、とりあえず家に戻って朝食を摂り、出発した。少しでも運動不足の解消になればいいなーと思い、隣の駅まで歩くことにした。
線路沿いの道にはドラッグストアがある。一応見るだけ見てみようと思って中に入ったら、奥の棚にトイレットペーパーが残ってる! その場でダブル12ロールパックを購入。助かった。
でも、片手にトイレットペーパーを持ったまま下北散策というのもアレなので、駅のコインロッカーに入れておいて帰りにピックアップすることに。トイレットペーパーはたかだか300円程度なのに、コインロッカー代は400円かかる……損した気持ちに。
かくして私のささやかな日常は、少しずつ、新型コロナウイルスに浸食されてゆくのであった。。。


3/14(土)

幕張の本屋lighthouseへ、店主の関口さんとtsugubooksさんのトークイベント「『本と暮らす/本で生きる』tsugubooksとlighthouseの作戦会議」を聴きに行く。

tsugubooksさん(以降「tsuguさん」)は、会社員をやりながら本を届ける活動をしている方で、自分の家を本屋にして週末や平日夜だけオープンするという面白い生き方をされている(「住み開き」と言うのだそう)。最近、UR都市機構が手掛けるシェア団地「読む団地」の共有スペースに置く本の選書を請け負うことになったそうで、「会社員」「本屋」に加えて「ブックコーディネーター」も名乗れる状態に……マルチだなぁ。
(なお、私がtsuguさんと出会ったのは、好きな本についてゆるく語り合うイベントだった。車谷長吉の「赤目四十八滝心中未遂」の素晴らしさについて熱く語り合い、それ以来親交が続いている。)

会場が土地勘のない場所で、なおかつ雨で早く歩けなかったこともあり、イベント開始30分後ぐらいにやっと到着できた。お店はDIY精神がほとばしる手作りの小屋で、店内には10人前後の人が、丸く並べられた椅子に座っていた。

参加者の中には、tsuguさんと同じく個人で本を売っている人もけっこういた。少人数だったので、tsuguさんの話を軸に、置いてあるお菓子をつまみながらみんなで喋るような雰囲気になった。
従来の書店にはできないような形で本と人を繋ぐためのアイデアや、流通・電子マネー対応など実務面での課題などについて、様々な意見が交わされた。私は単なる本好き・本屋好きなので、「PayPayとかePayとかUPAYとか色々ある電子マネーの中で、結局どれが一番いいのか?」「〇〇出版の本は良質だけど、個人の小さい店に少部数で卸してくれない……売りたいんだけどなー」といったような話を聴きながら、本屋の舞台裏ってこんな感じなのかーと楽しんでいた。
そして、個人の本屋同士が在庫を融通し合えるような仕組みが欲しいという話が出た際、「本屋巡りが趣味の人にちょっと運んでもらえたら助かる」という発言があった。私にもできることが……⁉ 「運び屋」是非やってみたい。

今(4月中旬)振り返ってみると、この時はまだ、そんなに広くない空間で対話することにあまり罪悪感を持っていなかった。街にも、それなりに人がいた。


3/28(土)

この日は2つ用事があった。午前に美容院で髪を切り、午後はベリーダンス教室の体験レッスンに行くことになっていた。

どちらの場所も都内にあるとは言え、移動に際して電車の乗り換えが発生することに、もちろん罪悪感はあった。移動が多ければ多いほど、人との接触の機会も増えるわけで、そうなると必然的にウイルスをもらったり運んだりしてしまうリスクも増える。
でも前から予約していた美容院をキャンセルすれば、美容師さんの収入は減り、私も髪が切れなくて煩わしい思いをする。
ベリーダンスに関しては、本当は前の週に体験レッスンを受けるはずだったのに、先生が急に発熱したとのことで当日にクラスがなくなってこの日にずれ込んだという経緯がある。(教室まで行ったのに先生が来なくて、もう一人来てた女性と「ないんですかねー……」とか喋りながら30分ぐらい待った。その女性が先生にメールしたら「今日は中止にします、すみません」という返信があり、諦めて帰った……超不毛だった。なお、先生は翌日には回復され、コロナではなかったとのこと。)

「ベリーダンスなんて不要不急だろ」と考える人もいるだろうが、3月頭に知恵熱が出たことを考えると、やっぱり運動不足解消のために何らかの手を打ちたかった。体調不良→病院に行く→感染、という事態を避けるためにも、健康維持に必要なことはいつも以上にやった方がいいように思えた。
「ジョギングでいいだろ」という意見もあるだろうが、絶対続かないと自信を持って言える。これまでの自分を振り返ってみると、私は音楽が鳴っていないと身体を動かす気が起きない。ただ走ることに時間を使うことを億劫に感じる反面、ジムのエアロビクスやダンスのプログラムに出ることは不思議と「楽しい」と思える。
(「じゃあ音楽を聴きながら走ればいいだろ」という突っ込みも想像できるんですが、あれ危ないと思うんですよね。自転車や車の音に気付けなくなりそうで。)
そして私の場合、一番脂肪がつきやすい(恐らく代謝が悪い)のはお腹周り。なので、お腹を動かさないと話にならないベリーダンスは、今の自分にとってベストだという結論に至った。もちろん、せっかくなら今までやったことのないものに挑戦したい、非日常&異国情緒を感じたい、面白そう、というのもありますけど。決して単なるウケ狙いではない。

「この日は2つの予定をこなす!」と決意した上で、目的地までのルートを練った。
人の多い乗換駅を迂回するため、普段は電車で行くところをバスにした。電車は、時間的に厳しい場合を除き、各停に乗ることにした。

紙マスクを着け、出発。家から数分のバス停からバスに乗り、50ほどかけて終点の駅へ。車内は比較的すいていて、感染予防のために窓が開けられていたので肌寒かった。
そこから電車に乗り、6駅乗って美容院のある街へ。急行だと2駅で着くが、各停にする。
席に座っている人達は、申し合わせたように、一人分ずつ間隔を開けていた。みんな「ソーシャルディスタンス」を意識している……割って入る気にはなれず、私は空席を見ながら立っていた。

美容院には、私以外にも一人お客さんがいた。カットと精算を済ませ、電車で次の場所へ。
時間的に余裕がなくなりそうだったので、乗換駅でやむを得ず急行に乗った。各停ほどすいていないが、一人分ずつ席を開けても座れる程度の余裕はあり、決して混んではいない。何駅か過ぎ、「この時間にここまで来てれば大丈夫そう」と思ったので、次の駅で各停に乗り換えた。

ベリーダンス教室に来ていた生徒は、私も含めて2人だけだった。
先生が窓を開け放ち、レッスンが始まる。ジムのエアロビクスほどの運動量はなかったので、期待したほど汗をかくことはできなかったが、やっぱり音楽が鳴っている中で身体を動かすのは気持ちよかった。肩やお腹や太腿などの、普段の生活では使わない筋肉が刺激され、代謝が上がるのが分かった。
レッスンが終わって先生にお金を払う時、一緒に紙マスク1枚を渡した。こんな時でも教室を開けてくれてありがたいと思ったので。
(ただ、今入会しても今後クラスが継続されるか不透明なので、会員になる手続きはしていないし、それ以降も行っていない。一度クラスに出る経験をしたので、当面はYouTubeの動画やDVDを使って独学しようと思った。)

その日は肩凝りも和らぎ、ちゃんと眠れた。
ちなみに、この日に乗ったどの電車も、どのバスも、通勤時の電車よりはるかにすいていた。

新型コロナウイルスの感染防止対策として、「不要不急の外出は避けるように」というスローガンが繰り返し叫ばれている。
でも「不要な外出」と「必要な外出」のボーダーラインは一体、どこにあるのだろう。自分にとって不要なものが、誰かにとっては生きる上で必要不可欠な場合もある。

健康維持のために私が選んだ運動がベリーダンスでなくマラソンだったら、私は多分、何故それをするために外出しようと思ったのかを、あそこまで長々と書く必要はなかった。
現在のような非常事態の中では、私的な領域の、こんな些細な事にまで説明責任が発生するのか……と気付かされる。


3/30(月)

午前中、会社でミーティングあり。業務報告・連絡が一通り済んだ後、同僚に「志村けん亡くなったって」と告げられ衝撃を受ける。机に戻ってからネットで検索すると(本当は社のPCでやるのはあんまりよくない……でも社内コミュニケーション円滑化のためなんで見逃してくれ……)、確かにあちこちのニュースサイトに、新型コロナウイルスによる肺炎で入院中だった志村けんの訃報がアップされていた。
つい最近までテレビに出て元気に笑っていた人が突然亡くなったことで、まだ薬も治療法もない新種のウイルスに感染することの恐ろしさを思い知らされる。ショックが尾を引き、仕事に集中できない。繁忙期じゃなくてよかった。。。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?