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POD(プリント・オン・デマンド)での出版を探る② 本の設定価格が高くならざるをえない

情報サイト「プレジデントオンライン」に、日本で最も権威のある美術展の日展と、上下関係が厳しく、金銭体質と言われている書道界の実態を追ったレポートを書きました。お時間のあるときに読んでみてください。

「週刊文春」の取材を受け、宝塚歌劇団を傘下に持つ阪急阪神ホールディングスのコーポレートガバナンス(企業統治)についてコメントさせていただきました(2024年1月4・11日号)。タイトルは「宝塚『闇の金』」です。お時間のあるときに読んでみてください。

「プレジデントオンライン」という総合情報サイトで、宝塚歌劇団と阪急阪神ホールディングスが改革すべきこと、急務の問題について記事(第2弾)を書かせていただきました。お時間のあるときに読んでみてください。

「プレジデントオンライン」という総合情報サイトで、女性の社外取締役や女性のアナウンサー、アスリート、タレントとの関わりについて記事を書かせていただきました。お時間のあるときに読んでみてください。

「プレジデントオンライン」という総合情報サイトで、宝塚歌劇団の劇団員の死や宝塚歌劇団の記者会見、阪急阪神ホールディングスの会長や社長の減給処分について記事を書かせていただきました。お時間のあるときに読んでみてください。 

POD(プリント・オン・デマンド)による出版には、どのようなメリット・デメリットがあるのか。インプレスホールディングスとメディアドゥ(いずれも上場企業)の合弁会社、PUBFUN(パブファン)の「ネクパブ・オーサーズプレス」のケースをチェックしてみよう。


「ネクパブ・オーサーズプレス」


「自分で作るから出版が面白い! あなたの本を無料で自己出版できます。」というキャッチコピーを掲げ、サービス内容を丁寧に解説したサイトとなっている。

ネクパブ・オーサーズプレスでは、出版用の原稿データは作者側が作成する。そのため、自費出版とは異なり、編集費は発生しない。レイアウトなどを決め、完全な原稿データを作る必要があるが、有料のオプションサービスでデータ作成や表紙作成を支援してもらえる。

「充実のオプションサービス」

印刷用本文データ作成支援、表紙作成支援、I SBN(国際標準図書番号)登録、国会図書館寄贈などの支援サービスがあり、電子書籍かんたん変換など、無料のサービスもある。

紙の書籍の出版(POD出版)にかかる費用はどうなっているのか。
モノクロの印刷費は
ページ数×2.75円(税込)+ 基本料198円(税込) となる。

著者は販売価格を自由に設定でき、著者の受取額は
販売価格(1円単位で設定可能)-販売手数料(販売価格の40%+税)-印刷費  となる。

350ページの本を1500円で販売すると、1冊当たり320円の赤字。販売価格を1800円に設定しても152円のマイナスになる。2073円に価格設定すると、ようやく著者の受取額が1円となり、利益が出る。

ネクパブ・オーサーズプレスのホームページには、総ページ数、その中のカラーページ数、設定価格を入力すると、著者の受取額が算出されるシミュレーターが用意されている。

「著者の受取額シミュレーター」

表紙のデザインや印刷用本文データ(PDF)作成を依頼したり、ISBN(国際標準図書番号)コードを本に付ける場合もオプション料金がかかる。完全原稿データを作成する前に、校正・校閲をプロに依頼すると、校正費が別途必要である。

無名の作家の作品が高額では売れないので、350ページで1500円に価格設定するとしよう。1冊当りの著者のマイナスは320円で、1000部売れると32万円の赤字。話題になって1万部売れたら、320万円の出費となる。大ヒットなど、心配する必要はないかもしれないが……。

学術書や絶版本の復刻に向いているPOD出版

ページ数が少ない単行本ならば、利益を出しやすい。150ページの本に1200円の価格を設定すると、1冊当たり62円の受取額になる。ただ、ここには校正費や表紙のデザイン費などは含まれていない。

350ページほどのボリュームのある本はPODでの出版には向いていない。発行部数が多くなっても、1冊の本のページ数が増えても、量産効果が出ないからだ。

ネクパブ・オーサーズプレスを利用して出版された書籍はこれまでに6500作品に上る。だが、総販売数は32万冊。1作品当たりの販売数は、わずか49冊である。

総販売額が7億5000万円なので、1冊の平均単価は2343円(データは2022年9月時点)。小ロットで単価の高い学術書・専門書や絶版となった本の復刻版には適しているが、小説を出版して多くの人に読んでもらうには、POD出版は適していない。

32万円の赤字覚悟で1500円という価格設定にして、販売部数を1000部に限定して、電子書籍での販売を併用する方法も考えた。だが、不可能だと分かった。

FAQ(よくある質問)の「販売価格は自由に設定できますか? 最低販売価格はいくらですか?」という項目の答が以下のようになっている。

価格は、「印刷費」+「販売手数料(設定価格×40%)」を上回る価格であれば、1円単位で自由に設定が可能です。お支払額がマイナスになる価格設定はできません。
赤字となる価格設定は、できないようになっているのだ。

「手頃な価格で、小説を読者に読んでもらいたい」と考えたとき、POD出版では価格面で難しい。

印刷部数が増えたら、販売価格の40%という販売手数料を段階的に引き下げるとか、モノクロ1ページにつき2.75円の印刷費を逓減していくことはできないか。POD出版の事業者に、検討をお願いしたい。

個人を対象としたインプレスR&Dのプリント・オン・デマンド(POD) サービスの「ネクパブ・オーサーズプレス」と、出版社や法人を対象としたメディアドゥが手掛けるPODサービス「PUBRID(パブリッド)」の事業を統合し、合弁会社(PUBFUN)の新設が2022年2月に発表されたが、新会社発足後に新たな料金体系をスタートさせるのではと、私は予測した。

利用者の利便性が上がり、市場が拡大すると考えたが、価格体系は従来のままだった。

ネクパブ・オーサーズプレスでは、アマゾンとDNP(大日本印刷)の「プリント・オン・デマンド(POD)プログラム」の印刷製本の仕方やPDFファイルの登録作業の進め方、アマゾンの電子書籍「Kindle」の販売代行サービス「電子書籍出版」のユーザーガイドを編集。「アマゾンPODプログラム」の取次会社と出版社の中で、ネクパブ・オーサーズプレスのサービスの質は群を抜いていると思う。

ネクパブ・オーサーズプレス作成のガイド

ユーザーガイド(仕様編)
ユーザーガイド(操作編):一般会員用
ユーザーガイド(操作編):プロフェッショナル会員用
ユーザーガイド(電子書籍)

ユーザーガイドはそれぞれプリントアウトできるようになっており、サービスの全体像と作業手順を分かりやすく解説している。

アマゾンが提供する「Kindle ダイレクト・パブリッシング(KDP)」では電子書籍の出版に加えて、紙の書籍を無料でセルフ出版できるようになった。2021年10月から紙の書籍の出版サービスを開始。本の著者は販売価格を自分で設定でき、紙の書籍で60%、電子書籍で最大70%のロイヤリティを受け取れる。

ただ、書店での販売はできない。小説を出版することができても、書店の店頭に並ばないのは、昭和生まれの世代には寂しい気がする。

Kindle ダイレクト・パブリッシング(KDP)の詳細に触れる前に、次回は自費出版の可能性を検討してみたい。(敬称略)


アマゾンのキンドル出版で、2023年8月、ペーパーバックと電子書籍の小説が発売されました。「権力は腐敗する」「権力の横暴や不正を許さない」をテーマにしており、お時間のある方はお読みください。
『黒い糸とマンティスの斧』 前原進之介著

2023年9月25日発売の「週刊現代」で『黒い糸とマンティスの斧』が紹介され、9月27日にネットで配信されました。「現代ビジネス 黒い糸とマンティスの斧」で検索すると、記事が出てきます。時間があるときにお読みいただければ幸いです。

この連載記事は、以下のような流れになっています。
1 小説を書きたいと思い立った「いきさつ」
2 どうしたら小説が書けるようになるの?
3 小説を上手く書くために小説講座を探そう 
4 どの文学賞を受賞すると作家になれるの?
5 文学賞に落選。心機一転再スタートを切る
6 多くの人が小説家を名乗れる時代になった
7 POD(プリント・オン・デマンド)での出版を探る

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