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ボクとドリとDWLと。②

序章  ボクとドリと。

まずは、ここから話をすべきなのかどうかは、ボクにとっては非常に迷うところなんだが、とりあえずは始めていこうと思う。

前回、前説でボクとドリはデビュー年である1989年に、テレビのブラウン管を通じて出会っている」という意味合いの記述をした。
令和の前元号である平成は始まったばかりの1989年。今で言うSNSも、映像配信も、それどころかインターネットでさえ普及していなかった当初、人がメディアで音楽を聴いて楽しむ選択肢は、今よりかなり限られていたと思う。テレビ、FMラジオ、

そんな中、たまたまボクがいつも予約録画を欠かさなかったとあるNHKの音楽番組のひとつに「Just Pop Up」という番組がある。

これは当初バンドブーム全盛期だったこの時代に合わせて、主に出演するのは確かにバンドが多かった。

そんな数多くのバンドの中に「DREAMS COME TRUE」いわゆる「ドリ」も登場することになるのだが、ドリがこの番組にデビュー曲である「あなたに会いたくて」で初登場、オンエアーされた日に、ボクは自分で録画したビデオテープの中で、まさにドリに「出会った」のである。

他の数多くのバンドのボーカルが、「縦ノリリズム」という当時、軽快なドラム音にあわせて、比較的速いリズムでボーカルがシャウトするバンドたちの中で、明らかに他とは一線を画したボーカルの声をボクは耳にする。

そう、ドリのボーカル、吉田美和のあの声である。

今までボクが聴いた音楽の中であまりなかった歌唱法、いわゆる「歌詩」(ドリの楽曲は、すべて一般的に用いられる歌「詞」ではなく歌「詩」となっているので、今後この表記で統一することにする)との前後、間をつなぐ「イントロ」「間奏」「アウトロ」にも、吉田美和の声が「フェイク」やら「コーラス」やらガンガン入ってくるのである。

歌詩部分ではボーカル、間奏ではサポートする楽器音がメインになるという曲の法則をことごとく打ち砕き、一曲中どこを切り取ってもメインは「ボーカル」だという感覚に襲われた。

それはバンドという枠内でそれぞれの担当であるボーカル、ドラム、ギター、キーボードなどの境界線を一切なくしたボーダーレスな世界を想像させた。

結局一曲聴き終わったあとにボクの頭の中には、「吉田美和」というボーカルのソウルフルともいえる「声」しか残っていなかった。

歌がうまいのは言うまでもないのだが、あのロングトーン、メロディアスなコーラス、流暢な英語発音・・・と挙げたらキリがなかった。

とにかく、ボクにとって「ドリ」との出会いはそれほど衝撃的なものだったのである。

(つづく)

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