心理学が怖かった話

デザインの話の小休憩に下書き漁って目に入った記事の続きを書くやつ。

今でこそ心療内科やらカウンセリングやらメンタルヘルスやら心に働きかける分野に興味対象として向き合っていますが、少し前までは心理学やその関連分野を怖く感じている時期がありました。デザインの知見が日々深まっていた大学の頃は特に。別に心理学と名乗るものに何か怖いことをされたとか、変なイメージを吹き込まれた訳ではありません。いつもの勝手に考えすぎて悩んじゃった系の話です。そして、今ではむしろ生きる上で信頼できる価値観や自信を守るために身に付けたい学問だなあとも思うので、その心境変化の話を。

そもそもの経緯は、デザインを学ぶ中で「行動設計」や「UXデザイン」という分野に触れた頃だと思います。これらの領域においてデザインは、スムーズに目的を達成できるよう相手の思考・動作を誘導したり、操作上での迷いを減らしてストレスをなくす目的で取り入れられる存在です。小難しい機械に対する意識を変えたり、より利便性の高い体験を作ることに役割やその本質が問われてきます。

本来はポジティブな存在として用いられているデザインですが、「相手のリアクションに直接作用する仕組み」として捉えると、誰かを喜ばせたり感動を与えたりすることもできれば、騙したり何かに陥れて悲しませることにもなり得る存在ということにふと気付きました。

小さい頃、魔法使いやスーパーヒーローが何かすごい力を得た時、それがどんなに大きな存在でも、間違った使い方をすると大変な目に遭う、なんて話を度々見ました。何も知らないうちに騙されて力を悪用された結果世界を壊しかけた学者や天才頭脳の持ち主のエピソードも子供心にやたら印象深いストーリーとして記憶されていたり。そんな異次元的なちょっと物騒な感覚を、人や心に働きかけて作用していくデザインを通して当時ぼんやり自分目線で体験している気がしたのだと思います。

以前のエントリにも少し書いたのですが、本質的にやってることも多分ポジティブで、忌み嫌う物事とは目指すゴールや目的も違うはずなのに、人の意思や行動、心理にダイレクトに働きかけることを主目的にしたデザインに向き合うのに抵抗がある自分がいます。

ネガティブなことを引きずったり、そもそも長い間環境面でごたごたした事情に巻き込まれてきたこともあって、性格がかなり疑り深くなっているのもあるでしょう。そして、それは自分の中にあるデザインの「多方向から物事を見る力」が本当だったらすごく卑しい部分になっていたかもしれない、という不安感を常に抱えさせる存在でした。

そんな中でデザインとして「こんな気持ちになってほしい」と仮説に対して問いかけや検証として実践することも、心理学ではより古くから深く長く研究され、人間の持つメカニズムとして定義され、理論化されていることがあったりします。それらは、デザインで得たい結果の現実性に通じる先行研究として非常に有益ですが、当時の自分にとっては人が人を動かしたり変えたりする怖いことを達成するヒントに思えて仕方なかったのだと思います。

そんな自分は現在どうなっているか?同じ考え方のままでいるか?というと少し変わったことがあります。まあ、わりと最近までは本当に敬遠しがちな分野に思っていたことは事実ですが。

何がどう変わったのかと言うと、疑うのではなく信じるために学びたいこととして、自分の中に取り込みたい存在になりました。それは多分、心療内科やカウンセリングを通じて自分自身のメンタルや心理を他者に伝えるために向き合う機会があったからだと思います。

社会に出ると利益や儲け、いわゆるお金は学生当時よりも無視できない距離感になります。また、その中でデザイナーの仕事は、人の行動に働きかけるものづくりが成果につながることも多いと思います。もしかしたら世界で生きる上では仕方の無いことだったのかもしれませんが、疑って、でも騙されて、疲弊ばかりしていたら、ある日私は疲れて動けなくなっていました。そして、時間をかけつつも自分に向き合うヒントとして、メンタルや心理学の知見を今度は前向きに集めることになりました。

全てに対してストレートな価値観を伝えることがデザインやデザイナーの役割と限らないことは、分かっていてもまだまだ自分に心理学や人を動かすデザインを恐ろしいと思わせる時もあります。しかし、その先で改めて自身に取り込んだ心理学は、むしろ騙されたり騙されている可能性を探りつつも、信じて同意できるか、巻き込んだ相手も自分も大事にしているか?というジャッジのヒントをくれるものでした。昔から怖かったものを味方にしたいと言えばおかしな話ですが、味方の味方は味方くらいの距離感で今なら向き合えるんじゃないかと思うのです。

まだ前向きにとらえ始められたばかりですが、心理学は今後研究していきたいと考える「デザインとデザイナーの価値観」についても、名前をつけることや分類することのヒントに繋げられたらと思います。また、人の心理を逆手にとって相手を陥れたり、虐げたりする実践に巻き込まれたり囚われたりしないように。判断力をつける意味でも少しずつ学びを深められたらと思います。

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n300

〇〇デザインとデザイン〇〇をキーワードに、デザイナーとデザイン学者の間くらいを彷徨っているひと。色彩、基礎造形、グラフィック、エディトリアル、インタフェース周りが興味・制作対象。広報、体験ドリブンまわりの事例も勉強中。お金で買えないバリューのデザインが最近の問い。
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