沼尾奎介

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詩集『月』

はじめに 表紙におれはいない 目が合ったら会釈するよ 何かが引っかかるならば手にして 目次におれはいない 何を語るか紹介するよ ちょっと恥ずかしいけれど 精一杯を聞いてくれよ 本文におれがいる 実体よりも純粋に研ぎ澄まされた 内に向ける言葉であなたに問いかけよう 無音の対話をしよう 記すべき特別な略歴はない 装える飾りもない 失敗ばかりの何処にでもいる凡夫 来し方と遊びの楽しさ 人格を形成する諸々を携えて 今の話しをしよう これからの話しをしよう 未熟な詩集の一文

    • 【詩】平々凡々

      朝陽と共に起きて 体が喜ぶ食事をして しっかり動いて 仲間と語らい 酒や快楽は程々に 日付が変わる頃には寝よう 幸せは日常に融けているので透明だ 既に持っているのに もっと大きい幸せを求める 金持ちと比べて自分が見窄らしく感じる 比較競争のレースの行き先は何処だろう ゴールはあるのだろうか 走るのに疲れ果てて 欲望に憑かれていたと知る 幸せを噛み締めて味わう余裕もなければ 何を口にしても味のないガムだ 一点を凝視して走る最中に どんな景色を通り過ぎたのか判らない 無感覚に

      • 【詩】ポルノ

        カメラマンの目がレンズ越しに視ている  女体の人は五感で感じて演じている  何がしかの触覚があり嗅覚があり味覚があり視覚があり聴覚がある  撮り終えた物を画面に写し  更に綺麗になるように手を加える  口で咥えたものは不明瞭にする  幾つもの場面をカットして現実のような虚構を創りあげる  誇張した声で誘ってくる 俺はそれをまた別な画面から  自分の目を通して視て興奮している  虚構は虚無につけ込む  感じられるのは減衰した視覚と聴覚だ  他三つは画面に隔てられて感じない 

        • 【詩】一日

          心の景色はずっと 薄闇 泥沼 濃霧 孤独 頭に居座るのは 金の悩み  労働の悩み 体は立ち上がることを拒否するように眠り続け 目を覚ましてからも毛布に包まり  横たわり  温かさを抱き このまま終わろうとするような朝 何かをする動機より 何もしない動機が勝っている 怠惰に満足して飽きるまで眠りこけ 昼に寝床を出て活動を始める 面白そうなアニメやYouTubeに目を奪われる 目は自分の物なのに いとも簡単に自動的に画面に奪われる もっと大事な観るべきものがあるような気がしてい

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        詩集『月』

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        記事

          【詩】大人になれた

          大人に憧れた 子供の頃に憧れたミュージシャンは自由に見えた。好きな音楽を鳴らして、好きに楽しそうに生きているように映った。音は心を動かした。俺もそんな風に成りたいと思ってギターを手にした。今にして思えばあの人達は、大人と言うよりは、自分に成って行ったんだな。 大人に成れた? そもそも大人ってなんだ? 「大人なんだから」と、シケた顔の、黒スーツの表情を欠いた目の、嘘くさい丁寧な口調で、諭すように、憐れむように言ってくる奴らのことか?それが本当に大人だと言うのなら、もっと楽しそ

          【詩】大人になれた

          【詩】生きる意味

          この生を生きる意味なんてねぇよ。ただ遺伝子の運び舟さ。 かと言って強力な本能は死にたくないと強固に決めている。 だから、自分で意味を付けた。 この生を生きる意味はあるよ。俺がその意味に殉じている限り、価値のある戦いさ。 苦しい戦いが続いているが、生きる意味の先があると判っている。 生きていてよかったと実感することだ。論理や知識ではなく、心から。 本能によって死ねないを上回る、まだ生きていたい。 安楽死を無料で受けられるとしても、 苦しみは以前としてあるとしても、生きていたい

          【詩】生きる意味

          【詩】朝

          始まるということは何かが終わったということだ 光があるということは陰があるということだ 陽に近づくと何が燃えてしまうのか 覚醒しても意識の表層しか探知できない それを自分だと思っているが、行動こそ俺であるだろう。 望むと望むまいと死ぬまで朝は来る 僅かな隙間に陽は差す 体は陰鬱な朝でもいつまでも寝かせてはくれない 起きて直ぐに心が不安や心配を語りだしても、 未来を良くする為の助言なんだよな ありがとう。 白日夢に逃げるのではなく白日の下に晒される厳しさと向き合おう 星は見

          【詩】rocker punks b-boy

          音に言葉を乗せ感情が叫んでいる やり切れない痛みを燃やすみたいに 悪そうな服装で 指を立て 唾棄し 口汚く罵る 俺が格好よく感じるのは 目に見えないファッションの内側だ お利口な社会に踏み潰されて消えそうな煙草の火 気に食わないなら宿主にさえ噛み付く癌細胞 見捨てられた汚いガラクタの戦車 いっそ大砲をぶっ放して全てをぶっ壊したい 行き場のないエネルギーが内で渦巻いている むかつく奴をぶん殴る前に言葉に換える 社会に飼い慣らされるよりは足掻いてみせる 音に乗せ叫べばアーティス

          【詩】rocker punks b-boy

          【詩】ピカソ

          ピカソが生涯に創った作品は13万点もあるらしい 成功を天才の一言で括るにはあまりにも 堆く積まれた一枚一枚に宿るものは雑多で複雑だ かつて否定された作品は新しさの証拠 平凡の枠では判断できない 狭い村から大きな街に出たら褒めてくれる人がいた 否定ばかりされる俺達だとしても だからこそ冒険に出よう 世界も人も心も広い そりゃあ才能があったのかもしれない だからなんだと言うのだ 何もしない為の言い訳を言うのか 平凡な俺達は絵筆を握り一枚一枚描いていくだけだ 一段一段上り ふと振

          【詩】ピカソ

          【詩】声を上げる

          俺が発した言葉を、ただ一人でも受け取ってくれたなら、価値がある。 名前は忘れられても、ただ一言でも記憶に引っ掛かるのなら、価値がある。 発した瞬間からただ一人は自分自身であるのだが、 世界を彷徨って予想もしない処に着地する。因果応報の巡り合わせを待っている。 独り言のような言葉は、本当に独り言のままで終わらせることもできる。 あえてネットの有象無象の海に投げるのは、顔も知らず声も聞こえない、あなたが居るから。 同じ色を持った言葉は引かれ合う引力 鏡写しのような我を見る 持

          【詩】声を上げる

          【詩】言葉は裸で

          言葉も着飾る かっこいい言い回しはシルバーアクセ わたくしはで始まり 御座いますで終わる 首元をネクタイで締めた正装 稼いだ額を並べるのは  全身高価なブランド品のけばけばしさ ねこたんをなでなでするかわゆさ 言葉を呑み込む 嫌味を言われても嫌われるのは嫌だから 意見はあるが  どうせ右耳から左耳へ通過するだけだから 共有したいのに論戦にすり替わるから 言い負かしたなんて詭弁の優越 言葉を発するのが怖い 意見があるなら伝えればいいのに 聞いてほしい話しがあるなら話せばいい

          【詩】言葉は裸で

          【詩】 道行

          道は開けて真っ直ぐに延びているのに 迷路のように感じる心持ち 道は四方八方に延びているのに どちらに進んでいいか決められずに 中心点で呆然と立ち尽くす 悩んでうずくまっていると なにやら微かに声がする 「こっちにおいで」 目を凝らすと遠くに霞んで澪標が見える 本物かどうか断定はできないけれど きっとそうだろうと直感が言う そうか其処に行けばいいんだね 歩き出して進んでいると分かれ道ばかり この先に食べ物はあるだろうか? 宿屋はあるだろうか? 靴も穴が空きそうだな 迷いと不

          【詩】 道行

          【写真×詩】 夢

          木の下を、簡素な身なりをした子供達が走り回っている。声は聞こえず、顔もぼんやりとしか見えないが、確かに笑っているのがわかる。鐘の音が風音ともつかぬノイズに混じって聴こえてくる。祝福を知らせる為に打ち鳴らしているような音だ。僕もそこに行きたいのだが、声は出ず、動くこともできない。どうやら顔も体もないようだ。観念にでもなった気分だ。これは夢と言うよりは、蜃気楼に見る桃源郷、現実逃避のあたたかな迷いの丘、いつか辿り着きたいデジャビュ。映像だけは何回も見せるくせに、決して越えることの

          【写真×詩】 夢

          名言収集(2/13更新)

          「人生とは思い切った冒険か、さもなければ無だ」ヘレン・ケラー 「天才を演じきっていれば、天才になれる」サルバドール・ダリ。画家。 「心ここに在らざれば、視れども見えず、聴けども聞こえず、食らえどもその味を知らず」曾子 ▼トーマス・エジソン 「人生に失敗した人の多くは、諦めたときに自分がどれほど成功に近づいていたか気づかなかった人たちだ。」 「ほとんどすべての人間は、もうこれ以上アイデアを考えるのは不可能だというところまで行きつき、そこでやる気をなくしてしまう。勝負は

          名言収集(2/13更新)

          【写真×詩】囲われた月

          広い空は直線で囲われた その線から出れば自由になれると思った さらに向こうにより大きな線が引かれていた どこまで行っても檻の中らしい 月に吠えてた狼も死んだ 囲われ遮られ邪魔されるからこそ ハウリングの鋭いナイフのギラつきが 月夜の残響 月は一人では光らない あなたがライトを当てればこそ

          【写真×詩】囲われた月

          【写真×詩】血の花

          鮮やかに咲く真っ赤な花は 何を養分にしているのか 何を代償に捧げたのか 数多の目を惹くが彼女の本当の顔は誰も知らない 中心の虚に潜んでいる核 無知でいるほうが綺麗なままを見ていられる 鮮血と形容するが現実に流れた痛みは 字面ほど綺麗でもなく赤黒くドロドロしたもの あたたかさと 匂いと 味が 生きてるってこと 触れたいのは

          【写真×詩】血の花