見出し画像

雷鳴

物干し竿に吊るされた祖母

雷鳴が叫び、光の雨に横頬は打たれ、晒され続けていた

あー、死んじゃったの
あー、生きていないの

稲光は屋敷の窓、障子を突き破り、坊主がいる畳まで伸びてきた

般若心経を唄う坊主の涙声は、祖母には通じず、ただ雨音だけが辺りをこだました

雨水は坂道を下り、濁流となり河川を汚し、河川の傍の道には白装束の死神の列がとぼとぼと火葬場に向かっていた

親戚やいとこが集まり、祈り、願い、懺悔をおこなう最中、ちゃぶ台の上の茶菓子は空を見つめた

#悪夢 #帝都 #雨

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?