清十郎、玄奘に問う

おやおや、誰かと思えば清十郎殿ではありませぬか、先の戦いでも、成果を上げられ、今は向かうところ敵なしと聞きますが、

いやいや、そんなことはないですよ、私は何もしてませんし、刀は錆びるばかりです

ほう、清十郎殿が謙遜とは珍しい
今宵は、どういたされましたか

はい、私も最近、真剣の果たし合いを随分していないこともあり、自分の腕が落ちてしまわないか不安であります。本来は私が、相手の大将の首を切り落としたいのですが、私も立場があり、そうそう戦には、加われません

ほう。そうですか、わたしには今のあなたが、あなたらしいとは思いますがね

和尚、そうでしょうか、私は怖いのです。いつか私より強い人間が現れてしまうことが、いつか斬られることが、、、

左様ですか、清十郎殿、では一度その辺りの山を見てごらんなさい

山ですか

目に見えるものとしたら、山がわかりやすいです、山は右肩あがりではないでしょう。頂上が来れば、次は下がります、どんな山もそうなるんですな、これが

はあ。今いち、わかりませんが、、

笑、そうですね、簡単に言うと良いことばかりは続かないということになります、形あるものは、頂上を境に次は、下降するのです、形ないものもそうなります、人をおもいやる気持ちも、ある時まで上昇し、頂上まで行くと、段々と冷めてくるんですよ、だから山みたいなところがあります、

和尚、では仮に頂上を極めて、その後、下降の落ち目の人間はどうすればいいんでしょうか

清十郎殿、連なっている山を見てください、ずっと下がってないでしょう、次の山の稜線は、右肩に、上がっているでしょう、永遠に下がることはないんです、この世には。

和尚、ではその繰り返しがあるとすれば、一度極めた頂上よりも2回目の挑戦が超えることも可能でしょうか

それはわかりません、二回目の上昇が一瞬で終わる人もいるでしょう、富士の山みたいに一回で終わる人もいるでしょう、それは本当にそれぞれなんです

では、私はどうすれば。

今の自分を見極めてください
上がっているか、下がっているかあなた自身がわかっているでしょう、それを見極め、時を待ちましょう、下がっている時はとことんさがりましょう、下がりきったら、必ず少しは上がります、それを大事にすれば、人生が少し分かるかもしれません

わかりました、山を一度見てみます
私の剣、折れるまでためすようにいたします、力が全てでは無く、力は数ある中のひとつとわかっているのですが

清十郎殿、前ばかりみないで、たまには振り返ってくださいね。

ありがたき幸せです

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?