リタイア
始まる前から、溜め息を連発していた
今日は無理かもしれないってことは自分が一番わかっていた
あの4年前の、情熱はどこにいったのか、真夏の走り込みはなんだったのだろうか
これから10時間以上走らないといけないというプレッシャーと、過酷な景色が脳裏に浮かんでくる
熱っぽい、仕事明けで寝ていない
筋肉痛など、あらゆる言い訳を浮かべて、また消して、また浮かべて、消して
スタートする前からリタイアする理由を考える人なんていないのではないか
できれば、このまま走らないで帰りたい
その想いがふつふつと、全身を覆ってしまった
会場の熱気が、まるで異国のお祭り騒ぎのようで、全く熱くなれない。
逆に、体が冷えていくばかりだ
眠たい、眠たい、フラフラだ
エントリー代なんて惜しくない
一年かけて、練習してきたのに
この急激に冷めていく感情は、なんなんだ。
やる気がなくなった、やる意味がわからなくなった
こうなると、もう回復できない
リタイアする言い訳をまた考える
カッコいい言い訳なんてない
もう走りたくない
残念ながらそう思ってしまった、心を変えることは、薬でも言葉でもプレゼントでもできない
心に膜がかかり、その膜は簡単に剥がれそうにない
リタイアする、そう決めた
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