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同規模クラブ 黒字の磐田、赤字の柏

 2015年度のJクラブ個別経営情報開示資料が公開されました。柏レイソルは、2010年度~2014年度の5年間赤字を出さずにきましたが、2015年度は3千8百万円の赤字となってしまいました。一方、柏レイソルと同規模クラブのジュビロ磐田は、7年連続黒字となり2015年度は4千8百万円の黒字でした。なぜ、ジュビロ磐田は黒字を出し続けることができ、柏レイソルは赤字になってしまったのでしょう。検証するために、経営情報開示資料を比較してみました。なお、なぜジュビロ磐田と比較したかは、柏レイソルと類似点が多く同規模クラブと判断したためです。類似点:営業収益・営業費用の額が同規模、収容人数が同規模のサッカー専用スタジアムを所有、一部上場企業がメインスポンサーでありクラブ運営会社はその企業の子会社、決算月が同じ、女子チームを持っていないなど。

それでは、先ず両クラブの2015年度と2014年度の経営情報をご覧ください。

損益総括

上記の表を見て頂くと、内訳の違いはあれど両クラブは経営規模が同規模のクラブだと分かります。

まずは営業収益を検証してみます。

①広告料収入:スポンサー収入ですね。2年平均の比較で、柏の方が磐田より3億8千7百万円高いです。2014年度と2015年度、磐田はJ2だったため広告料収入が下がったのも、これだけ差が付いた原因だと思います。
なお、営業収益に対する広告料収入の割合は、直近2年平均で、磐田が51.4%、柏が62.6%です。柏はスポンサー収入への依存度が高いですね。

また、『2017柏レイソル意見交換会第1回議事録』にある寺坂GMの発言で、日立から13億円、その他のスポンサーから6億円の収入だと分かりました。その他の6億円についても、日立グループの占める割合が高いということです。

なお、『2017柏レイソル意見交換会第2回議事録2』には、スポンサー収入は年々増加しており、営業努力をしていない訳ではないとの寺坂GMの発言もありました。

②入場料収入:これも、2年平均の比較で、柏の方が磐田より1億7百万円高いですが、広告料収入と同様に磐田はJ2でチケット代が安くなったためと、累計入場者数の差だと考えられます。
(下記表はホーム試合の累計入場者数)
客単価で見ると、磐田が約1823円で柏が約2050円です。

※2014年と2015年、磐田はエコパスタジアムでの試合開催はありません。

なお、柏の1試合平均入場者数は1万人未満です。リーグ戦だけなら1万人超えますが、それでもJ1で2年連続17位です。
これは、国立開催が無くなった影響が大きいですが、それが如何にアウェイ客の動員に頼ってたかの証明だと思います。
柏より順位がひとつ上の甲府と平均で2014年度は2千人、2015年度は1千人の差があります。
日立柏サッカー場の収容人数は1万5千人ほどなので、毎試合満席といかなくても甲府と並ぶ平均1万2千人ぐらいは目指したいところです。
甲府より人口の多い首都圏にあるクラブですしサッカー専用スタジアムなのですから。
それに、満席近くになる試合数を増やさないことには、客席数が不足してきたから増築・改修しようという話にもなり難いと思うので、私は入場者数の増加にもっと力を入れるべきだと思っています。寺坂GMにその考えは無いようですが…。

追記:2016年度のホーム平均入場者数
(リーグ戦17試合 ※磐田は内3試合がエコパ開催)   
 磐田14,611人(J1リーグ12位)
   12,812人(エコパ開催試合除き平均)
 柏 10,728人(J1リーグ18位)

③Jリーグ分配金:ここの差は、J1とJ2の差ですね。J2に降格すると1億円近く下がってしまう…。

④アカデミー関連収入:柏は育成つまりアカデミーに力を入れていますが、収入面でいうと磐田や他クラブに比べ、かなり低いです。アカデミー運営経費も低いので、問題はないのですが。
柏の場合は直轄のアカデミーのみの収支で、他クラブは提携しているアカデミークラブの収支も含んでいるのかもしれません。

⑤その他収入:ここに含まれるのは、主に賞金や移籍金、グッズの売上などです。この収入が磐田は柏の約2倍あります。2014年度は約3億2千万円、2015年度は約4億円も差があるのです。

賞金:この2年は両クラブとも大きなタイトルを取っていないので、多額の賞金は手にしていません。一番大きい額は、柏のスルガ銀行カップ優勝の3千万円でしょうか。磐田は2015年度J2準優勝で1千万円手にしています。

移籍金:2014年度に磐田が山田大紀、前田遼一、山崎亮平、金園英学ら主力選手の移籍があり、柏も田中順也(報道では移籍金20万ユーロ、約2400万円)、レアンドロ・ドミンゲス、渡部博文、橋本和らが移籍しているので、この移籍金がその他収入を押し上げていると思われます。
2015年度は、磐田は駒野友一が移籍。柏は工藤壮人、鈴木大輔、キム・チャンス、菅野孝憲、近藤直也ら主力選手が移籍しましたが、いずれも契約満了のゼロ円移籍なので、移籍金が発生したのはシーズン途中に移籍したレアンドロぐらいかと思われます。

グッズ収入:おそらく、ここが磐田と柏では大きな差があると思われます。磐田はオフィシャルショップを2店舗有し、選手別グッズなども充実しています。スポーツ誌の記事にもグッズ販売が好調だったと書かれてました。柏もグッズに力を入れ客単価を上げないと収入増は難しいと思います。

なお、柏の「その他収入」は、2015年度で甲府の1億8千4百万円に次ぎ、J1クラブで2番目に低い額です。

次に営業費用を検証してみます。

①チーム人件費:2014年度は柏の方が磐田より7億円も高いです。この時はJリーグでトップ3に入る高さの人件費でした。
2015年度、柏の人件費は前年より2億円弱低くなっています。これは、主に監督がネルシーニョから吉田達磨さんになり、コーチ陣もほとんどが内部の人に代わったためだと思われます。

なお、営業収益に対するチーム人件費の割合は、2015年度で磐田が42.2%、柏が62.5%です。2015年度J1のチーム人件費は平均約13億円で、営業収益に対する割合は平均約45%です。

また、柏のチーム人件費に関しては、寺坂GMが『2017柏レイソル意見交換会第1回』で詳しく述べていますので、そちらを参照してみてください。

②試合関連経費:柏の方が磐田より2年平均で約1億5千万円低いです。柏はスタジアムイベントをほとんど行っていないためかもしれません。
磐田は柏よりスタジアムイベントが多い印象です。2016年7月30日のJ1-2nd第6節ジュビロ磐田vs柏レイソルでも「~鹿児島デー【真夏の大決戦】~」と銘打ったイベントが開催されました。

③トップチーム運営経費:これは、磐田と柏で大差はありません。

④アカデミー運営経費:柏より磐田の方がかなり高いですが、アカデミー関連収入と比例してるので、相殺して比べると収支に大差はありません。

⑤女子チーム運営経費:両クラブとも女子チームを所有していないのでゼロです。

⑥販売費および一般管理費:柏より磐田の方が2億円ほど高いです。磐田はオフィシャルショップを2店舗運営してるため販売費が高いのかもしれません。
ヤマハスタジアムはヤマハ発動機(株)、日立柏サッカー場は(株)日立柏レイソルの所有で自前のスタジアムと言えますが、ジュビロ磐田の運営会社は(株)ジュビロなので、スタジアム借用費用をヤマハ発動機に支払っているのかもしれません。
なお、柏の「販売費および一般管理費」は、2015年度のJ1クラブで4番目に低い額です(柏より下は甲府、松本、湘南)。

柏は赤字のため、法人税および住民税がほとんど掛かっていません。所得税のように収入に対して掛かる税なので、収入が無ければ一部の税を除きゼロになります。

まとめ

・柏の営業収益の60%以上が広告料収入。
 そのほぼ全てが日立関係からの収入。

・柏のJリーグ年間入場者数は2年連続17位、ホーム年間入場者数の約1/4がカップ戦の入場者数。(2016年はJ1リーグ18位つまり最下位)

・柏はその他収入が同規模のジュビロ磐田より3~4億円も低い。2015年度のJ1クラブで2番目に低い額。

・柏のチーム人件費は、2014年度J1クラブ1位、2015年度J1クラブ5位。営業収益の60%以上を占める。

・柏の試合関連経費は、2015年度のJ1クラブで5番目に低い額。販売費および一般管理費は、2015年度のJ1クラブで4番目に低い額。

柏は、試合関連経費も一般管理費も他より安く済んでるんだから、他クラブより利益を出しやすいはず。試合で満足させる・観客増やすなんて幻想的なことをいつまでも言ってないで、もっと安定して観客とファンクラブ会員それとグッズ収入を増やす具体的な戦略を練って実行できるよう努力していただきたい。
「柏から世界へ」を唱うなら、国際大会が開催できるスタジアムに改修するぐらいの計画を立てて欲しいし、1千人2千人ぐらいの観客増やしても大して変わらないなんて考えてるなら何も変えられないし、世界で戦えるクラブになれないと思うのです。
あと、試合はメインであってサービスじゃありませんから。メインがもちろん一番大事ですけど、そこにどれだけの付加価値を付けて客に提供できるかがクラブの腕の見せどころなんじゃないでしょうか。
それに、このままだと赤字を出し続けることになってクラブ存亡の危機にも成りかねません。営業外収益が無かったら既に2年連続で赤字ですから。
いつまでもあると思うなスポンサーとファン!

以上!

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