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高級時計の経済性について(3)

高級時計って、満足するのが難しい。腕は2本しかないのに、何本も欲しくなる。どの時計もデザインや機能、材質などがちょっとずつ違うからだ。もっとも人によっては「ロレックスのデイデイト1本だけで満足」という人もいる。ある意味、羨ましいですね。ここでは「高級腕時計を何本も欲しがる人はどんな風に売り買いしているか?」を僕が知っている範囲でご紹介したいと思います。

よくある買い方の一つが、正規店で大人気の新品を買うもの。新製品に一目ぼれしてどうしても欲しくなり、予約して3か月とか3年とか待って手に入れる人。手に入れたら実はすぐに飽きてしまう、ということも頻繁に起きるけど予約が殺到している時計は中古市場でも大人気なので、ショップに売りに行っても「値落ち」がとても少ないか、逆に儲かることもある。

正規店で不人気の新品を買う人は僕は知らないです。

次は中古品を狙う人。中古品といっても時計はコンディションがピンキリで、傷だらけで壊れているものから新品同様品までいろいろとある。中古で買う場合は人気モデルを除き、だいたい定価の2/3~1/3くらいになっているので、コンディションの良い時計を買うことができると値落ちを最小限に抑えることができる。かくいう僕も、中古品をよく狙ってます。

中古品は中野や新宿の中古時計店の店頭や、ネットショップのWebページでみたり、ヤフオクのようなネットオークションで探すことになる。ただ今は情報命なので、中古時計店のネットショップページで発見して取り置きしてもらい、店頭に赴いて実物を確認してから買う…というのが仲間内での常識です。お店にふらっと入って時計を買うなんてことは、動きが激しいロレックス以外では少ないねえ。

中古時計店での買い物は保証がつく場合が多いので初心者でも安心。逆にネットオークションでは売っている人が個人の場合は、偽物や「写真と実物がまったく違うもの」が届いたり、そもそも届かなかったりする場合があるので注意が必要だ。消費税がつかないので安いんだけどね。ネットを介した個人売買の場合は、被害を受けても警察が被害届さえ受理してくれない場合が多く、多くは泣き寝入りになります。少なくとも現金で振り込むのは極力避けましょう。カード払いをすると、偽物が届いたり商品が届かなかった場合になんとなる可能性が「少しだけ」あります。

ネットオークションには質店などいわゆる「ストア出品」もあり、これは偽物が少ない(問題のある商品は少ないとは言えないけど)。高額商品が1円オークションにかかることもあるけど大抵は客寄せのためで、サクラのIDを使って値段を吊り上げて、終了するも「売買不成立」になることが多い。

僕が見たある福岡の質屋さんは、同じ商品をヤフオクと楽天の双方に出していて、ヤフオクは1円スタートしたけど謎のIDがどんどん入札して、終了価格が楽天の定価と同じになった…という冗談みたいな一件もあった。熱くなって無謀な入札を繰り返すと「楽天より高く買っちゃった」なんてことになるので要注意。事前に検索すれば、ストア出品の吊り上げ用IDがどれか…なんて検証しているサイトも見つかることが多いです。

最後は「高級時計が好きな人同士での個人売買」。実はこれが今回の本命です。僕たち高級時計好きは、よくオフ会とかで集まっては自慢の時計を披露している。特にブログやSNSで時計写真をアップしている人も多く、「おお、これが実物ですか!」と感心されるので気分も良い(笑)。

ブログやSNSをしていると、それが「時計好きとしての信用」となり、XXさんが大事にしているロレックスなら、間違いはないだろう。すげー欲しい。飽きたらぜひ譲ってください…なんてことになる。個人同士では現金決済が普通なので、オフ会では現金が飛び交うこともよくある(笑)。

「よく知っている個人」との売買のメリットは商品に間違いがないこと、そして値段がショップよりも安いこと、そしてちょっと脱税できちゃうことかもしれない。「脱税」というのは、要するに譲渡税のことですね。譲渡税は簡単にいえば30万円以上でモノを売った時、売却益が出たら支払う必要がある。控除は年間50万円までだが、注意しなくてはならないのは合算ができないことだ。

つまり時計Aと時計Bを売った時、時計Aは差損が-50万円出て、時計Bは利益が60万円出た。合算すると+10万円なので納税の必要がない…という訳にはいかない。時計Aの差損-50万は計上できず、個別の売買に対して売却益が出たものだけにかかってくる。本当を言えばブランド品の買取やネットオークションで不用品を処分した場合に、50万円以上の利益が出たら申告する必要がある。買取店では住所・氏名を控えられるので、その気になったら税務署は追徴できますな。たぶん。リシャール・ミルをクリスティーズとかで売ったら、税金が大変なことになりそう!

ところで現在、素敵な時計をたくさん持ってる人、SNSでいつも新しい時計をアップしているような人は大金持ちなのだろうか?僕の知り合いは普通のサラリーマンをしている時計愛好家がほとんどで、会社経営者もたまにいますがそんなに「大金持ち」はいない。

なのになぜ何十万円もする時計を頻繁に買い替えることができるか、といえば実は時計が安いときにしこたま買っているからです。5年前に20万円で買ったものが70万円で売れたりする。「時計高くなったなー」といいつつ、75万で買った時計が今度は80万円で売れたりする。

もともと時計が安いときにしこたま買って一種の「目利き」になっているので、相場が高くなってからも買い物に失敗しない。しかもコレクションの時計をばんばんSNSに上げているので、売る際にもまったく困らない。知人が好条件を提示してくれて、支払いも現金決済で問題なし。知人どころか外人から「For Sale?」とかメッセージがうざいほど届く。長くブログをやっている、ということはSEO対策もバッチリなので、「ロレックス サブマリーナ フジツボ」で検索すると、自分のブログがトップに表示されて複雑な気分になったりする。

こういうのは、インターネットならではの売り買いかもしれませんねえ。

だといって、良い事ばかりとは限らない。
実は一昨年から去年にかけて、僕の知り合いの時計好きブログがいくつも閉鎖されてしまった。理由は、某匿名掲示板で個人情報をいろいろと晒されたからです。やっぱり、時計をバンバン買っていると(特にロレックスのブログは)反感や嫉妬を買うようだ。実名や住所・勤務先まで透明掲示板でさらされることもあり、1サラリーマンにとってはデメリットしかない。個人情報を晒すと、その掲示板ではヒーロー扱いされるので、子供の学校や名前まで曝したりするほどヒートアップしていた。

なぜそんな個人情報が洩れるのか?と思ったのだけど、やっぱり「知り合い」から洩れていることが多いようだ。要するにオフ会の参加メンバーですね。その中で質の悪いやつが、友達を装って参加して個人情報を聞き出し、それを嬉々として書き込んじゃう。だから最近は「一見さん」はオフ会には参加させないことが多い。

またちょっと頭がおかしい人もいる。オフ会では大人しいのに、「僕たちはもう仲間なので、XXさんの時計を安く売ってください!」「どうして売ってくれないんですか!」なんてメールを何十通も送ってきたりする。そういう人は自分が非常識であることに気が付かず、売ってもらえない恨みから個人情報を洩らしたりする。まあそういうことをしでかした人は、「あの人はおかしいです情報」が仲間内に光の速さで伝達して、仲間外れにされちゃいますけどね。

最近は僕たちも慣れてきて、オフ会の度に架空プロフィールをいくつか用意して、「この情報が洩れたってことは、XXさんが怪しいね」なんて犯人探しもできるようになってきました。でもまあ、そんな気を遣わずに最初から好きな時計についてだけ話し合えるといいんだけどねえ。

「良い時計」は仲間内をぐるぐる回っていることが多いので、なかなか出てこない可能性があります。そしてその「仲間内」に入るのはなかなか難しい。長くブログやSNSをやっていると、お呼びがかかったりすることもあるけど、個人情報の漏洩と譲渡税には気をつけましょう、というのが今回のnoteの結論になるかな?まあ、そういう世界もあるというのを知ってもらえれば幸いです。


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