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DP-X1 MDR-Z1R バランス接続

新しいSONYのフラグシップ・ヘッドフォンMDR-Z1Rを以前製作したDP-X1-SONYバランス変換ケーブルでONKYO DP-X1に接続して再生してみました。ちなみにDP-X1のバランス再生モードはパワーのある「BTL駆動」にしました。また、192kHzにリアルタイムアップサンプリングしています。

意外と行ける...

意外というか、SONY渾身のフラグシップDAP・ハイレゾウォークマン®NW-WM1Zと再生クオリティはそんなに変わらないのでは?と思いました😅💦。どちらかというとNW-WM1Zの方が生楽器の演奏のリアルさや響きの良さがあるかなぁという程度の違いです。

さすがにDSDはDP-X1は単体ではPCMに変換して再生しますので、DSD音源の再生ではNW-WM1Zには及びませんが、一般的なPCMのFLACファイルのハイレゾ再生であればDP-X1MDR-Z1Rをバランス接続すれば十分事足りそうです。何せNW-WM1ZNW-WM1AよりもDP-X1や今度10月末に新しく出たDP-X1Aの方が定価ベースで比べても安価ですから、そのコストパフォーマンスたるや恐るべしです。

何故SONYは4.4mm5極バランス端子にしたのか?

4.4mm5極バランス端子は今の所SONYしか採用されていません。JEITA統一規格なので、今後採用されるメーカーが増えるかも知れませんが、どうもこの端子は一般的でないためか、コネクタ自体が原価で5000円くらいするらしく、高いのでどれだけ普及するか未知数です。ここからは想像ですが、SONYが2.5mm4極バランス端子を採用すると、今回のMDR-Z1RをONKYO DP-X1に接続可能となり、すると思いの外高音質に再生できてしまうので、NW-WM1シリーズの売上げに影響すると考えたのではないか...なんて邪推したりします。SONYの主張としては、2.5mm4極バランスは端子の非接触面積が狭いので音質に良くないから4.4mm5極にしたということですが、現に2.5mm4極バランスでも高音質再生が可能なのはONKYO DP-X1シリーズやAstell&Kern AKシリーズでも実証されていますので、少なくともこれは理由としてはないなぁと思います。

SONYのデジタルアンプ・S-Masterとは?

SONYのハイレゾウォークマン®は伝統的にフルデジタルアンプ・S-Master HXを採用してきました。このS-Masterの源流は往年の名CDプレーヤー・CDP-X555ESに採用された1bitパルスD/Aコンバーターに辿ることができます。要はPCMデータを高周波の1bitパルスデータに変換した信号をデジタルのまま電圧を大きくして増幅してしまうのがS-Masterです。デジタル増幅のため歪みの発生も極めて少なく高音質に増幅できますが、弱点は高周波ノイズに弱いのと、あまり大きく増幅できないことです。このあまり大きく増幅できない欠点を克服するため、S-Masterではパルス密度変調(PDM)ではなくパルス幅変調方式(PWM)で増幅率をかせいでいますが、これがパルス密度変調方式(PDM)であるDSDと相性が悪く、長らくDSDはPCM変換して再生するしかありませんでした。

それが、今回のNW-WM1A/WM1Zになり、バランス接続に限りますがDSDのネイティブ再生にようやく対応しました。下の図はS-MASTER HXのブロック図です(SONY公式ページ http://www.sony.jp/walkman/products/NW-WM1Z/feature_1.html より)

ポータブル機器でのS-Masterの限界?

パルス密度方式で増幅率を稼げないのは、01信号の繰り返しが最大で(1が連続してしまうと直流信号になってしまうので)、最大電圧の半分しか電圧が取れないためです。パルス幅変調ですと、ある程度最大電圧で幅が取れますので、最大電圧により近く電圧を取れます。

ただ、今回パルス密度変調のまま増幅するルートも取りましたので、DSD再生ではあまり増幅率を稼げなくなってしまいました。実際NW-WM1ZでのDSDのネイティブ再生では、最大ボリュームの120に対して、ハイゲインで少なくとも100くらいに設定しないとMDR-Z1Rでは十分な音量で再生ができません。音源の種類によっては110くらいに設定する場合もあるので、ほとんど最大音量近くまでボリュームを上げている感じになります。なお、PCM再生ではMDR-Z1Rではハイゲインでだいたいボリュームが80くらいになります。アンプの出力はインピーダンス16Ωで250mWですからもっとボリュームが取れそうなものなのですが、DSD再生のことやPCM再生とのバランスを考えるとこのあたりが妥協点なのだと思います。

ポータブル機器では搭載できるバッテリーにも限界があり、今回頑張って大型のLDOレギュレータを3個も搭載して電圧を稼いでいますが、あまり電圧を高く取り過ぎるとバッテリーの持ちにも影響しますので、バッテリーの持ちと音質と最大ボリュームのバランスをとった結果が今回の製品ということなのでしょう。逆に言えばこれがポータプル機器でのS-Master方式の限界と言えるかも知れません。

その他にも他社製品と比較して厳重すぎるシールドも高周波ノイズの混入を避けるためと思われます。NW-WM1Aも基板の表裏に銅プレートを配置して挟み込む上にさらに無垢のアルミ削り出しボディ或いはNW-WM1Zにおいては無垢の無酸素銅削り出し金メッキボディで包むという念の入れようを見るとメガヘルツ帯の高周波のスイッチングで信号増幅してそれを基板の中のローパスフィルターでアナログ信号に戻す過程でのノイズの混入を極力抑えるためと考えられ、ここが一般的な汎用DACに低周波のアナログ増幅回路を組み合わせる他社製品との決定的な違いであり難しさなのだろうと思います。

今後はDAPでS-Master方式は厳しい可能性が

今回は何とか目標を達成できましたが、今後他社が高性能汎用DACと低歪みの高性能アナログアンプでPCMとDSDのネイティブ再生が可能なポータブルデジタルオーディオプレイヤー(DAP)を出してくると、さすがのSONYも厳しいのではないかと思います。現に(株)ベンチャークラフトからSounDroid VALOQという、PCM44.1kHz/16bit~384kHz/32bit、DSD 2.8MHz~11.2MHzまで再生可能なDAPが既に出ています。

このSounDroid VALOQですが、DACにAK4490を採用しており、2.5mm4極バランス出力対応で、音質もなかなかのものです。惜しいことに液晶画面の解像度が低く、タッチパネル非搭載で、昔ながらのジョグシャトルボタンでの選曲でユーザーインターフェースが今風でないのが残念なのですが。この機種はアナログのオペアンプを自分で交換できるようになっているところが面白い所です。

ということですので、高性能DACと高性能アナログアンプを駆使すればかなり良い製品が仕上がりますので、SONYもS-Masterにはこれまで長年育て上げてきたこだわりがあるようですが、よほど心してかからないと他社製品に水をあけられる可能性もあります。

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