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定食

月に一回程行く定食屋さんがある。いつも夕飯の時間に行くのだが大概混んでいて店頭で中を覗き入るかどうか定める。混んでいたら諦めるし空いていそうなら入る。絶対に食べたいほどではないが食べると満足度は高い。今日は空いていそうだったので中に入る。この店は美味しいし、接客も悪いところはなかったが、ずっと抱いていた違和感というか居心地悪さをようやく知ることができた日だった。

どこらへんに違和感や居心地悪さを感じていたかと言うと、カウンターと厨房の間隔が近くて困る。そう常日頃、思っていた。間隔が近いからといってだからなんだと聞かれても、具体的にあるわけではないが困っていた。

今日も困るなあと思いながら下を向きながら定食を食べて行く。食事中はスマホをいじるタイプではないのでどの飲食店に入っていてもほぼ食べながら、壁に貼ってある献立表やら厨房で調理しているところを見たりしている。まれにボーッとどこを見るわけでもないとかもある。キョロキョロ目線を動かしたり一点を見つめたりさまざまだ。

でも今いる定食屋さんではそれはしない。美味しんだけどなあ、何か下向いちゃうなあといつも通り感じていると、シュピンッとさながらコナン君が何かひらめいた時のように脳に光の矢が突き抜ける。

僕はキョロキョロするからといって物には目は行くが、人には目は行かない。人間観察なんてジロジロするのも嫌だしされるのも嫌だ。よく考えるとここの椅子の高さと厨房の高さは店員さんと目が合いやすい、ここに居心地の悪さがある。という結論が味噌汁を啜っている途中で出た。

店員さんの接客が悪いわけでも、僕が気にしいなわけでもない。詳しいことはわからないが心理的な抑圧がこの空間に生み出されているのである。酒場ではなく定食屋さんなので一度頼めば店員さんを呼ぶことは滅多にない。ピッチャーも置かれていて水の補給に困ることもない。なのに顔を上げると目線はいつでも互いにロックオンされる。ああ困った、何が困ったかかがわかったが解決はしていない。美味しいから再び行くんだろうけど、困りながら食べるのも、もう辞めにしたい。ほなまた。

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