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「これで、/名前シレズ」のお話

お疲れ様です、佐藤乃子です。ボカコレに参加したボカロP、リスナーの方々、お疲れ様でした。今日は、The VOCALOID Collection Spring2023 ルーキー部門参加作品「これで、/名前シレズ」についてのお話、ボカコレに初めて参加してみての感想なんかをだらだらと書き連ねようと思います。拙い文章ではありますがどうぞ最後までお付き合いください。

少々重いテーマを扱いますので、苦手な方はお気を付けて…

「これで、/名前シレズ」のテーマ

いきなりですが「希死念慮」ってご存じですか。簡単に言うと、特別理由は無いけれど、なんとなく死んじゃいたいと願う状態です。似た言葉で「自殺念慮」なんかもありますが、希死念慮は「消えたい」「楽になりたい」「いなくなりたい」が主な感情。とは言っても、人間誰しも死に対して少なからず恐怖を抱いていていますから、本音を言えば死ぬのは怖い。でも消えたい。居なくなりたい。そんな状態が「希死念慮」です。
何故この様な話を冒頭に持ってきたかと言いますと、何を隠そう「これで、」のテーマが「希死念慮」だからです。

「これで、/名前シレズ」の歌詞と映像

※普段は作品には受け取り手によって、それぞれ受け取り方があると考えているため、私から解説などはせず受け取り手に全てを委ねています。ですので、あくまで一つの解釈の仕方だと思って参考程度にお読みください。もし貴方が違う解釈をしていても、それも一つの答えですので大切になさってください。

ひとり 眠る 僕が消えてく
あした 此の儘 起きれなければなんて...
愛だとか 恋だとか もう如何にもかうにもなりはしないのにな
「嗚呼 またやっちゃった」受け取れない愛情だった。

「これで、/名前シレズ」Aメロ抜粋

テーマを知ったうえで見るとストレートに意味が伝わる歌詞ばかりですね。
"愛だとか 恋だとか"人間の美しくも汚い部分への感情や、
"「嗚呼 またやっちゃった」"繰り返す失敗への感情、限りなく後ろ向き、抜け殻のような言葉たちを歌詞に落とし込みました。
映像では常に消えかかった電球がチカチカと点灯していますが、暗号では無く純粋に消えかかった命の比喩です。

拝啓、君へ 大人になれない人生でした。
偽って壊した。いつになれば「本当」に成れますか?
拝啓、君へ 目次も要らない人生でした。
映画のワンシーンように綺麗な侭で

「これで、/名前シレズ」一番Bメロ抜粋

解釈が分かれそうなBメロ、"拝啓、君へ"の「君」ですが、私は親を指していることを想定し、歌詞を書きました。小さい頃から見てきた「大人」という存在の代表とも言える親に対して、自分の存在を問いかける。そんな詩を書き表したいBメロ部分でした。家族である人間にも自分を偽り、本当の自分は何処に居るのかわからない、Aメロ同様にマイナスな表現が多い印象です。

消えちゃった聲は世界の隅で
誰も知らない ゆめだったみたい
生まれ変わったら何に生ろうか
思いついたら「僕」はもう終わりにしよう

「これで、/名前シレズ」一番サビ抜粋

"消えちゃった聲"とありますが、この聲は「声明(せいめい)」の意で使用しており、「生命」とも掛かっています。なにかを訴えたい、伝えたい…そんな想いも誰にも気付かれない儘、夢のように消えていく。そんな世界ならばいっそ生まれ変わってしまおうという、放任的、楽観的、世間への諦めが込められたサビとなっています。A・Bメロとは異なり、マイナスな感情から根本的に諦めの感情へと変化しています。

再啓、君へ 只管消えたい毎日でした。
いつだったってわかってる。これが本当の僕じゃないことも
再啓、君へ 明日が要らない毎日でした。
映画のラストシーンように綺麗な侭で

「これで、/名前シレズ」二番Bメロ抜粋

サビ部分に覆いかぶさるように挿入された二番Bメロ。此処でも「君」は親を指しています。
"いつだったってわかってる。これが本当の僕じゃないことも"一番Bメロへの自問自答になっています。
"映画のラストシーンように綺麗な侭で"苦しみながら死んでしまう位ならば、綺麗な場所で、綺麗な造形を保った侭、消えてしまいたいという心の叫びと共に間奏へと向かいます。映像、音楽共にこだわって制作した部分でもあります。

映像では間奏直前に"沢山の命がなくなりました""幸せに暮らしましたとさ、めでたしめでたし"と表記されますが、これはハッピーエンドと謡っている作品でも誰かは不幸を被っていることに対してのメッセージです。主人公と呼ばれる人物だけが幸せに暮らし、悪者と呼ばれる人物達は幸せにはなっていない作品を見て手放しにハッピーエンドと呼ぶ人達に向けた演出です。
一瞬ではありますが他にもセリフが表示されていますので、是非自分の目でお確かめ下さい。間奏部分の字幕も一部、niconicoとyoutubeでは相違点がございますので探してみてはいかがでしょうか…。

消えてしまいたい
遠くへ行きたい
溶けてしまいたい
素直になりたい
生まれ変わっても僕がいいかな
聲が掠れる 僕はまだ

「これで、/名前シレズ」Cメロ抜粋

真っ直ぐな歌詞であり、意味も歌詞通りです。サビ部分で諦めを口にしていましたが、本音では死ぬのは怖いし、自分が嫌いな訳でもない。しかし、人生の時間は決まっている。外灯は殆ど消え、映像も乱れ始め、少女の姿は消える。そのままの意味ですね。以降、少女が映像に映ることはありません。

消えちゃった聲が世界の所為で
何も知らない 誰かの所為で
無くなった聲は誰かが埋めた。
生まれ変わったらまた会いましょう 
 
消えちゃった聲は世界の隅で
誰も知らない ゆめだったみたい
生まれ変わったら何に生ろうか
思いついたかい?
ならばもう終わりにしよう

「これで、/名前シレズ」ラスサビ抜粋

二度目の転調と共に最期のサビへ突入します。
"無くなった聲は誰かが埋めた。"誰かが消えても誰かで埋めて廻っていく世界であることを最期のサビに込めております。映像の字幕でも、「聲」が消え「■」で埋められてしまうという演出がございます。いくら重要な人物であっても悲しいことに無くなっても替えが効くものですからしょうがありません。
後奏部分にモールス信号を隠したのですが、niconico動画で解読されてしまっていました。(よく聞き取れましたね、ご名答です。)
コメント欄を見ると書かれていますので、気になる方は是非見てみてください。

最期に…曲名についてですが、「これで、」の続きは動画時間に繋がっています。(youtubeでは何故か3:16にされてしまうのですが)3:15で、「さいご(315)」
本来の曲名は「これで、さいご」ということです。ここまで解説してしまうと面白みにかけますが、とてもわかりやすい仕掛けなので隠す必要もないかなと…

長々と語りましたが、以上が「これで、/名前シレズ」のお話でした。
是非この考察も踏まえ、もう一度作品をご覧になってみてください。


ボカコレの感想

曲の考察を長々と書いてしまったのでおまけ程度に、初参加したボカコレの感想をぶら下げておきます。
結論からいいますと、悔しいというのが素直な感想です。建前無しに普段は数を気にせず、作品を制作している私ですが、順位が付く催し物に参加して結果を残せなかった事に関しては実力不足を感じます。もっと元々の知名度があれば…と幼稚な思いも少々ありましたが、そういったものを度返しに結果を残せるのが本当の実力だと考えておりますので、素直に悔しいです。
しかし、悔しいの一言で終わらせてしまうには余りにも勿体ない経験ですので、自分の現在地を知ることが出来た、普段より多くの人にフィードバックを頂けたことに関しては喜びと感謝を感じております。拙作ではありましたが、コメント、マイリス、いいね、共有して下さった方々、本当にありがとうございました。いちリスナーとしても素敵な作品に多く触れることが出来て、改めて素敵な文化であると再確認できました。
活動開始から丁度一年、youtubeチャンネル登録者も1000人を突破し、節目を迎えましたがあくまでただの一般人ですので変わらず好きなように活動させて頂きます。今後も佐藤乃子のアーティストごっこにお付き合い頂けると幸いです。

長々と読みにくい文章で時間を奪ってしまい申し訳ありませんでした。
次回の記事こそは、vstまとめますので少々お待ちください。
以上、佐藤乃子でした。

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