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チキンラーメン作り手の情熱。安藤百福の人生

現在NHKの朝ドラ『まんぷく』でスポットライトが当たっている安藤百福という方がいます。

数々のカップラーメンを出している日清食品の創業者で、47歳でチキンラーメンを発明したというすごいお方(2007年に、96歳で亡くなられたそう。つい最近までまだ実在されていたということにも驚きです)。

そんな安藤さんの著書、『魔法のラーメン発明物語 私の履歴書』を読み、作り手の情熱を垣間見ました。


食に目覚める原体験

紆余曲折を経て、無実ながら40日以上も幽閉されて絶食となった経験や、戦後街中に広がる飢餓を目にした体験から、人にとっての「食」の重要性に行き着いたそう。

極限になれば人間の本質が見えてくるという。この時、私の心は、何か透明な感じで食というものに突き当たった。人間にとって、食こそが最も崇高なものなのだと感じられた。
終戦から一年余りを過ぎても街にはうつろな目をした飢餓状態の人があふれ、亡くなったばかりの餓死者が道端にうずくまっていることもあった。「やはり食が大事なんだ」と思った。「衣食住というが、食がなければ衣も住も、芸術も文化もあったものではない」。


不屈の精神

そんな原体験から、食に関わる事業を起こそうと、塩を作る事業から始め、一定の成功を納めたそうです。ただ、また不遇な出来事によってが、全財産を失ってしまいます。

妻子をもちながら、齢40歳を超えて全財産を失うことが、どれほど辛い出来事か...苦悩に打ちひしがれる日々だったと思いますが、安藤百福はそんな状況にも一切屈しない。

私は過ぎたことをいつまでも悔やまない。「失ったのは財産だけではないか。その分だけ経験が血や肉となって身についた」。ある日そう考えると、また新たな勇気がわいてきた。

そんなゼロリセットされた状況から、チキンラーメンの研究・開発を始めます。結果1年後にチキンラーメンを開発するのですが、その情熱に驚かされます。

まったく手探りの状態で研究を始めた私は、たった一つ天井からさがった四十ワットの裸電球の光の下で、チラシに思いついたことをメモしては壁に張った。朝五時に起きるとすぐに小屋にこもり、夜中の一時、二時になるまで研究に没頭した。睡眠は平均四時間しかなかった。こんな生活を丸一年の間、一日の休みもなく続けた。


圧巻した生き方

このエピソードは、自分にとってただただ圧巻でした。理由は、酸いも甘いも体験した47歳からの挑戦だったこと。もう1つは事業と人にとっての時間の長さの違いを感じることです。

酸いも甘いも体験した47歳からの挑戦

若い時期から実業家として大きな成功を納め、裕福な生活を体験し、家族もいました。成功も約束されていない、まったく未経験な領域に飛び込まなくても食うに困らなかったはず。

そんな状況にも関わらず、食が大切なんだと挑戦する人生はただただ脱帽してしまいます。

事業と人の時間の長さの違い

また、事業や研究開発は、時代が来るタイミングなどもあるため、成功に至るまで数年の誤差は必ず発生してしまうものです。

ただ、その数年は人にとってすごく長い。キャリアのこと、結婚や育児のこと。多くの変化やプレッシャーが押し寄せてくるものです。

安藤百福は、これだけの努力を1年間休みなく行なったことも驚異的ですし、当事者にとって1年という期限はなく、終わりの見えない日々だったはず。

それを一文無し、知識もない、道具すらない。そこからやり遂げてしまうんですよね。これだけの情熱や行動に圧倒されました。

「チキンラーメンを発明した瞬間はどんな気持ちでしたか」とよく聞かれる。しかし、これという決定的な場面は思い浮かばない。失敗を繰り返しながら、しかし、少しずつ前進していることはわかっていた。その先のわずかな光を頼りに、進み続けるしかなかったのである。


安藤百福に見る生き方

最終的にチキンラーメンを発明し、カップヌードルを発明し、今の日清食品の規模まで成長させた安藤百福。

彼の生き方を見るに、研究者であり、経営者であり、実業家だなと思いました。

20代から様々な事業を手がけ、40歳を超え、一文無しになっても、社会を良くするんだ!という思いから挑戦を続け、チキンラーメンやカップヌードルを発明する。

通常ならば、1つの研究開発を成功させるだけでも余りある人生と思えますが、特許取得や事業撤退などの会社の経営まで及ぶほど、広範囲に及びます。

誰よりも思いをもち、不屈の精神で行動し続ける。

小さな頃から見慣れていた、あのチキンラーメンの裏側に、信じられないほどの情熱を感じられて、ついチキンラーメンを買ってしまいました笑

衣食住から車や電車、インターネットのサイトなど、日々触れているものすべてに、誰かの情熱が詰まっていると思うと、1つ1つが尊いですね。

自分が日々お世話になっているものの裏側に、どんな意匠が詰まっているか気になってしまう一冊でした。


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