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興味深い寄付の実験と無力感の話

駅前などでは
たまに寄付金を募っている。

時には飢餓に苦しんでいる子供、
保健所の動物、
災害で困っている人々。

そうした行動はであり、
とても立派だと思う。

しかし、私には昔から
ある疑問があった。

なぜ一人のエピソードの方が
心に刺さるのだろうか。

つまり、何万という人が
苦しんでいるという情報よりも
一人のエピソードの方が
心に刺さるということだ。


人間は数字に同情できない。

ひょっとすると、
大勢が苦しんでいる情報は
我々には数字にしか見えない
可能性がある。

そんなことを考えていると、
ある興味深い実験を見つけた。



ダニエル・ヴェストフィエールら
心理学教授による研究チーム。

彼らは対象となる事象の大きさと
実際の行動に関する実験を行った。

片方の実験参加者には
飢餓に苦しんでいる少女の話を。

もう片方の実験参加者には
先の少女の話に加え、
そのほかの何百人という人が
同じ境遇にあると説明した。

その後寄付を募って
そのデータを比べてみた。


皆様は実験の結果が
どうなると思うだろうか?

単純に考えるのであれば、
数が多い方が寄付も
多くなりそうなものである。


だが、実験の結果は
後者のグループの寄付額は
前者の約半分だったそうだ。

つまり、規模が小さい方が
寄付が募ったのだ。


この結果から教授達は
ある考えを導いた。


一つ目は無力感だ。

一人の少女を救おうとするのは
自らが良い気持ちになり、
温かい気持ちになるからだと。

しかし、対象が何百人になると
無力感を感じて行動に移せない。

まるで若者が選挙で
投票しないのと同じロジックである。つまり


二つ目は正負の感情における関係だ。

教授によると、
負の感情は正の感情を打ち消す
と指摘している。

先の実験で、実験参加者は二つの感情に
苛まれていただろう。

少女を助けたいという感情と
自分には何もできないという感情だ。

まさに正負の関係だが、
無力感に襲われても
寄付はできるはず。

では、なぜ寄付をしなかったのか。

それは助けたいという感情が、
無力感によって打ち消されたのだ。

このことを教授は
「効率性」によるものと指摘。

もし脳が非効率的と判断すれば、
行動するモチベーションが
低下してしまう。

自分が寄付しても、
数百人を救うのに効率的かを
先の実験では考えてしまったのだ。

その結果、寄付の割合が
大きく下がってしまった。



この実験は非常に興味深い。

一人というミニマムな視点なら
助けるという感情に支配されるが、
大勢になると無力感でできなくなる。

一人のエピソードの方が
心に刺さるのも納得がいく。

この考え方からいくと、
寄付を募る時は
小さい事象で説明した方が
効果的であると言える。



ここからは私の推論だが、
この考え方は他のことでも
応用できると思う。

例えば、実験の説明時に
述べた選挙。

まさに「国」という大きな事象
無力感を抱いてしまっている。

実際は投票しないことには
何も始まらないのに。

政治への関心の低さもあり、
若者の投票率は悪い。

その結果、投票率の高い
年配者に優しい政策になっていく。

無力感からなる負の連鎖だ。


さらに、新しいことを
挑戦できないのも
この考えで一部説明できる。

できない理由としては、
変わるのが怖い、面倒、
無力感だと考える。

人間は未知に恐怖を感じる。

そのため恐怖を覚えるのは
正当な理由だ。

面倒と感じるのは、
何かをやらない言い訳を
勝手に考えてしまうからだ。

そして、何もしないのだ。


最後に無力感。

これは始める前に、
その行為を全体で捉えるため
不可能に思えてしまうことから
やめてしまう事だ。


こんなことがあった。

昔、友人にジムへ行こうと誘われた。

しかし私は断った。

筋トレ自体は興味があったが、
あんなに鍛えられない、
持ち上げられないと思ったからだ。

皆様も似たような経験は
ないだろうか?

私にはあんなことは
できないと思ったことが。

確かにあんなに重いものを
持ち上げることはできない。

だが、それは当時の私が
心配することではない。

なぜなら、いきなりそんな無茶は
するはずがないからだ。

初心者ならば、
できる範囲からやっていく。

できることを積み重ねて
ようやくそこにいけるのだ。

つまり、上級者のイメージに
私は無力感を感じてしまったのだ。

スポーツを始めるといっても、
プロの動きを最初から
求められることはない。

料理を始めるとしても、
三ツ星シェフのように振る舞え
とはならない。

この事に私は気づけなかったのだ。



これらを踏まえると、
無力感は相当に危険だ。

ポジティブな感情を打ち消し、
行動をしにくくなる。

もしも無力感を感じても、
冷静に考え直して欲しい。

ミクロな視点で見れば、
無力に感じることも
案外大したことではないかもしれない。

皆様も無力感には
支配されないようにすべきだろう。










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