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Hさん、この気持ちのいい感じ、楽なからだの動き、忘れないでね

Oct 3, 2005(楽天blogより)

Hさん、この気持ちのいい感じ、楽なからだの動き、忘れないでね

精神科のデイケアーに参加されている人たちの中には
鬱病の人も多くいらっしゃいます。
今働き盛りの男性の自殺者が年間3万を超え、
年々増えているとも報じられています。

押し寄せてきた能力社会の中で必要組、不必要組と
振り分けられて、不必要組に括られてしまった人たちが
自殺者の数字を上げているという指摘もあります。
そして社会がもう少しゆったりして懐を大きくすることが、
この深刻な不幸を打開する道だとも言われています。

Hさんはそんな社会状況の中で頑張り続けて
鬱病になってしまった人です。
デイケアー利用で立ち直って、十一月から職場に復帰するべく
準備中です。

体操のレッスンを通して解ったことは、Hさんだけでなく
彼らは総じて真面目で誠実です。
からだの動きも又頑固なぐらい真面目で、融通が利きません。
伝え手の話を聞き、動きを見てこれが目標や理想と決めると,
そこに到達しなければならないと頑張ります。

ところで野口体操は彼らの最も不得意なことを
大事にしています。
野口体操はつたわりの体操です。
力を抜かなければつたわりません。

空いているところがあってこそ
「つたわり・ながれ」ることができるのです。
働く力は少しで、休んでいるところが多ければ多いほど
効率の良い仕事(動き)が出来ます。

頑張らないこと、力を抜くこと、空けること、休むこと
自分に見合った目安を立てること…
みんな彼らは不得意です。

誠実な気持ちが彼らを追い込み、頑張らせるのでしょう。
しかし繰りかえすうちにHさんのからだは少しずつ
変わってきました。
からだの中に、「つたわり・ながれ」ができてきたのです。
からだが欲しがっていたのは
今までのやり方ではなかったことの証です。
気持ちよくやりたいことが出来る・・・

「自分を大事にしようかな…と思います」

Hさんは終わりのミーティングでテレながら言いました。
Hさん、この気持ちのいい感じ、楽なからだの動き
忘れないでね。



「頑張り」 の美意識 から 
 「したたか(下確〜したたしか)」の美意識へ
               (野口三千三)



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