死産を乗り越えて④

先生の言葉を聞き放心状態になった僕は、


先生に診てもらったお礼も告げずに診察室を出た。


先生が悪いわけでもなんでもないのに…


診察室からでたら、赤ちゃんが生まれてくるのが楽しみにしている


妊婦さんがにこやかに座って談話している。


診察室とは打って変わって、ハッピーな雰囲気だ。


僕の心情も知らずにこの人たちはニコニコしている。
とすら思った。


しかし、待合で座っている妊婦さんがこっちをみた瞬間なにかを悟ったのか、待合室に重い空気が漂った。


もしかしたら、僕の勘違いかもしれない。


勘違いかもしれない。


今となっては確認しようもない…

そして、待合に座ると窓からみえる景色も一変していた。


雨というより土砂降り。


雨の音がザーッと病院内まで聞こえてくる。


席に一人ですわっていた僕は、


診察室では我慢していた涙が、一気に溢れてきた。


診察室では心配させまいと、不安にさせまいと、耐えていた涙が


1人になった瞬間


外の土砂降りの雨のように溢れる。


ほかの妊婦さんに気づかれないように、声を抑えるように…


でも、声すらも抑えることができないかった。


涙が流れるたび


「ヒク! ウッ ヒクッ! …」


大の大人が声を出して泣き続けた。


万に1人という病気に


なんで宝くじも当たらない俺が…


そんな確率で、こうならなければいけないのか。


自分を恨んだ!憎んだ!


一向に涙はとまらない。


その日は、病院を後にし


今度は紹介された病院で入院し、子供を下ろすことになる。


しかし、こころにキズを負ったのは、本当は僕ではなかった。


⑤に続く


美容師の価値を高め、美容師として多くの人に幸せをお届けできるようにしていきます。