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160924 犬島

瀬戸内海に行く気になったきっかけは犬島だった。有名な直島じゃなくて犬島に行きたかったのは、とにかくこの近代化遺産の精錬所跡地を見てみたかったから。

この写真を見てそそられない人がいようか。

当初の予定では豊島、犬島を一日で回って、倉敷観光に行くつもりだったのだけど、天気予報がイマイチで、豊島、犬島を2日に分けた。結果的にはこれが大正解。豊島は一日ではとても回りきれない素敵な島だったし、犬島は別の意味で、慌ててまわるのは勿体無い島だった。

島に着いたらとりあえずは、この精錬所美術館に入ることになる。少しずつ人数を区切って入場することになるのだけど、それはこの美術館の建物じたいの仕掛けに依存してる。できるだけ前後の人と間隔をあけて、長い廊下の曲がり角ごとの発見を楽しむのがいい。

私は後ろから一秒たりとも黙ってられない系のバリバリ関西弁の女の子二人組が来てて、あまりにもうるさかったので一度逆走してやり過ごしちゃった。シーズンには船が二往復するぐらい人が来るそうですが、なるべくオフシーズンに行くことをお勧めしたいです。てか人のいない時期にもう一度行きたい。

館内は写真撮影禁止なので絵葉書です。

メインの展示室を出ると、お目当の廃墟に進むことができる。アップダウンがあって、小さな丘の上からは、この島が採石場だった時代の名残の貯水池も見える。

崩れた煙突。

パノラマ写真撮ってみた。

精錬所美術館では、週末限定という話だったが、島民のボランティアのおばあちゃんが精錬所の話をしてくれる。おばあちゃんがまだ子供の頃の記憶だ。私はグループの人たちがいなくなったところで一人で行ったので、質問しながら色んな話が聞けて面白かった。

黒いレンガの廃墟のところには職人さんたちの休憩室があったのだとか。

質問した話の中に、犬島の名前の由来がある。犬がいっぱいいるのかなと思ったけど犬も猫も見かけなくて、どうしてかなと思ったのだ。

おばあちゃんが教えてくれたのは、菅原道真が都を追われ太宰府に流されたときに、船で瀬戸内海を通ったんだけど、そこで嵐にあって、あわやというときに犬の鳴き声がして、その声を頼りに島に着いて嵐を避けることができた。それが犬島で、道真公が昔飼っていた犬の魂が助けてくれたから、みたいな伝説。

犬島は1時間半ぐらいあればぐるっと一周できてしまうような小さな島なのだが、島の美術館や港のある位置の正反対ぐらいのところに、小さな「犬ノ島」という別の島があるのだ。その島の頂上に、座った犬の姿に見える「犬石」という岩があって、そもそも島の名前の由来はこの石にあるらしい。名前が先か伝説が先か、そのへんのところはよくわからない。

この手の民話や伝説は、関東人からするとそそられるものがある。「京都から流されるときにこの辺を通って…」的な位置関係にリアリティがあるのが羨ましい。

私は島内アートにはさほど興味がなかったので、昼ごはんのあとは、その犬ノ島でも観に行こうかと思って、グーグルマップを頼りに歩いてみた。

ちなみに、通りすがりで見た島内アートはこんな感じ。

これはわりと面白かった。レンズを使った作品。

これは回廊みたいになってるけど、中を歩くより遠目に見た方が綺麗。

こんな感じのアート作品巡りをしてる人たちから離れて、まるで人のいない島の中の道を、島の裏側目指して歩いてみた。

豊島とはサイズ感も全く違う島だけど、歩いていると、余計に違いを感じる。豊島は農業や畜産業のある島だった。でも、犬島は、そもそも古くから御影石をとるための採石業の島。ここで採られた石が大阪城で使われてたりする。漁業も農業も、もともと本格的産業ではなかったのだそうだ。

美術館になっている銅精錬所は、たった10年の操業で停止。でも、その程度で止まったから、自然が破壊されずに済んだとも言える。

この島で産出される犬島石っていうのはこんな石。大阪港の築港時にも沢山の犬島石が運ばれていったそう。
http://www.nakaseki.com/inujima.pdf

ベネッセの資本が入ってこの精錬所跡地が整備されるまでは、キャンプ場が夏の間岡山など近郊の人たちに利用される程度で、遠方から観光客が来るような島ではなかったようだ。あとはドラマや映画のロケ。西部警察やカンゾー先生など。

つまり、この島は、そのままだったら(日本の小さな島の多くがそうであるように)住民が年老いて、やがて放棄されて無人島になる島だったんだよなぁ、と思いながら、人気のない島の道を歩いていた。船着場近くやアート作品が並ぶ界隈の喧騒が嘘のような静かな道。

豊島では、アートは人の暮らしの隙間に入れてもらってる感じだった。犬島では、その雰囲気はちょっと違う。もっと、行ってしまえば暴力的に島を侵食してる感じがする。ヒトの気配のない、モノの世界をモノが侵食してる感じだ。

こういう強い化学反応って、例えば10年先にこの島をどうしているのかなぁ…と考えながらの道のりでした。

水道の仕切り弁の蓋は桃太郎でした。

さて、ようやく島の反対側に出るも、沖合にそれらしい小島は見当たらない。でもぐるぐる先生はこの辺だとおっしゃる。困り果てて、丁度畑いじりをしていた島民の方に、犬ノ島はどの辺に見えるのでしょう?と聞いてみた。

そして教えてもらったのがココ。なんのことはない、目の前にあったんだけど、私はてっきりこれ陸繋島かと思ってたのでわからなかったのだ。泳ぐどころか歩いて渡れそうな距離と小ささ。

でもこの島は、手前に見える化学工場の私有地なんだそうで、普段は工場の人しか渡れないのだとか。毎年ゴールデンウィークの最中の一日だけ、特別に一般の人も船で渡ることができて、犬石に触れることもできるのだそう。安産守りかな。

島の人たちはこの小島を犬ノ島なんて呼ばないらしい。島を所有する工場の名前で呼んでいた。すぐ近くに廃校になった学校を利用した「犬島自然の家」という施設があって、年一度だけの島に渡る機会を求めて、泊まりにくる人もいるんだそう。

せっかくなので、砂浜にあるという美大生たちが製作したアート作品も見に行こうかと思ったんだけど、帰りの船の時間が心配だったので、港の方に戻った。

帰り道で、美術館でお話をしてくれたおばあちゃんにバッタリ。自転車引いて帰るところだった。こんな細い山道みたいなことを自転車で…?って驚きつつ、さっきはありがとうございましたと声をかけたら、ばあちゃんのうちは〓〓(作品名)の斜め前だよ、見てきたか?と訊かれ、はい見ました、犬ノ島も見てきましたよ、と答えたら、今は島には渡れんよ、ゴールデンウィークに来にゃあ、と言われた。それじゃあまた来なくちゃ、と笑って別れました。

犬ノ島に渡れる時期に行けるかどうかはわからないけど、見きれなかった海辺の作品群はまたの機会に見に行こうと思います。とにかく当初の予定では犬島と豊島を一日でまわるつもりだったのを2日に分けて大正解だった。

芸術祭の時期を避けても人が多く感じてしまった私的に、ハイシーズンにはたぶん行かないと思うけど、またちょっぴり外した時期に、今度は一人で行きたいなと思います。

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