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夏休み文楽 2019

転職して約3カ月、やっと週末に東京を離れる余裕ができたよ…

というわけで大阪です。目的は #文楽 の夏休み特別公演。 #咲太夫 さん、人間国宝認定おめでとうございます。

浄瑠璃作家 #近松半二 の半生を描く #大島真須美 さんの小説「渦」が #直木賞 とったし、この機会に文楽のお客さんがもっと増えるといいな。

今回は、お子さま向けの第1部はパスして第2部、第3部のみ観てきた。第2部は人気演目の #仮名手本忠臣蔵 の五段目から七段目まで、 #おかる勘平 がメインで、文楽劇場にしては珍しく、補助席まで出るほどの大入り。

おかる勘平って、仕事中におでいつしてて(←婉曲表現。現在で言えば勤務時間中にラブホ行ってたみたいな感じ)、主人の大事(松の廊下の刃傷沙汰)に側にいられず、現場封鎖で屋敷から締め出されてしまい、その段階で腹切りそうになってたのに「とりあえずうちの田舎に行こう!」とおかるちゃんが言い出して、二人して実家で貧しい老親の世話になる、という前段からして若干のゆとり感がある。

さらに今回上演の段は「あー、なんで全員が全員早とちりを繰り返すのか…」「腹切る前にやることが…」って感じで突っ込みどころ満載なので、涙にくれるはずの腹切りの場面も「うーん、なんか自業自得では…」ってなっちゃって、いまいち泣けないのだった。面白いんだけど。

あとおかるちゃんの実家のお母さんが、ほんと「いるよ…こういう人いる…」って感じのすぐとっちらかって大騒ぎするタイプで、息子小学校時代のPTA紛糾場面とかを思い出して「かなわんな」と思いながら見てた。

でも、こういういかにもいそうな人間味溢れるキャラクターが色々出てくるのが文楽の面白いところ。正直「曽根崎心中」なんかは主人公サイドが綺麗すぎて面白くない。私はやっぱり「冥途の飛脚」とかの方がキャラクターに人間味があって好きだなぁ。

一力茶屋の段は、短時間だけど #簑助さん がおかるを遣われ、あのおじいさんの手から、どうやってあの滴るような色気が出てくるのか…と思いながら見てた。梯子降りたあとは一輔さんに交代。最近はもうあまり長くは遣われないのだなぁ…

簑助さんのお柳(「卅三間堂棟由来」)をもう一度観たい、と思うけど、あれはもう二度と見られないのだ…あの演出ももうやらないだろうな。あれはすごかった、人形が生きていた。最近、そんな風に完全に引き込まれる体験がなかなかない。

第3部は世話物の「 #国言詢音頭 (くにことばくどきおんど)」。簑助さん、和生さんの人間国宝組の次に私が推してる #清十郎 さんが登場。

簑助さんが遣う女人形の艶かしさに対して、清十郎さんが遣う女人形は「可憐」「儚い」みたいな言葉が似合う感じ(ちなみに和生さんはオールマイティ型で立役もいいです)。今回も愛する男とその許嫁を庇って殺される遊女の姿は、どこか清らかさがあって泣けた。

全体的には怨恨だけど、関係ない人何人も殺すし、殺した女の首を切り落としてその唇をねぶるなど、猟奇的なシーンが続くので、昨今の無差別殺人事件を思い出してしまい重たい気分になったけど、顔が切られてぱっくり半分に割れたり、胴体が真っ二つになってるのに足だけ動いたりと、お人形ならではのユーモラスな演出も混じる。

最後は本水を使った雨降らしでダイナミックなエンディング。夏らしい演目だった。

ちなみにこの週末は #土用の丑の日 だったので、軽くうな重も食べてきました。

せっかくの夏の関西なので #鱧 も。

忠臣蔵の分割上演は11月で大団円を迎える。次は季節的にも年末近くなってるので、盛り上がるといいなと思う。

我が推し太夫の #藤太夫 さんは、おかるに勘平の死を伝える兄の役を人情味たっぷりに演じてましたが、太夫陣は相変わらず正念場だなぁ…という感じ。正直、語りが今ひとつで没頭できないこともあるけど、若手の誰が頭一つ抜け出すのか、見守っていきたい。

#文楽 #1907


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